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連載コラム

第28回「神戸復興の次のステップに 〜Bee's Kiss」

[ 2005年1月28日 ]

  地元以外の人にとっては、Bee's Kissという名より、「神戸スイーツハーバー」の名を耳にする機会の方が多いかもしれない。神戸スイーツハーバーは、地下1階にできたお菓子のフードテーマパークだ。明治から大正ごろの港の風景をモチーフにしたインテリアのスペースに、東西のスイーツを集めた店舗がずらりと並んでいる。

 ケーキやクレープ、和菓子などの店14店舗に加え、レストランやスイーツ材料の物販店、期間限定のイベント店舗などが入る。それぞれの店頭でお菓子を買い、港の風景や公園の一画をあしらったテーブル席で食べるという仕組みだ。訪れたのはオープン後1カ月半を経た平日の午後だったが、主婦らしき女性グループや学校帰りの高校生たちでにぎわっていた。

 神戸スイーツハーバーは、数多くのフードテーマパークを手掛けるナムコのチームナンジャが企画を担当した。運営は、Bee's Kiss全体の企画・運営を行う商業コンサルタント事務所、ジオ・アカマツが担う。

 「4〜5階に入るアミューズメント施設『ユーパラ』と併せ、Bee's Kiss全体への噴水効果とシャワー効果をもつ店舗を上下に配置した」。運営を担当するビーズキスマネージメントセンターの武藤真來氏の言葉どおり、それぞれの施設は集客の牽引役を果たしている。

 
写真左:洋館通り、甘ノ手通り 写真右:スイーツの港

スイーツミュージアム

 施設全体に話を戻そう。Bee's Kissは、神戸ハーバーランドの西端に建つ複合ビル、神戸ハーバーランドセンターの地下2階から地上5階までを占める。JR神戸駅や市営地下鉄ハーバーランド駅などからアクセスすると、ハーバーランドの入り口に位置する好立地だ。

 地下1階の神戸スイーツハーバー、4〜5階のユーパラのほか、目玉となる物販店として2階のファッションゾーンに「ユニクロ」、3階のキッズゾーンに「トイザらス」が入る構成を取っている。中心ターゲットにすえたのは若いファミリー層だ。

 「街開きした90年代前半の時期、ハーバーランドは若いカップルのデートスポットだったが、今は当時の客層がそのままスライドしている。昨年からハーバーランドの各商業施設でリニューアルが進み、百貨店などもニューファミリー向けに改装した。Bee's Kissも同じ路線上に位置付けている」と武藤氏は話す。

 1年ほど前まで、ここには「神戸ハーバーサーカス」という商業施設が入っていた。神戸ハーバーサーカスは、震災後の96年4月に開業。人材派遣会社パソナなど企業や個人が共同出資した企業、神戸ハーバーサーカスが企画・運営を担当したことで話題になった。

 神戸ハーバーサーカスの特徴は、当時珍しかったエンターテイメント性の高いフロアづくりや人手をかけたサービス提供を試みた点にあった。ファッションフロアでは主通路に人を乗せたトラムを走らせたほか、コンシェルジュ・サービスなども行った。物の提供だけでは飽き足らなくなっていた消費者に対する提案であると同時に、被災地に雇用の場を確保する狙いもあった。

 あれから10年。被災地における商業施設の役割も変わってきている。求められているのは、長いスパンを視野に置いた、より大きな競争力をもつ商業施設づくり。神戸ハーバーサーカスの役割は終わり、次のステップに踏み出すために開発されたのがBee's Kissだと言えるだろう。

 
写真左:地下2階エントランス 写真右:2階エントランス

 こうした視点を踏まえると、Bee's Kissの施設づくりの特性が明快に見えてくる。

 まず、ソフト面に関する人的なサービスは極力そぎ落とし、各テナントの店の力で勝負する方式を取った。また、明るく入りやすい空間づくりに注力した。これは、落ち着いた雰囲気を目指した神戸ハーバーサーカスが、結果的にやや敷居の高い印象を与える側面があった点を改めたものだ。

 具体的には、神戸駅側からのアプローチに設けられているスペースシアター(吹き抜けのアトリウムバルコニー)に対して開放的な仕様にした。従来は壁だった面をガラス張りにしたほか、一部は折り戸にして季節によってはオープンにできるようにした。スペースシアターの壁面には、バナーや各テナントのサインも掲示している。

 
写真左:スペースシアターから見た正面 写真右:グラフィックと柱

 内部のテナントゾーンも、明るさを前面に押し出した。壁や天井は白い仕上げに統一し、以前に比べて照度の高い白色照明を採用。白い壁には、各階で色を変えた花のグラフィックを描いた。バナーやサインを積極的に用いたデザインは、一見して商業ゾーンらしい賑わいを演出している。

 Bee's Kissが注目されるのは、単体の施設に対する関心からだけではない。「ハーバーランド全体の起爆剤となることを期待されている」と武藤氏は自覚する。今後は、一部テナントの強化を図りつつ、周辺施設との相乗効果も高められるよう工夫していきたいという。

 (守山久子)


■ビーズキス:http://www.beeskiss.com/
(TEL:078-362-8000)
神戸市中央区東川崎町1-3-3 地下2階〜地上5階
営業時間 10:00〜20:00(物販フロア。その他は店により異なる)
無休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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