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連載コラム

第78回「動きある演出で先進性を表現 〜ユニクロ心斎橋店」

[ 2010年11月2日 ]

2010年10月1日、大阪が誇る繁華街・心斎橋にユニクロのグローバル旗艦店が誕生した。地下1階・地上4階、売り場面積およそ800坪(約2600㎡)の「ユニクロ心斎橋店」だ。夜になると多彩な色が演出される外観や店内のフライングマネキンなど、人をあっと驚かせる仕掛けによってブランドの先進性を表現している。

 心斎橋の夜景が、また1つ華やかになった。

 その理由は、「ユニクロ心斎橋店」にある。地上4階建ての建物は、2枚の膜の間に空気を入れて膨らませたクッション状のユニットを並べた外観をもつ。夕方5時を過ぎると2.7m角のユニット158枚で構成される外壁が、内蔵するLEDによってさまざまな色に移り変わる。

 その動きは多彩だ。全体が真っ白になったかと思えば、赤地に白で「ユニクロ」の文字が浮かび上がる。赤と白の市松模様もある。全体が青一色になって揺らめくように白が出てきた後には、黄色や緑のパターンによる動きも登場する。色鮮やかで、めまぐるしい。

 ユニクロ心斎橋店は、南北に延びる心斎橋筋のアーケードに面している。ただし、東西に走る大通り・長堀通りからは1本奥まった通りに位置する。そのため、通り沿いに建つ商業ビル「ラ・ポルト心斎橋」によって建物は一部隠され、長堀通りから全体像は見えない。

 しかし、そんなハンデを感じさせないくらい外観の派手さは際立っている。

写真1:昼の外観
写真1:昼の外観

写真2:夜の外観
写真2:夜の外観 1

写真2:夜の外観
写真3:夜の外観 2

写真2:夜の外観
写真4:夜の外観 3

 「日本初、世界で5番目のグローバル旗艦店は、商品と売り場を通して先進的でイノベーティブなユニクロというブランドを体感していただく店。店での体験を心に残してもらう手法として、強烈なインパクトを与える店づくりは有効だと考えている」とユニクロの広報担当者は語る。

 効果的にインパクトを与える手法として、ここで活用しているのが"動き"をもつ演出だ。外観では多彩なLED照明がこれに当たる。一方、店内には「フライングマネキン」という仕掛けを用意した。

 フライングマネキンは、アーケードから正面エントランスを入ってすぐの吹き抜け部分に設置されている。最新のカラフルなダウンを身にまとった6体のマネキンが円周上に並び、1階から4階までの間をするすると上下に移動する。マネキンはときどき各フロアに停止して、その階の客に存在をアピールする。

 1階から吹き抜けを見上げ、不規則に上下する6体の動きを追うのはなかなか面白い。また、たとえば3階の売り場を歩いているときに突然階下からマネキンが出てくる光景に出くわすと、仕組みを知らない人であればかなり驚くに違いない。そのくらい目新しい体験だった。

 こうした驚きを与える店舗の計画には、現在の日本でも先端的な活躍をするクリエイター陣が加わった。

 トータルプロデュースを担当した佐藤可士和氏、店舗プロデュースを担当した片山正通氏は、これまでもユニクロの店舗づくりに携わってきたコンビだ。さらに今回は、店舗・建築デザインに藤本壮介氏、照明デザインに東京スカイツリーの照明を手がけている戸恒浩人氏を起用。従来のユニクロ店舗の考え方を保ちつつ新しい血を注ぎ入れた。

写真5:フライングマネキン
写真5:フライングマネキン

写真6:3階に登場したフライングマネキン
写真6:3階吹き抜けに登場したフライングマネキン

 売り場は、アーケード側の間口が狭く、奥は広くなった"旗ざお"形状をもっている。店内は、この間口の変化に合わせて大きく2つに分割されている。両者の境界には光のゲートがあり、領域の違いを意識づける。

 間口の狭いアーケード側は、動的なエリアといえる。入り口側のフライングマネキンに続き、その奥には主要な縦動線となるエスカレーターを配している。1階から4階までの吹き抜けを通して、ガラス張りの屋根から自然光が入り込む。時間帯によって店内の光の具合が変化するという点でも、動きを感じさせる空間だ。

 また各階の天井は鏡面仕上げにしているため、天井いっぱいまで積み重なった商品の量と人の動きが反射によって増幅される。間口の狭さを感じさせないと同時に、量感と動感を高めて活気をもたらす工夫といえる。アーケードに面した1、2階はガラス張りなので、人やフライングマネキンの動き、商品の様子は外からもよく見える。

写真7:トップライトの吹き抜けまわり
写真7:トップライトの吹き抜けまわり

写真8:鏡面仕上げの天井
写真8:鏡面仕上げの天井

写真9:2つのエリアを分ける光のゲート
写真9:2つのエリアを分ける光のゲート

 これに対し、間口が広い奥のエリアは、白い壁をもつ静的で落ち着いた空間になっている。

 壁面に沿って配置したディスプレー棚のほか、中央の平場には比較的背の低い什器が並び、全体の見通しがいい。柱の回りに設けたガラス張りのディスプレーボックスは各フロア共通の仕様で、各フロアの商品に合わせた特色ある展示を行うスペースだ。全体に商品の特徴やコーディネート方法などを分かりやすく伝えることに主眼を置いたディスプレーになっている。

写真10:1階売り場
写真10:メンズ、ウィメンズのキャンペーン商品を中心に展示する1階売り場

写真11:1階の柱回りディスプレー周辺
写真11:1階の柱回りディスプレイ周辺

写真12:3階売り場
写真12:メンズカジュアルの3階売り場

 心斎橋店は、ユニクロ全体の今後の商品展開を見据え、新しい戦略を仕掛けていくための店舗として位置付けられている。この店では、店長の判断によって商品の品ぞろえを独自に調整できるという。VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の専門スタッフも2人置く。

 派手な見た目の店づくりの背後には、情報発信の場としての機能を維持していくための運営上の仕組みも用意されている。

■ユニクロ心斎橋店
http://www.uniqlo.com/jp/
大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-2-17
TEL 06-4963-9172

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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