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連載コラム

第38回「ファッション感覚で多面性を打ち出す 〜ユニクロ銀座店」

[ 2005年12月13日 ]

 ユニクロが矢継ぎ早に新店舗の展開を進めている。
 2005年9月10日、初めての女性インナーブランド「BODY by UNIQLO(ボディ・バイ・ユニクロ)」をモザイク銀座阪急店内に出店したのに続き、10月14日には子供服専門店「ユニクロキッズ」を東京と神奈川に同時オープンした。

 一方で、大型店舗の出店も加速させている。茨城県の「LALAガーデンつくば店」(10月1日開業)、愛知県の「春日井店」(12月2日開業)といった500坪クラスの店舗を相次いで出店。10月29日に誕生した福岡県の複合商業施設「ミーナ天神」では、施設全体の開発を手掛けた。

 こうした拡大戦略のなか、旗艦店として開発されたのが銀座店だ。「これからのユニクロが全てつまった店」というキャッチフレーズの下、進化するユニクロを表現する店として位置付けている。


外観夜景(写真提供=ユニクロ)
 
写真左:低層部外観(写真提供=ユニクロ) 写真右:1階(写真提供=ユニクロ)


 「従来に比べ、商品の幅が広がっている。店自体もこれまでとは違うデザインを取り入れ、日本一の立地である銀座にふさわしい、ファッション感覚を備えた店舗を目指した」と、店舗開発部リーダーの南野淳二氏は話す。

 今までのユニクロと言えば「品揃えの量感」を強調した店づくりをしてきた。壁面いっぱいの什器に色違いのアイテムをずらりと並べ、随所に大型グラフィックを配したビジュアルマーチャンダイジングがすぐ頭に浮かぶ。

 しかし銀座店では、エントランス回りのディスプレイ一つとっても従来店とは異なる。商品をまとったマネキンを並べ、シーズン商品を前面に出した。商品のコーディネートを訴求した見せ方は、一般のファッションブランドに近付いたとも言える。

 「当初、安い商品というイメージが強かったユニクロブランドも、次第に『高品質、低価格』な商品として認知されるようになった。次の段階としてファッション性をより高め、我々から積極的に新しい提案をしていきたい」(広報チームの菊池佳代さん)という姿勢の変化が反映されているのだ。


4階藤棚
 
写真左:紳士服の藤棚 写真右:テーブル什器


 商品も、セーターやシャツ、パンツといった従来のアイテムだけではない。雑誌「PINKY」とのコラボレーション企画によるアクセサリーなどを約500種そろえるほか、大型店限定のカシミヤのセーターやジャケットも扱う。銀座店の特別色も用意している。新業態の女性用インナーやキッズ用品ももちろんある。

 店内ディスプレイも、金属什器を用い、倉庫風のようなつくりだったこれまでの仕様とは一線を画した。

 まず目を引くのは、角材の柱と梁を組んだ「藤棚」を置いて空間を緩やかに区切っていることだ。藤棚には自由にバーや棚板が取り付けられるようになっており、売り場に応じてディスプレイに変化を付けている。女性向けインナーのコーナーでは、レースのカーテンを吊って柔らかい印象を与えていた。

 また、セーターなどを並べるテーブル式のディスプレイは、什器を上に積み重ねられるようにしたものだ。積み重ねる高さは低めに抑え、見通しのよい空間構成としている。エスカレーターの正面にマネキンを用いたディスプレイスペースを用意していることもあいまって、これまでにない“余白”を感じさせる店内となっている。

 什器に多彩な色合いを使っていることも、特徴の一つだ。藤棚やテーブル什器にウレタンによる光沢塗装を施し、柔らかい印象を与えている。1階は白、2階はピンク、3階はベージュ…。メンズ製品の5階で使っている濃い茶色以外は、全体に淡い色を中心にまとめている。

 
写真左:エスカレーター前ディスプレイ 写真右:紳士服コーナー(写真提供=ユニクロ)


 新しい什器や外壁のデザインはクライン・ダイサム・アーキテクツ(KDa)が手掛けている。KDaは、小淵沢にあるリゾートホテルのチャペルや表参道の工事現場仮囲いなどで話題を呼んだ建築事務所だ。

 2005年1月、ユニクロは3組の建築設計事務所に新しい店舗デザインの提案を求めた。このときのKDa案が、藤棚やテーブル什器を用いたものだった。

 その後、銀座への出店が決まる。ファッション性に重きをおいた店舗コンセプトにマッチすることから、ここでKDaによるデザインを採用することになった。LEDを用い、正方形の連続を強調した外観は、ユニクロのピュアなイメージを表現している。

 開業してからの状況を見ると、夕方までは主婦層や年配の客が多く訪れ、18時以降はOLやサラリーマンが中心となっている。年配の客など、これまでユニクロに縁の薄かった客層が足を運ぶようになった。銀座という立地を生かした店づくりが奏功したと言えるのだろう。

 これまでの定型的な店舗展開から脱皮し、店舗ごとの特性を鮮明に表現する…。フリースブームのイメージから今ひとつ脱皮できない印象をぬぐえなかったユニクロは、次のフェーズを切り開き始めている。

 (守山久子)


■ユニクロ銀座店:http://www.uniqlo.co.jp/index_f.html
東京都中央区銀座中央区銀座5-7-7
(TEL:03-3569-6781)
営業時間 11:00〜21:00 無休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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