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連載コラム

第58回「オリジナルキャラクターで女性に訴求 〜チョムチョム秋葉原」

[ 2008年5月22日 ]

 「チョムチョム」とは、英語で「おいしいものを食べるイメージ」を表した言葉だ。可愛らしい語感は、主に20代から30代の女性をメインターゲットにする施設のコンセプトを体現したものでもある。
 開業に際しては、周辺のオフィスワーカー、特にOL層への訴求を高めるためにチョムチョムモンスターと呼ぶキャラクターを開発した。建物ファサードに設置したバナーや期間限定で運営している「チョムチョム秋葉原」のウェブサイトで活用している。

 オープニングの2週間前と開業週に秋葉原駅周辺で行ったプロモーションには着ぐるみのチョムチョムモンスターも登場させ、携帯ストラップや無料クーポンと共にパンフレットを配布した。訪れていた人がチョムチョムモンスターの写真をブログに載せ、情報が予想以上に広がるという効果もあった。

 キャラクターを用いた販促は、アミューズメント施設や複合ショッピングセンターではしばしば行われる手法かもしれない。しかし、飲食店を中心としたテナントビルでは珍しい。

 
写真左:外観/写真右:1階入り口の館内案内

チョムチョムモンスターによるプロモーション (写真提供:アトリウム)


 チョムチョム秋葉原が登場したのは、JR秋葉原駅の南東に当たる一画だ。ヨドバシカメラと駅ロータリーの間から延びる大通りに面し、地下1階、地上10階建ての細長いビルとなっている。道路に面した間口は広いので、およそ500m2という各階面積の割に建物のボリューム感は大きい。

 14の飲食店と、物販とサービスの店舗がそれぞれ1つずつ入っている。

 路面レベルの1階は、音楽をテーマにしたカフェ「Player」とコンビニエンスストアの「ファミリーマート」。このほか地下1階から9階までは、各階1〜2店の飲食店が並ぶ。最上階の10階は賃貸住宅の情報を提供する「ドッとあーるtown秋葉原」になっている。

 客席数は、ファミリーマート以外の15店舗の合計で1526席。飲食店の客単価は、夜で4000円から6000円程度という。全般に、しゃれたデザインでありながら気軽に入れる店を集めたかっこうだ。

 正面の左手寄りにエレベーターを置いた建物は、透明感のある明るい外装をまとっている。カーテンウオールの外側をスチール製有孔折板で覆ったダブルシェル(二重壁)の間には、調光によって1600万色表現できるLED(発光ダイオード)を1200個並べている。

 ダブルシェルの壁は、店舗内にいる客の姿が外からそのまま見えないようワンクッションを置く役目を果たすと同時に、省エネルギー効果も狙ったものだ。さらに、夜になるとLEDが光の演出効果をもたらす。

 
写真左:1階カフェまわり/写真右:1階コンビニエンスストアまわり

LEDを組み込んだ二重壁


 チョムチョム秋葉原は、不動産事業に携わるアトリウム(東京都千代田区)が開発した。「女性向けの飲食ビル」づくりへの道のりは、ある意味とても簡潔明瞭だった。

 「秋葉原の街のもつポテンシャルを踏まえつつ、街として不足している要素を補った」。プロジェクトを統括した同社の坂啓次氏は、こう振り返る。

 マーケティング調査などから明らかになった秋葉原の特性とは、次のようなものだった。

 目黒駅など山手線内の駅と比べた際、駅から100m以内のエリアで秋葉原にない業態は、ビジネスホテルと飲食店だ。しかし、580m2という敷地面積はホテルには小さい。必然的に、飲食店ビルを目指すことになった。

 また、もともと秋葉原駅周辺にはオフィスが多く、女性自体は少なくない。しかし女性向けの飲食店が少なかったため、近くのコンビニエンスストアではおよそ8割を女性客が占めたという。昼食に入る店がないため、弁当を買う女性が多かったからだ。夜、食べたり飲んだりする人は、上野や神田、あるいは銀座などへ足を伸ばすことも分かった。

 つくばエクスプレスの開業以来、秋葉原は単なる乗換駅ではなく、20万人規模の人が降り立つ終着駅へと変貌してきた。これらの流入客はもちろん、周辺地域に勤める女性や夜になると外へ流出してしまう人の潜在需要は十分にある。近くにはメーカーも多いので、宴会や接待の利用を見込めるという目算もあった。

 
写真左:デジタル時計「O-clock」を設置した入り口まわり/写真右:エレベーターホール


 通りの向かい側には、阪急電鉄が開発し、4月17日にオープンした「AKIBA TOLIM(アキバ・トリム)」が建っている。無印良品や各種レストラン、ホテル「レム秋葉原」などが入るこのビルも、女性を主ターゲットとした商業施設だ。

 これまで秋葉原駅周辺で大規模な再開発が実施されてきたのは駅の北側だった。ヨドバシカメラや秋葉原UDX、ダイビルなどの商業施設やオフィスビルが生まれ、話題を呼んだ。

 一方、チョムチョム秋葉原などが登場した駅の南東側は、どちらかといえば非主流のイメージを持っていた。そんなエリアに女性をターゲットとした商業施設が並び建った。「デンキ」と「オタク」の街として定着してきた秋葉原に、新しい一面が加わったことになる。

 チョムチョム秋葉原の建物には、従来の秋葉原にはあまりなかった機能も加わった。各テナントへの入り口となる1階エレベーターホールの上部に、「O-clock(オークロック)」と名付けたモニュメントを設けたのだ。

 デジタル表示の大型時計は、パッと見た瞬間には時計と分からないかもしれないデザインになっている。「秋葉原には待ち合わせできる場所がほとんどない。そうしたポイントになってもらえれば」と、プロジェクトの商品企画を担当した山田武男氏は期待する。

 マニアックな個性を売りとしてきた秋葉原が、従来取りこぼしていた客層をいかに吸引していくか。二つの商業施設の登場とそれに伴う人の流れの変化は、街全体の将来を占うものとなる。

 (守山久子)

■chomp chomp 秋葉原:http://www.chompchomp.jp/(期間限定サイト)
東京都千代田区神田佐久間町1-13
営業時間 飲食11:30〜14:00、17:00〜23:30など(店によって異なる)、物販24時間、サービス10:30〜19:30
無休(店によって異なる)

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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