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連載コラム

第48回「ショールームとネットで客と企業を結ぶ 〜アーキテクトカフェ汐留」

[ 2007年3月23日 ]

 店は、東京の汐留シオサイト・イタリア街に建つビルの1階に位置する。木質フローリングにテーブルが並んだ中央客席スペースは、一見普通のカフェと変わらない。天井から丸い照明がいくつも吊り下がる客席で、昼はコーヒーや軽食、夜はイタリアンと和食の融合した食事を楽しめる。
 少々違うのは、小さく区切られた部屋が客席スペースの周囲をコの字形に取り囲んでいることだ。

 キッチン、リビング、ベッドルーム、スタディルーム、タタミルーム。並んでいるのは、住まいの部屋が9つと貸し切りできるミーティングルーム。これらの小部屋を含めて約350m2の室内に98席、屋外に20のテラス席が用意されている。

 
写真左:客席 写真右:キッチン

スタディルーム


 住まいのコーナーは、本物の設備や家具を備えた本格的なしつらえだ。

 キッチンにはミーレ・ジャパンのオープン式キッチンを据え、横にはダイニングテーブルもある。スタディルームにはデスクやパソコン。棚には「ELLE DECO」や「モダンリビング」などのインテリア系雑誌が並ぶ。このほかにも、グローエジャパンの水栓、積水ホームテクノのユニットバス、フランスベッドのソファやベッドなどを装備している。

 これらは住設機器や生活雑貨などを扱う23社の協賛企業が出品したもの。つまり、このカフェは住宅に関連した製品のショールームを兼ねているのだ。店内に設置された大型画面では協賛企業の情報を流し、パンフレットも自由に取れるようにしている。

 単に展示しているだけではなく、実際に利用できるようにしているところがミソでもある。例えばリビングではソファに腰掛けてメニューを注文できるし、キッチンではパーティーも開ける。ユニットバスやMRC・ホームプロダクツのフットバスもお試し可能だ。インテリア雑貨や雑誌も置いてあるので、設備機器や家具などの購入希望者でなくても興味を持って店内を眺められる。

 
写真左:リビング 写真右:フットバス


 運営者のトラベルカフェは、国やクルーズ、留学など「旅」をテーマにしたカフェを国内各地に出店してきた。交通関連の企業や各国政府などの協賛を得て、店内にプラズマ大画面やカタログ、情報誌を設置。旅を中心とした関連情報を提供する。ニュージーランドをテーマにした六本木店のように、トラベルコンセルジュを常駐させている店舗もある。

 狙いは、集客力のあるカフェという業態を生かし、旅行社を直接訪れることに敷居の高さを感じるユーザーを取り込むこと。これまで東京、横浜、大阪、神戸、福岡、札幌といった大都市で19店舗を展開している。そんな同社が、住まいという新しいテーマに取り組んだのがアーキテクトカフェだった。

 カフェという業態からみれば、目的性の高いショールーム機能を組み合わせることで少々足回りの悪い地域での出店も可能となる。一方、出資する企業にとっては、ショールームを保有する負担とリスクが少なくて済む。1企業当たりの展示スペースは限られるが、他社の製品と組み合わせることによって、より住まいらしい空間の中で製品を見せられるというメリットもある。

 
写真左:ベッドルーム 写真右:ディスプレイ


 トラベルカフェの西野太郎氏によると、店づくりで目指したのは「消費者の夢を膨らませられるような空間」。「あこがれの家を作る」というテーマの下、イタリア外資系企業の社長の家をイメージしてインテリアデザインと製品ディスプレイを試みた。

 最も大切なのは、ブランド力をもつ企業の協賛を得ることだった。ここでは、高いイメージを誇るミーレ・ジャパンを核に協賛企業を集めていった。ディスプレイの過程では、各企業が展示したいと考える商品をヒアリングしつつ、具体的なコーディネートはトラベルカフェが中心に行った。企業ショールームの寄せ集めではなく、アーキテクトカフェが目指す心地良い空間づくりにこだわった。

 製品の展示や情報提供に加え、客と協賛企業を結び付ける仕組みも提供している。小物類はここで購入でき、住設機器やインテリア素材については注文や問い合わせの窓口となる。カフェの売り上げ目標は初年度1億円、2年目が2億円。うち10%は小物類の販売を想定している。

 さらに、パソコンや携帯電話からアクセスできるウェブサイトを通じて、客と登録建築家をマッチングするサービスも用意した。いずれはネット上での製品販売にも踏み出していく考えだ。

 アーキテクトカフェの特徴を一言で説明すれば、カフェとショールームの複合業態ということになる。ただし店舗戦略を支えるのはむしろ、このようにリアルの場とネット上のサービスを組み合わせたクロスメディアの試みと言えるのではないか。

 (守山久子)


■アーキテクトカフェ汐留:http://www.architectcafe.com/
東京都港区東新橋2-14-1 コモディオ汐留1階
(TEL:03-5733-4231)
営業時間 月〜土10:00〜23:00、日祝10:00〜22:00
無休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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