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連載コラム

第76回「二面性を支える確かな計算 〜Francfranc Village」

[ 2010年6月28日 ]

東京メトロ表参道駅から青山通りを北へ歩いて行くと、ビルの間に、目を引く外観の建物が登場する。2010年5月22日にオープンした「Francfranc Village」だ。バルスが展開するFrancfrancのコンセプトショップが入る建物は、一見派手な空間演出のなかに、物販店としての勘所を押さえた設計を施している。

 派手なのか、奥ゆかしいのか。「Francfranc Village(フランフラン ビレッジ)」は、二面性を感じさせるデザインの店舗だ。

 施設の核となる「AOYAMA Francfranc」は、銀座や渋谷の店舗に次ぐFrancfrancの3つ目のコンセプトショップとなる。「アーバンカジュアルをコンセプトに、都会に住む大人の普段使いの商品となるアイテムをそろえた」と、運営するバルス広報担当者は説明する。建物デザインは、ホテルや飲食店など、国内外で多くのインテリアを手がける森田恭通氏が担当した。

写真1:Francfranc Village外観
写真1:Francfranc Village外観

写真2:AOYAMA Francfranc店内
写真2:AOYAMA Francfranc店内

 建物外観の"派手さ"は、例えば外装のペイントに象徴される。

 倉庫のような建物を覆う白地のパイン材に、シマウマの柄にも見える黒い模様が描かれている。ヘルメットやバケツなど様々な立体物に絵を描いているカスタムペインター、倉科昌高氏の作品だ。パイン材がもつ素朴な肌合いとは対照的に、ペインティングは滑らかで艶かしく、動物的な印象を与える。

 この大胆なファサードをもつ建物の正面には、小さな切妻屋根がかかったガラスの黒いボックスが4つ飛び出している。

 ここで顔を出すのは、約2.5坪(8平方メートル強)のミニショップ。英情報誌のセレクトショップ「THE MONOCLE SHOP TOKYO」、ハワイのローカルスイーツであるマラサダ・ドーナツの専門店「GOOD DAYS MALASADA」、たこ焼き店「AOTAKO」、本物そっくりの動物オブジェの店「CREATURE VALLEY(クリーチャーヴァレー)」の4店が入る。さらに、カフェ&ダイニング「PACIFIC COAST HOUSE」の入り口もある。

一方、AOYAMA Francfrancは、路面に面したボックス部分からは奥まった建物本体を占めている。つまり、通常は路面店が最も重視する場所をテナントに譲っている。目立つ外観とは裏腹に、奥ゆかしさを感じた所以だ。

写真3:店内のシャンデリア
写真3:店内のシャンデリア

写真4:額縁形の中央ディスプレー什器
写真4:額縁形の中央ディスプレー什器

写真5:カスタムペイントを施した壁面
写真5:カスタムペイントを施した壁面

写真6:いすを集めた壁面インスタレーション
写真6:いすを集めた壁面インスタレーション

 建物内に入っても、こうした二面性を感じさせるデザインは変わらない。

 AOYAMA Francfrancは、大きな吹き抜け空間が中央に広がり、コの字形をした2階の売り場が吹き抜けを取り囲むシンプルな構成をもつ。ロサンゼルスの店舗のような"抜け感"のある建物にしようという森田氏の意図があったという。

 店内に足を踏み入れると、まず目に付くのは、大きな吹き抜けに吊り下がる巨大シャンデリアだ。シャンパンゴールド色のカバーにLED照明を組み込んだランプを約700個、大きなベルの形に並べている。

 大シャンデリアの下に並んだディスプレー用の可動什器は、額縁をイメージした装飾的なデザインを取り入れたもの。さらに、正面入り口の壁には花と動物を描いた倉科氏の作品を配し、各売り場の壁面上部には、いす、書籍、キッチン小物を真っ白に塗装してオブジェのように見せたインスタレーションを施している。

 身近な小物を数多く集めて見せる量感の演出、遊び心に満ちた発想の大胆さは、まさに森田恭通ワールドと言えるのだろう。

 もっとも、こうした演出の派手さを感じるのは、やや引いた目線で店内をぐるりと見渡したときのことだ。装飾的な什器やオブジェが白で統一されていることもあって、商品ディスプレーに近づくとこれらの演出は気にならず、商品そのものに集中できる。

 商品自体、アイテムによってはクリスマスケーキのように段状に盛り上げて展示するなど、広々とした空間に負けないボリューム感のあるディスプレーを行っている。様々な空間演出は、これらディスプレー周辺の余白部分に限定している。一見、派手な空間演出は、あくまでも背景という"分"をわきまえて存在しているのだ。

写真7:可動什器まわり
写真7:可動什器まわり

写真8:カフェ&ダイニング「PACIFIC COAST HOUSE」
写真8:カフェ&ダイニング「PACIFIC COAST HOUSE」

AOYAMA Francfrancは、1階が食器や小物などの雑貨類を中心にした構成で、2階に照明やクッション・ラグ、家具などの売り場がある。限定商品や先行発売商品を販売するほか、家具の新ブランド「GLAMPIECE(グラムピース)」も展示している。新ブランドは、「モノを着飾る」というコンセプトの下、複数のカバーを取り替えられるようにしたソファなどを用意するのが特徴だ。

 1992年の創業以来、25歳の独身女性をメインターゲットに商品と店舗の展開を図ってきたFrancfrancは、今年に入って、大人にも楽しめるようなブランド展開を進めてきた。従来の核となるターゲット層はそのままに、「マインドエイジ25歳」、つまり気持ちのうえで若さを保っている大人の層も取り込んでいく。

 そのため商品の構成も、アート性やデザイン性を感じさせる商品へと重点を映している。装飾やペインティングを取り入れた建物のデザインは、こうした商品展開に呼応したものだった。

 自己主張するデザイン要素を取り入れつつ、全体のなかでのバランスを配慮した空間構成。そこには、大人の遊び心と分別が投影されているようだ。

(守山久子)

■Francfranc Village
http://www.francfranc.com/
東京都港区南青山3-11-13 
TEL 03-5413-2511
営業時間 11:00~22:00
定休日  無休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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