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連載コラム

第59回「京都とディズニーのコラボレーション 〜天空庵『Desney+WA-Qu』ギャラリー&ショップ」

[ 2008年6月24日 ]

 京都・東山に、「ねねの道」という石畳の街路がある。一年坂(一念坂)の足元から円山公園まで南北に結び、豊臣秀吉の正妻「ねね」ゆかりの高台寺が道沿いに建っている。寺や木造家屋に入ったショップが並ぶ道は、観光客がそぞろ歩きするにはもってこいと言える。
 そんなねねの道に面したギャラリー&ショップ「天空庵」が、およそ1年を目処にした期間限定の店を開いている。扱うのは、和空インターナショナルが展開する「Desney+WA-Qu(ディズニー・プラス・ワクウ)」。ウォルト・ディズニー・ジャパンと契約し、和空インターナショナルがライセンス生産するコラボレートブランドだ。


ねねの道に建つ建物。入り口は建物の左端にある
 
写真左:布製看板がかかる入り口/写真右:細いアプローチ

半地下にある天空庵の入り口

 天空庵には、瓦屋根を載せた平屋の横から入る。目印は、道路際にかかる布製の看板だ。竹林を切り抜いたグラフィックを施す細い通路を進んでいくと、半地下部分につくられた店舗の入り口が見えてくる。

 入り口にかかるのれんに描かれた曲線は、ミッキーマウスの姿を投影したもの。円をつなげた曲線だけでミッキーと分からせるキャラクターの個性の強さはさすがだ。

 それと同時に、線描のミッキーはディズニーの世界のはじまりを気配だけで伝えている。鮮やかな色彩や面的なデザインを基本とするディズニーのキャラクターたちとは一線を画した表現が、京都の木造家屋の一画に違和感なく納まっている。

 室内に並ぶキャラクター製品も同様だ。

 伊勢型紙を使った行灯、竹やポリエステル布を用いたのれん、漆塗りの盆やペーパーウェイト、10種類以上の柄を用意した木綿手ぬぐい、ちりめんのコースターなど。ミッキーマウスや101匹わんちゃん、ピノキオなど、ディズニーのキャラクターたちを、時には抽象的なモチーフとして取り入れている。 


ショップ&ギャラリー内観

 和空インターナショナルは、デザイナーや建築家など京都で活動するクリエイターで構成している集団「和空」が設立した会社だ。和空は、京都がはぐくんできた伝統的な技術や美を現代デザインと融合させることを目的に、2002年に発足した。以来、「現代空間における『和』の提案」(和空インターナショナルの西村清一代表)を行っている。

 2003年、ミラノサローネで開いた「WA-Qu」展でデビュー。国内では、2005年に東京ビッグサイトで行われた「JAPANTEX」に出展した。これを見たウォルト・ディズニー・ジャパンの担当者から声をかけられたのが、Desney+WA-Quの始まりだった。

 なぜ、ウォルト・ディズニーは和空の活動に目をつけたのか。西村氏によると、同社には次のような意図があった。

 ディズニーは、大衆市場から高級市場まで幅広く訴求するブランド戦略を取っている。しかし、日本ではハイエンド向きの商品が弱かった。そこで、商品とアートの接点となるような新たな展開を目指すべく、京都の伝統工芸とモダンデザインの融合を目指す和空との共同を考えた。

 申し出を受けた和空は、所属するメンバーがインテリア商品のアイテムをそれぞれデザインすることになった。

 ご存知のように、キャラクターに対するディズニーの著作権管理は厳しい。ライセンス生産をする場合も、例えばミッキーマウスの再現の仕方には指針がある。和空のメンバーは米国でクリエイティブ・ディレクターを務めるディビッド・パチェコ氏に直接会い、キャラクターの表現方法について相談した。

 そこで確認したのは、必ずしも形や比率の正確な再現にとらわれなくてもよいことだった。「例えばミッキーマウスであることが伝わり、モノづくりにきちんとしたストーリーが備わっていれば認証される可能性がある」(西村氏)。

 3つの円を組み合わせてミッキーマウスを表した木綿の手ぬぐいなども、絞り染めだから厳密な図柄は再現できない。一般的なディズニーのライセンス製品では考えられない模様といえそうだ。しかし、絞りで表現しようという試みが評価され、ディズニーからの了解を得た。

 
写真左:入り口見返し/写真右:畳のスペース

 和空インターナショナルは、2007年6月に東京ビッグサイトで開かれた「インテリアライフスタイル」でDesney+WA-Quを発表した。その後、常設展示できるショップを考えていたところ、和空のメンバーであるインテリア・空間デザイナーの山下順三氏が改装を手がけた縁で、天空庵に出店することになった。

 天空庵は、オーナーの佐竹マサヨさんが住宅として使っていた建物を改修したものだ。山下氏はそれまでは物置になっていた半地下空間を、畳のコーナーを備えたギャラリー&ショップに仕立てた。

 風致地区に指定されている一画のため、建物にクギ1本使う場合にも細かい規定がある。ここでは規制をクリアしつつ、路地を一歩入ると新しさを感じさせる空間づくりを行った。新と旧のコラボレーションを体現する空間は、異文化を融合させたDesney+WA-Quを展示するのにふさわしい場となっている。

 (守山久子)

■天空庵:http://ten-qoo-ann.jp/
京都市東山区下河原通八坂鳥居前下ル下河原町463番地29(TEL:075-531-3111)
営業時間 11:00〜18:00
火曜休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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