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連載コラム

第33回「額縁を主役にする空間演出 〜FRAS SHOP 南麻布」

[ 2005年7月11日 ]

 『FRAS SHOP 南麻布』は2005年4月23日、東京都港区の三の橋近くにリニューアルオープンした。ブランドコンセプトやロゴを一新しての再スタートである。

 

 『FRAS』は、大阪で50年ほど画材と額装を扱ってきたカナタという企業が3年前に立ち上げたインテリアブランドだ。これまで壁面のコーディネーションや、花器などオリジナル製品の卸を中心に行ってきた。建物は現在の位置にあり、およそ3分の1に当たる規模をショップに利用していた。

 現在も、オリジナルプロダクトの販売、壁面コーディネート、額装という業務の3つの柱は変わらない。リニューアルに当たって変更したのは、プロダクトの比重を大きくしたことだ。

 ペン立てやワインラック、傘立て、ゴミ箱などオリジナル商品を新開発した。現在のアイテム数はおよそ40。インテリア雑貨の比率を高め、インテリアコーディネーターなどプロが中心だった従来の顧客層を広げ、エンドユーザーに大きく門戸を開いていくのが狙いだ。

 リニューアルに伴い、「Not a Frame、but the Frame」という新しいブランドコンセプトも掲げた。

 額、つまりフレームを扱うという基本姿勢はどのサービスにも共通している。ただし、ここでは物を引き立たせる脇役としての額縁(a Frame)ではなく、それ自体が美しく主役となるような「the Frame」を提供していく。そんな意味を込めた文章だという。

 こうしたコンセプトの下につくられたプロダクトは、いずれも四角いフレームをモチーフに用いている。また、機能だけにとらわれず、見た目や使い方の楽しさに価値を感じてもらえるデザインを志向しているのも同じだ。

 アートフラワーフレーム「ZERO」は、太いフレームと中に配したドライフラワーが一体となった作品だ。ワインラックは、フレームで作られた棚の配置と余白となる空間の構成に美的こだわりを感じさせる。自己主張と遊び心にあふれた商品を見ると、「ユニークさや遊び心が分かる大人がターゲット」という澤彰洋・クリエイティブプロデューサーの言葉もうなずける。

 さらにFRAS SHOPが重視しているのは、空間を意識した商品であることだ。壁面やスペースを引き立たせる、華をもった商品であること。これらのプロダクトをきっかけに、壁面やインテリアのコーディネートに対するユーザーの関心を高めていきたいという意図が込められている。


写真提供:FRAS SHOP
 


 白とダークなブラウンを基調とした店内は、小さく分類されたコーナーにオリジナルの雑貨が並んでいる。店の外観は、インテリアデザイナーの近藤康夫氏が以前手掛けたもの。リニューアルに際しても、外観はほぼそのままの形を残し、内部だけ改装した。

 店の核となる中央のスペースは、細長い白いパネルで区分されている。白いパネルの配置に応じてソファコーナーやベッドコーナー、あるいは書斎コーナーなど様々なスペースが生み出され、パネルには商品が掛けられる。

 このパネルは、2本のパイプによって天井と床に留められている。天井と床に開けられたパイプ用の穴は、4個ずつの組になって格子状に並ぶ。この穴を自由に選ぶことで、月1回変えるというディスプレイに合わせてパネルを自在に配置できる仕組みだ。

 ディスプレイの可変性を生み出すため、こうした可動パネルを用いる店舗は珍しくない。ただし、パイプで支えられた壁で空間を切り出していく展示方法は、壁という平面を自然と強調する。「壁のコーディネート」をうたい文句にするFRAS SHOPのコンセプトを表現する仕掛けとしても象徴的だ。

 
写真提供(右):FRAS SHOP


 この店でもう1つ気になったディスプレイは、エントランスを入った右手の壁に並ぶボックス什器だ。木の横桟が連なった壁面に、大小のボックス型のディスプレイ棚が並んでいる。棚ははめ込むだけだから、どこにも自由に配置できる。

 実は、商品にもこれと同じ考え方の収納具がある。上のディスプレイ什器をずっと小型にした「BALCONY」という商品で、直方体の箱を壁面のスリットに差し込んでいく。やはり枠部分を強調した箱は、縦横いずれにも設置できるという優れものだ。

 商品と展示空間を呼応させるこうした手法にも、店の遊び心が発揮されている。

 (守山久子)


■FRAS SHOP 南麻布:http://www.fras.jp/
(TEL:03-3452-1226)
東京都港区南麻布2-2-16
営業時間 11:30〜19:30
水休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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