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連載コラム

第51回「ニューファミリーとリタイア層を狙う 〜港北天然温泉 スパ ガーディッシュ」

[ 2007年9月19日 ]

 2008年春、東急東横線日吉駅とJR横浜線中山駅を結ぶ横浜市営地下鉄「グリーンライン」が開通する。ブルーラインと呼ばれる従来路線と交錯する港北ニュータウンのセンター北駅とセンター南駅は、これまで以上に交通の中心としての役割を果たすことになる。
 こうした地域の発展を見込み、商業開発も相次ぐ。以前からあるセンター北駅の「モザイクモール港北」(核店舗は阪急百貨店)、センター南駅の「港北東急百貨店S.C.」に加え、ワーナー・マイカル・シネマズが入る「ノースポートモール」がセンター北駅に今春開業した。

 「港北みなも」は、こうした駅前立地の大型商業施設とは少し離れ、センター北駅とセンター南駅の中間に立地する。二つの駅からはそれぞれ歩いて5分程度という徒歩圏だが、やはり駅前の複合施設とは自ずと店舗構成も異なる。

 スターバックスコーヒーと融合させた売り場をもつ蔦屋書店、ゴルフやスポーツの大型店、スーパーマーケットなど。強力な大規模テナントで構成した施設は、むしろロードサイド店というイメージに近い。「天然温泉 スパ ガーディッシュ(以下、ガーディッシュと表記)」は、その3、4階に位置している。


外観
 
写真左:エントランス通路 写真右:薪を並べた室内演出


 ガーディッシュは、東急不動産が東急スポーツオアシスに運営委託する施設だ。約3500平方メートルという規模の施設は、2フロアに分かれて広がる。

 円形の受付カウンターが迎えるエントランスロビーで靴を脱ぐと、正面にレストランがある。廊下を進むと、奥にはタイ古式療法などを行えるリフレッシュサロン、家族風呂、テレビ付きのリクライニングチェアが66席並んだリラクゼーションルームなどが続く。

 
写真左:家族風呂 写真右:リラクゼーションルーム


 階段を上がった4階は、天然温泉やサウナのエリアだ。環境音が流れる座椅子式の席が並ぶヒーリングゾーンの隣にストーンスパのコーナーが設置され、これらの両側に男女の浴室がある。浴室は、男性用は四角い直線的な浴槽を配しているのに対し、女性用は円形の浴槽を組み合わせた柔らかい印象のつくりになっている。

 男女の浴室はそれぞれ屋内と露天風呂のゾーンに分かれる。屋内には源泉かけ流し風呂のほかマッサージバス、低温バイブラバス、フィンランドサウナなどが並ぶ。やや低温でアロマの香りも楽しめるカルダリウムサウナやミストシャワーは女性用だけに装備している。

 露店風呂には、屋根に藤棚状の木製格子をかけ、時間がたつと緑のルーバーになるようなコーナーもある。循環式の源泉大風呂のほか、ハーブ湯、ミルキーバス、スチーム腰掛け湯、寝転び湯や1人用の「壺湯」なども。

 不整形な石割の床、暖色を中心とした色使いなど、浴室内は全体にヨーロッパの田舎をイメージしたというインテリアだ。

 一方、浴室の外に広がる各エリアは、ベージュを主体としたシンプルな内装を施している。ところどころに置かれた行灯のような照明と、一部の壁面に設けた棚へオブジェ風に並べた薪が、空間のアクセントになっている。全体に照度を抑えた店内が落ち着いた雰囲気を生み出す。

 
写真左:ヒーリングゾーン 写真右:男性浴室
 
写真左:男性露天風呂 写真右:女性浴室
  女性露天風呂


 複合化と大規模化が進む近年の温浴施設は、大きく2種類に分かれる。

 一つめは、岩盤浴や垢すりなどリラクゼーション機能を強化した滞在型施設の健康ランドやスパ。健康ランドは温泉でない場合もあるが、スパは温泉だ。大人の入館料は首都圏の施設の場合、2000円代半ばから3000円弱程度といったところか。

 もう一つは、銭湯を大型化した形態のスーパー銭湯だ。一般的な入館料は500円から800円程度が多い。

 ガーディッシュは両者の中間に当たる平日1200円、土日祝で1400円という入館料で、タオルや館内着がつく。「規模は小さいが、サービスは東京周辺の大型温泉施設に負けない内容」(マネージャーの小杉功氏)を目指した。港北ニュータウンに住むニューファミリーを中心に、東急田園都市線の近辺に住むリタイア層の取り込みも図る。

 予約制の家族風呂を設けたのも、ファミリー層を狙ったものだ。8〜10畳程度の浴室に、ソファを置いた4畳半程度の前室が付いたつくり。和風と洋風の2室を用意しており、祖父母と一緒に来る家族連れなど3〜4人で利用する客が多いという。

 もう一つの特徴は、隣接するフィットネスクラブ「東急スポーツオアシス」との連動を図った点にある。オアシス会員はガーディッシュの4階の浴室エリアを無料で利用できるほか、入館料なしでリフレッシュサロンや平日ランチタイムのレストランが利用できるといった特典を設けることで、集客の相乗効果を図るのが狙いだ。

 温浴施設は過当競争の時代に入ったという指摘もあるなか、差異化は重要な課題。リピーターを確保するには、多彩な浴槽やリラクゼーション機能の充実などはもちろん、ターゲット層を見据えたうえでの独自性ある施設づくりが欠かせない。

 (守山久子)


■港北天然温泉 スパ ガーディッシュ:http://www.gardish.com/
横浜市都筑区中川中央2-7-1 港北みなも3階
(TEL:045-595-0260)
営業時間 10:00〜24:00、レストラン・リフレッシュサロン11:00〜23:30
偶数月第1水曜休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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