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連載コラム

第74回「パンツを買うことを楽しむ 〜BODY WILD Under wave」

[ 2010年4月6日 ]

100色展開するボクサーパンツが壁面にずらりと並ぶ。パーツを選んでオリジナルのパンツを作れるコーナーもある。2010年2月3日、グンゼが東京・原宿に「BODY WILD Under wave」を開業した。アンダーウエアブランド「ボディワイルド」初の直営店には、買い物の楽しさを感じさせる仕掛けが盛り込まれている。

 原宿のキャットストリートに、鉄板を折り紙のように折って伏せた真っ黒の建物が建っている。異彩を放つこのビルは、2005年に建築家の安藤忠雄氏が「hhstyle.com/casa」の店舗として設計したものだ。その後、NIKEのショップなどが入っていた建物に、2月、「BODY WILD Under wave」が誕生した。

 グンゼは、1998年からアンダーウエアブランド「ボディワイルド」を展開している。そのブランドリニューアルに併せて、直営店をオープンした。

 「キャットストリートは、20代後半から30代というコアターゲットの世代が多く歩いている場所。トレンドの先端を行き、店の移り変わりが激しい地域でどのように評価されるのか、あえて挑戦しようと考えた」。ブランドリニューアルとBODY WILD Under waveの開発を手がけた竹内哲也・アパレルカンパニーインナーウエア事業本部新規事業開発室室長は、こう振り返る。

建物外観
写真:建物外観

入り口まわりを見下ろす
写真:入り口まわりを見下ろす

 建物内は、中央の吹き抜けをはさみ、細長い売り場がスキップフロア状につながっている。

 入り口から左手へ半階下がったスペースには、100色の成型ボクサーパンツを並べた「100 Colors Style」とカスタマイズパンツのコーナー「BWfit」がある。入り口から半階ずつ上がっていくと、キャッシャー、アーティストとのコラボレーション商品を展示した「Collaboration Style」が続く。

 2.5階と3階はは、食器のデザイン・販売などを行うアブルボアが運営するスペースだ。2.5階には生活雑貨を扱うショップ「Atelier abreuvoir」、3階には「abreuvoir cafe」が入っている。

地下1階「100 Colors Style」
写真:地下1階「100 Colors Style」

2階「Collaboration Style」
写真:2階「Collaboration Style」

2.5階「Atelier abreuvoir」
写真:2.5階「Atelier abreuvoir」

 「BODY WILD Under wave」という店舗が果たす役割の1つは、グンゼが独自の技術によって生み出した新商品を効果的に展示すること。例えば、100色成型ボクサーパンツの「100 Colors Style」やアーティストとのコラボデザインパンツを並べた「Collaboration Style」がこれに当たる。

 100色成型ボクサーパンツは、最少1枚から染色できる自動染色機を活用した商品だ。小ロット製造を可能にした染色機の特徴を生かし、100色という多色展開を考えた。青系だけでもおよそ20色そろえるなど、壁面にずらりとディスプレイされた色の並びはなかなかの迫力を見せる。

 アーティストとのコラボデザインパンツは、インクジェットプリント機の導入で可能になった。1色ずつ版を重ねる印刷方式と異なり、色のグラデーションがきれいに出る。そんなインクジェット機の特性を、グラフィカルな"アートパンツ"へと結びつけた。みうらじゅんや、リリー・フランキーなどがデザインを手がけている。

 いずれの商品開発にも共通するのは、これまでの大量生産型の発想から脱し、多様化したユーザーのニーズに対応しようという狙いだ。そして、これらの特徴ある商品を手に取ってもらい、個々のユーザーの反応を直接汲み取っていく場として、それぞれの売り場は位置付けられている。

 店のもう1つの役割は、商品を買うという行為そのものを楽しんでもらうことにある。「ボディワイルドは、立体成型技術がもたらすフィット感が特徴。従来は、その機能性をいかに訴求するかを考えてきたが、ここではまず"はいていただく"仕掛けづくりを試みた」と竹内さん。これを象徴するのが、カスタマイズパンツを作る「BWfit」だ。

 成型ボディ、腰ゴム、ポケットという3つのパーツごとに100種類ずつのデザインを用意。合計100万種類の組み合わせから、オリジナルの商品を作れるようにした。ユーザーは組み合わせを選び、店内のミシンで製作してもらう。混み具合によって必要時間は異なるが、約15分での引き渡しを目安としている。

 このほか、アブルボアの生活雑貨コーナーやカフェを併設したのも、楽しんでもらう場づくりの一環といえる。「カスタマイズ商品を引き渡すまでの時間もあるので、店内のあちこちを歩いて楽しんでいただきたい。ほかにもデッキ調のテラスやレンタサイクルなどを備えて、『ここに来ると何かができる』という期待にこたえる場所にした」(竹内さん)。

地下1階「BWfit」のミシンコーナー
写真:地下1階「BWfit」のミシンコーナー

「Bwfit」の注文用シート
写真:「Bwfit」の注文用シート

3階「abreuvoir cafe」
写真:3階「abreuvoir cafe」

 オープン間もなく迎えたバレンタインデーの直前には、開店前からおよそ20組が並んで待っていたという。取材した日も、「BWfit」では若い男性のグループが1時間以上をかけて選んでいた。

 男性向きブランドという印象が強かったボディワイルドだが、実は、もともと女性向きの商品も用意している。商品の幅広さの訴求と顧客層の拡大は、ブランドリニューアルの大きな狙いでもあった。

 実際、オープン後は女性客が半数を占めている。女性客が買うのは、男性用と女性用でおよそ半々。ギフト用に求める客も相当数いる。「50代の夫婦も含めて、楽しそうにパンツを買ってくださっている。こうしたところからギフト用の市場も広めていきたい」と竹内さんは抱負を語る。

 グンゼは、本来の商業施設が備える"買い物を楽しむ"機能を強く意識した店づくりで、初年度1億円の売り上げを目指す。

(守山久子)

■BODY WILD Under wave
http://www.bodywild.com/
東京都渋谷区神宮前6-14-5
TEL 03-3409-6891
営業時間 11:30〜20:00
定休日 月曜(祝日は営業)

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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