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連載コラム

第52回「再開発の商業施設に路面店感覚を 〜有楽町イトシア」

[ 2007年10月26日 ]

 JR有楽町駅の中央口を出ると、真新しい広場と建物が目に飛び込んでくる。「有楽町イトシア」だ。上階がオフィスとなっている地上21階の高層棟と地上5階の低層棟が、広場に面して並び建つ。建物の地下はつながり、地下2階から地下4階はパーク24が運営する駐車場「タイムズステーション・イトシア」となっている。

 
写真左:駅前広場側の外観/写真右:低層部外観


 店舗のエリアは大きく3つに分かれている。円弧を描く外観が目を引く高層棟の低層部には、核店舗となる「有楽町マルイ」が入る。1階から地上8階まで約1万8500平方メートルという店舗面積は、都心部にある同社店舗では最大の規模となる。

 低層棟の地下1階の過半と地上4階までは「イトシアプラザ」。再開発事業の地権者の店を含めたテナントが出店する。映画館「シネカノン有楽町2丁目」をはじめとするアミューズメント施設のほか、主に飲食店が並んでいる。

 高層棟から低層棟の一部にかけて、地下1階レベルに広がるのが「イトシアフードアベニュー」という食の専門店ゾーンだ。雰囲気を統一した1700平方メートルの空間に27の店舗がちりばめられている。

 フードアベニュー内には、駅前と直結する地下広場と地下鉄丸の内線への経路を結ぶL字形の通路が延びる。朝7時から夜11時半まで通行可能なこの通路に面しては、カフェや人気のドーナツ店「クリスピー・クリーム・ドーナツ」2号店など7時半開業の店も配置されている。その他の店舗は11時に開業する。縦横に延びる通路の両側に、カレーやデリ、洋菓子など様々な国の食を扱う物販や飲食店、リフレクソロジーサロンなどが顔を見せる。

 インテリアは天井仕上げをせず、黒く塗られた配管や上階の床面を露出したままだ。路面店のようなイメージを狙ったという空間は、路地のような賑わいをもたらす。開業間もない取材時には、あちこちの店に客の行列ができていた。通路は十分な広さを取っているのだろうが、こうした雑踏感覚はアジアンテイストをさらに際立たせていた。


イトシアフードアベニュー

イトシアフードアベニュー

イトシアプラザ2階


 2つの建物の外観は、共通の素材で仕上げられている。4階以上の商業ゾーンはベージュのタイルの壁面で覆っている。広場に近い3階以下はガラスのファサードだ。

 「ファッションを扱う有楽町マルイのイメージから、タイル壁はシルキーで上質なカジュアル感を生み出す表現を心がけた。下層階はガラスで覆い、各店舗が自由に顔を見せられるようにした」(設計を担当した三菱地所設計の飯田隆弘氏と柴田康博氏)。

 ここでも、強く意識しているのは路面店らしさだ。イトシアプラザの1階テナント7店のうち6店舗は完全に外部に面し、外から客が直接入れるようにしている。

 2階以上にもテナントが入る複合ビルの場合、建物への入り口が主となり、テナントの入り口はそれに従属することが多い。まず建物に入ってから、それぞれの店舗にアクセスするという方式だ。しかし、ここでは1階各店舗の入り口の主張が強く、JR線路側の通りに面した建物の入り口はむしろやや控えめな存在になっている。

 このように一般的なテナントビルとは異なるつくりは、駅前広場と1階店舗の結びつきを強める。広場の活気を高めるという点では、イトシアプラザの建物は大きく寄与しているようだ。

 
写真左:駅前広場から地下へ降りる入り口 写真右:有楽町マルイとイトシアプラザを通る貫通路
 
写真左:貫通路に面した店舗まわり/写真右:有楽町マリオンから見た外観


 有楽町イトシアは、これまで長く議論されてきた再開発事業によって誕生した。戦後、有楽町駅東側に広がる小規模建物の密集地帯は3つの区画に分けられ、まず1965年に東京交通会館が竣工した。22年後の87年には有楽町マリオンが誕生。さらに20年を経た今年、何度かの計画変更を経て、両者の間に残っていた敷地に有楽町イトシアが生まれた。

 そのため建物の計画は、有楽町周辺の都市計画と合わせて進んだ。例えば同時に完成した歩行者専用の駅前広場も、同じ地区計画で策定されたものだ。

 また有楽町イトシアの登場によって、地域の動線も強化された。

 有楽町イトシアの地下1階は、エスカレーターと幅広い階段で駅前広場から直接アクセスできるようになっている。この地下空間は隣接する東京交通会館と接し、朝から通行可能なフードアベニューの通路を介して銀座方向につながる。この結果、大手町から有楽町そして東銀座までのエリアが地下通路で結ばれることになった。

 地上レベルでは、既存の細い道路を統合し、駅前広場から有楽町マリオンに通り抜ける貫通街路が新設された。有楽町イトシアが大小2つの建物に分かれているのは、地区計画によって敷地自体が分割されているからだ。

 これら新しい街路の誕生によって、有楽町と銀座のエリアはさらに多様な結びつきをもつことになった。そして、若い男女から一般のサラリーマン、中高年層まで広くターゲットとする店を集めた有楽町イトシアは、JR有楽町駅周辺を行き交う人を吸引し、受け止める役割を果たす。

 駅前広場を出て、有楽町イトシアを右手に見ながら直進すると、プランタン銀座の横から始まるマロニエ通りに行き着く。折しもマロニエ通りの入り口には、東急ハンズが出店する「マロニエゲート」が9月1日にオープンした。このほかセレクトショップや飲食店の入る「銀座ベルビア館」も4月19日にマロニエ通り近くに開業するなど、近辺は活況を呈している。

 「以前は線路寄りの道を通って駅から有楽町マリオン方向へ抜ける人が95%だったが、今はマロニエゲート方面へ向かう人が主流になっている」と飯田氏。有楽町イトシアが、有楽町かいわいの人の流れをさらに変化させることは想像に難くない。

 (守山久子)


■有楽町イトシア:http://www.itocia.jp/
東京都中央区有楽町2-7-1
(TEL:有楽町マルイ03-3212-0101)
営業時間 イトシアフードアベニュー11:00〜21:00ほか(テナントにより異なる)、イトシアプラザ11:00〜23:00ほか(テナントにより異なる)、有楽町マルイ:平日11:30〜21:00(カフェは23:00まで)、土11:00〜20:30(カフェは23:00まで)、日祝11:00〜20:00(カフェは22:00まで)
定休日 テナントごとに設定(有楽町マルイは年内無休)

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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