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連載コラム

第77回「"ワインセラー風什器"と接客で高級ブランド通りに出店 〜フォーナインズ銀座並木通り店」

[ 2010年9月10日 ]

2010年7月10日、「フォーナインズ銀座並木通り店」がオープンした。ブランド6番目の直営店となる同店は、立地特性を生かして1対1の接客を重視しているのが特徴だ。客はソファやテーブル席に腰掛けて眼鏡フレームを選ぶ。ワインセラー風の壁面什器は、商品ストックを確保しつつ"特別感"を演出している。

 東京・銀座の並木通りと言えば、高級ブランドや老舗がずらりと軒を並べた通りとして名高い。そこに出店することは、店舗側にとって重要な意味を持つ。眼鏡フレームのブランド「999.9」を展開するフォーナインズも、「銀座並木通り店」ではこれまでの直営店とは異なる店づくりに取り組んだ。

 「従来の直営店では、機能美の表現をコンセプトとする製品のように、機能を露出した店舗構成を心がけてきた。それに対して今回は、個と個のコミュニケーションをより重視したつくりを目指した」と、櫻井利也・フォーナインズ専務は話す。

 「999.9」ブランドは、個人事務所フォーナインズデザインラボラトリーが1995年に眼鏡フレームを発売したところから始まった。視力矯正器具としての役割を踏まえたうえで、機能とデザインの両立を図っていくのが同社の眼鏡フレームづくりの基本姿勢という。レンズを含めて7万円前後の商品が中心となる。

 銀座並木通り店は、銀座(銀座3丁目)、渋谷(公園通り)、新宿(伊勢丹新宿店メンズ館)、二子玉川(玉川髙島屋S・C南館)、青山(骨董通り)に続く6つめの直営店舗に当たる。並木通りに立地する店を利用する客は富裕層が多い。ここではそうした客層を意識し、1対1の接客対応を強化した空間構成とした。

写真1:外観  ※写真1提供:フォーナインズ
写真1:外観 ※写真1提供:フォーナインズ

写真2:エントランス
写真2:エントランス

 店の構成は、次のようになっている。

 店舗は、間口が狭くて奥行きの長い"うなぎの寝床"のような平面をもつ。約80平方メートル(25坪)の店内を、並木通りに面したエントランスと奥の接客ゾーンに分けている。接客ゾーンに続いて、視力測定のスペースや、鏡といすを置いたフィッティングスペースが並ぶ。

 エントランスは展示ゾーンで、天井近くまで立ち上がったL字形什器が、奥のスペースとの間を緩やかに仕切っている。中央の平場にはガラスで覆われた箱形の展示什器が置かれている。

 フォーナインズでは、眼鏡フレーム全体のデザインを見せるため、テンプル(つる)を開いた状態で展示することが多い。そのため、商品1つずつに要するスペースは広くなり、ゆったりとしたディスプレーになっている。

写真3:壁のディスプレー
写真3:壁のディスプレー

写真4:視力測定のスペース
写真4:視力測定のスペース

 一方、奥の接客ゾーンは、銀座並木通り店独自のものだ。

 楕円テーブルやソファ、デスク席という3タイプの客席を用意し、客の雰囲気や嗜好に応じて、ふさわしい席へと導くようにしている。それぞれの客席には、眼鏡をかけた様子を確認するための丸鏡のほか、フレーム調整用の工具を入れた引き出しやワゴンなどを備えている。従来の直営店では各サービスを受けるためのコーナーを客自身が移動していく方式だったが、ここでは客自身は動かず、席に座ったままサービスを受けられる。

 エントランスと接客ゾーンでは、空間のしつらえにも変化をつけた。

 石張りの床で硬質な印象をもつエントランスに対し、接客ゾーンには落ち着いたカーペット敷きを採用した。カーテン状のファブリックも、接客ゾーンでは一方の壁面いっぱいに垂らし、柔らかい雰囲気を加えている。

 接客ゾーンを設けた分、エントランスの展示スペースはこれまでの直営店に比べると面積が小さい。そこで、眼鏡フレームの在庫を確保するために設けたのが、ソファスペースの対面に位置するストック棚だ。

 ガラスで仕切られた空間の壁一面に、上下15段、横22列の棚が連なる。まるでワインセラーだ。各棚は引き出し状になっていて、手前に置いた商品のバリエーションを奥に納めている。全体でおよそ1800本の商品を保管できるスペースを確保している。

 棚の商品は、スタッフがガラス扉を開けて中に入り、出し入れする。棚の照明はあえて絞り、ストックの場としての役割を強調している。保管する商品の量感を見せることに加え、ワインを大切に保存する風景にも似た"特別感"の演出が、空間表現の大きな要素となっている。

写真5:楕円テーブル席からエントランスを見返す
写真5:楕円テーブル席からエントランスを見返す

写真6:ソファ・デスク席とストック棚
写真6:ソファ・デスク席とストック棚

写真7:ストック棚の引き出し
写真7:ストック棚の引き出し

 「ブランドの目的は"継続"にある。いったん世に出したものはしっかり続けていくことがお客様へのマナーだと考えている。並木通りという歴史ある場所で自分たちの存在を根付かせていくことは、そういう意味でも意義深く、大きな挑戦になる」と櫻井氏は話す。

 フォーナインズは並木通りへの出店を、時間軸を見据えたブランド育成の1つの道標としても位置付けている。

(守山久子)

■フォーナインズ銀座並木通り店
http://www.fournines.co.jp/
東京都中央区銀座7-5-4 海東ビル1階 
TEL 03-6218-4949
営業時間 11:00~20:00
定休日  火曜(祝日は営業)

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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