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連載コラム

第35回「並木道に期間限定のパラソル店舗 〜日本大通りオープンカフェ」

[ 2005年9月12日 ]

 日本大通りは、横浜ベイスターズの本拠地、横浜スタジアムから海側へまっすぐ延びる並木道だ。1879(明治12)年に、英国人技師R・H・ブラントンの設計で完成した。
 両側には旧商工奨励館、旧市外電話局(現・横浜情報文化センター)、横浜開港資料館旧館、旧関東財務局をはじめとした歴史的建造物が建ち並ぶ。36メートルの道路幅に、銀杏並木の植樹帯と歩道がゆったりと配置されている。なかなか日本離れした風景をもつ一画なのだ。

 この日本大通りの歩道部分、東側の並びにオープンカフェは設置されている。中央ヨーロッパ料理の「アルテリーベ」、スリーエフのファストフード店「グーツ」、そしてアートカフェ「graf media gm:YOKOHAMA」のパラソル席が区画ごとに間を置いて並ぶ。


オープンカフェ風景
 
写真左:情報文化センターのブース 写真右:アート販売


 これらのオープンカフェは、9月2日から11月末まで日本大通りオープンカフェ実行委員会(会長:鶴岡博・横浜スタジアム社長)が実験開業するものだ。試行期間の7月から運営を始めていた2店舗に加え、アートカフェが新規出店。さらに、アートイベントやオープニング記念で出店する花店、情報センターのパラソルも並んだ。

 訪れたのは、オープン日の9月2日。地下鉄みなとみらい線の日本大通り駅を出ると、すぐ白や青のパラソル群が目に飛び込んでくる。残暑の厳しい9月の日差しはまだ強く、くっきりとしたパラソルの影を路面に落とす。平日の午後早い時間帯のせいか、路上の客席で休んでいる客はまばらで、のんびりとした空気が漂っていた。

 カフェの間隙を縫って花束を陳列する花店は、通りを1本隔てた区画にある「フローリスト デュアイ」が出張してきたもの。最初の週末だけの出店というが、とりどりの花は街路に彩りを添えている。

 三井物産横浜ビル1階の「ギャルリーパリ」もカフェ以外の出展だ。こちらは、山下ふ頭などで開催されている現代美術のイベント、横浜トリエンナーレ2005の応援企画。女性アーティスト3人による平面作品の販売のほか、かおかおパンダさんによるライブペイントや、白石衆氏によるシカの像の展示などを12月18日まで行う。

 さて、ひと通り全体の様子を把握した後、1軒のオープンカフェに入ってお茶を飲んだ。風が吹き抜け、さすがに気持ちよい。古い石造の建物を背景に樹木の緑が映え、視覚的にもじっくり落ち着ける雰囲気だ。

 
写真左:フローリスト 写真右:ライブペイント


 いったん通りを離れ、オープニングイベントが行われる夕刻に再び戻ると、様子は随分変わっていた。薄暗くなったパラソル席を会社帰りのサラリーマンやグループ客が埋め、さざめいている。遠くから、弦楽器の生演奏の音色が聞こえてきた。

 やがて中田宏・横浜市長が登場し、アルテリーベの一画で挨拶する。内容は、地域の関係者や県警、国交省の協力に感謝したうえで、従来、歩道でこうした使い方をできなかったことの不自由さを指摘したものだ。

 いわく、「道路の使い方をその地域の人が考えていけるようになればいい。横浜らしい使い方を考えていけるようにしたい」。

 「出店する方々も、ここできちんと儲けてもらわないと困る。そのために、簡易な屋台料理ではなく、しっかりした良い料理を楽しめる場を提供してほしいとお願いしてきた。仕事帰りの客や日曜の観光客などを相手に腕を磨き、良い循環に入っていけるよう期待している」...。

 
写真左:夕景 写真右:カフェの演奏風景


 ご存知の方も多いように、日本では公道で商売をすることは基本的に認められていない。ただし規制緩和の流れから、近年、国土交通省もこれまでにない道路活用の在り方を模索するようになってきた。今回も、同省の「平成17年度オープンカフェ等地域主体の道活用に関する社会実験」の1事業として選定されている。

 社会実験事業は、市民参加のもと、期間と場所を限定して新しい施策を試していく制度だ。トランジットモールやパークアンドライドなどに加えて、道路空間を利用する試みとしてオープンカフェの開業なども対象となっている。昨2004年度は、札幌市や神戸市などをはじめとする20弱の町で、オープンカフェにからんだ実験を行った。

 ただし、その多くは数日や1週間といったごく短期の開催。日本大通りでも2002年にオープンカフェを実施した実績を持つが、これも9日間だけだった。3カ月の長丁場に及ぶ運営は、横浜市によると「日本初」の試みとなる。

 実行委員会と市は、11月末までの開業期間中に様々な課題を抽出し、来年以降の継続実施に向けた解決策を考えていく。単なるイベントでなく、恒常的な街路の活用をにらんだ出店なのだ。それだけに、中田市長が「営業面でも利益を出して」と強調したのもうなずける。

 長らく日本の道路は、人や車の通行に役割を特化してきた。しかし、海外の例を引くまでもなく、昔から路上をコミュニケーションの場としてきたのは日本も同じだ。街を楽しむのに適した気持ち良い街路があるのなら、ぜひその資産を利用者が共有できるように関係者の知恵を絞っていただきたいものだ。

 (守山久子)


■日本大通りオープンカフェ:http://www.nihonodori.jp/cafe.html
(TEL:045-227-7448 日本大通りオープンカフェ実行委員会)
横浜市中区日本大通り
営業時間 アルテリーベ11:30〜21:00、グーツ7:00〜20:00、graf media gm:YOKOHAMA11:00〜22:00(不定休)

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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