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連載コラム

第46回「風を感じるオープンモール 〜横浜ベイクォーター」

[ 2006年9月11日 ]

 新田間川の対岸にはそごう横浜店があり、かもめ橋と呼ぶデッキでつながれている。横浜駅東口に集積する大型商業施設の中心ともいえるそごうと比べると、横浜ベイクォーターは対照的なつくりということがわかる。
 かたや百貨店に対し、横浜ベイクォーターは物販や飲食、サービスの専門店75店舗を集めた複合施設だ。箱形建物のそごうに対し、横浜ベイクォーターでは白いテラスが曲面を描きつつ、外に張り出している。2階にシーバス乗り場も設けている建物は、“豪華客船”をモチーフにしているという。

 
写真左:外観 写真右:かもめ橋

外まわり


 何より異なるのは、建物の入り口に扉がないことだ。屋外広場だけでなく、建物内の通路にも外からそのまま入れるオープンな空間となっている。

 プロデュースを担当した北山創造研究所は、これまでにもオープンモール形式の商業施設を多数誕生させてきた。ただし、たいていは建物の外に広場や屋外通路を設け、そこに面してできるだけ多くのテナントを配置するという形をとっている。建物内部に設けられた通路は、扉によって外部と仕切られている場合がほとんどだろう。

 一方、横浜ベイクォーターでは、テナントには扉があるが、建物内の通路は外に通じた筒抜け状態になっている。サブモールの吹き抜けも、上を見上げるとそのまま外部空間につながっている。外気に触れながら建物内通路を歩けるため、予想以上に開放的な気分を味わうことができる。

 
写真左:円形の広場 写真右:吹き抜け

通路


 上階に行くにしたがってセットバックしていく白い建物は低層に見えるが、実は8階建てになっている。地下1階から2階までが駐車場、2階の一部から7階までが商業ゾーンだ。

 建物は川に沿う形でモールが細長く延び、川と直交する方向にサブモールが突き出している。両者の結び目にゲート広場、川沿いの東端に円形広場があり、エスカレーターが上下階を結ぶ。飲食店と物販店は各階にほぼまんべんなく点在している。

 主ターゲットとなる客層は団塊ジュニアから40、50代まで。サブターゲットとして20、30代の女性を据えている。そごうをはじめとする横浜駅東口まわりの商業施設との差異化を考え、カジュアル系の店舗を充実させている。キッズ向きの店はあえて用意していない。

 駅から徒歩圏にあるとはいえ、駅前というには遠い。そこでタラソテラピースパや岩盤浴、ヨーガスタジオなど、リピート客を見込めるサービス業態を複数取り入れた。

 また犬を連れた客にも対応しているのが特徴だ。そごうとブリッジでつながる3階では、基本的にリードを付ければ犬と一緒に自由に行き来できる。4、5階はキャリーバッグなどに入れれば大丈夫。店舗によっては犬を連れた入店も可能で、犬向けのメニューを揃えたドッグカフェやドッグホテルも用意している。

 
写真左:24時間通り抜けできる通路 写真右:屋外通路まわり


 横浜ベイクォーターの建つ「ヨコハマポートサイド地区」は、横浜市がアート&デザインをテーマにした街づくりを進めている地域だ。これまで駅から離れた一画にはオフィスビルやマンションが建てられてきたが、駅に近い区画は未開発のままだった。

 三菱倉庫が所有する横浜ベイクォーターの敷地も、1985年にそごう横浜店が開業してからは長らく百貨店の平面駐車場として利用されていた。ここにきて、ようやく390戸のマンション棟(2007年3月竣工)と共に商業施設の開発が実現したことになる。

 周辺地域でも、ビジネスホテルやオフィス、マンションの計画が進み始めた。横浜ベイクォーターは、これら新しく開発されるエリアと、そごうをはじめとした既存商業エリアとの結び目に位置する。単体の商業施設としてだけではなく、町中の主要動線としての役割を担う。

 そのため、川沿いの通路や建物を貫通する3階のサブモール「ベイストリート」は24時間開放される街路となる。このベイストリートに面してコンビニエンスストアなどを配したのも、24時間使用できる街路の役割を意識したものだ。

 横浜市街には、街歩きを楽しめる場所が多い。集客力をもつ商業施設も多数ある。ただ、大型の商業施設は建物内で完結する箱形タイプのものがほとんどだった。建物内にいながらにして街とのつながりを感じられる商業施設は従来あまりなかったと言っていい。

 その点、開放的なつくりの横浜ベイクォーターは建物と街との結びつきが強く、これまでの横浜になかったタイプの商業施設となっている。売り上げ目標100億円がもたらす経済効果にとどまらず、横浜をさらに活性化させる装置としての役割に期待がかかる。

 (守山久子)


■横浜ベイクォーター:http://www.yokohama-bayquarter.com/
横浜市神奈川区金港町1-10
(TEL:045-577-8123)
営業時間 物販&サービス11:00〜21:00、飲食11:00〜23:00(一部店舗は異なる)
不定休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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