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連載コラム

第82回「ダイナミックな動線で駅まわりを再構築 〜大阪ステーションシティ」

[ 2011年7月13日 ]

JR大阪駅の南北を開発した「大阪ステーションシティ」が、ゴールデンウィーク中の2011年5月4日に全面開業した。既存建物を増床した駅南側の「サウスゲートビルディング」に加え、駅北側には商業施設を核テナントとする2棟が並んだ「ノースゲートビルディング」を新築。両側の建物を結ぶ広場を駅上に設け、駅まわりの動線を強化した商業ゾーンが誕生した。

 5月4日に全面オープンした「大阪ステーションシティ」は、JR大阪駅をはさんで並び建つサウスゲートビルディングとノースゲートビルディングを中心とした施設だ。6つの駅プラットフォームの上をまたいで延びる3階レベルの改札階と5階レベルの「時空(とき)の広場」が、両側の建物を直接結ぶ。

 「時空の広場」の中央にはカフェが1軒あり、周辺に置かれたベンチでは思い思いの様子で通行客がくつろぐ。その上空を、南北約100メートル、東西約180メートルの大きさをもつ流線形の大屋根が覆う。

 北側のノースゲートビルディングには、もう1つ目を引く仕掛けが用意されている。「時空の広場」から7階を介してレストラン階の10階まで、建物内の吹き抜けを横断していくようにエスカレーターが延びているのだ。特にエスカレーターを降りる際は眼下に広がるプラットフォーム空間へ降りていくようで、大都市のターミナル駅ならではのダイナミックな風景が展開する。

写真1:
写真1:大阪ステーションシティ外観。
大屋根の左側がサウスゲートビルディング、右がノースゲートビルディング

写真2:
写真2:5階レベルに広がる「時空の広場」

写真3:
写真3:10階へ直接アプローチするエスカレーター

写真4:
写真4:エスカレーターからの眺望

 駅の南側に建つ「サウスゲートビルディング」は、以前は「アクティ大阪」と呼ばれていた。大丸梅田店とホテルグランヴィア大阪の入る地下4階・地上28階建ての建物で、今回は地下2階から地上15階までを増床した。一方、駅の北側には2つの棟が並んだ「ノースゲートビルディング」を新築。低層部を中心に、百貨店の「JR大阪三越伊勢丹」と専門店ビル「ルクア」、12スクリーンをもつシネマコンプレックス「大阪ステーションシティシネマ」などの商業施設が入居する。

 大阪ステーションシティには、全部で8つの広場がちりばめられている。

 ホームをまたぐ「時空の広場」のほか、ノースゲートビルディングの2つの棟の間に広がる8層吹き抜けの「アトリウム広場」、ノースゲートビルディングから阪急電車に続くペデストリアンデッキのたもとにある「カリヨン広場」などだ。サウスゲートビルディングの1階には、水の時計を設置した「南ゲート広場」もある。これら低層部の広場は、駅内外の動線の結節点として機能する。

 一方、サウスゲートビルディングの増床部分の上部に設けた「太陽の広場」、ノースゲートビルディングの10階と11階につくった「和らぎの庭」、「風の広場」など、屋上部分を利用した広場もある。14階には「天空の農園」と呼ぶ菜園も用意した。

 「和らぎの庭」と「風の広場」は空中エスカレーターで下階から直接アプローチでき、レストラン階などからもそのまま出られる。建物構成と広場の空間がうまく融合したつくりだ。空間には小さな池や緑の周りにベンチやテーブルが並び、西に向けて広がる市街地を見ながら談笑する人もたくさんいた。

写真5:
写真5:アトリウム広場

写真6:
写真6:アトリウム広場から見た専門店ビル「ルクア」

写真7:
写真7:JR大阪三越伊勢丹のエントランス

「当初は、単純に『駅の北側に箱ものを建てる』という選択肢もあった。ただ、JR西日本のフラッグシップとなる大阪駅の位置付けを考慮すると、沿線価値を高めるための駅自体の魅力向上は大きな命題。既存の駅ビルがあり周辺開発されている南側部分と一体開発し、これまで分断されていた駅の両側を結ぶことは、周辺地域の発展にも不可欠だと考えた」。駅両側のビルの建設と「時空の広場」も含めた運営管理を担う大阪ターミナルビルの江本達哉常務は、そう振り返る。

 もともと今回の開発は、梅田北ヤードと呼ばれる旧コンテナヤードの再開発と連動するものだった。駅の北側に隣接し、全体で約24ヘクタールもの面積をもつ北ヤードは、大阪駅周辺で残された最後の一等地と言われている。現在は、このうち7ヘクタールでナレッジキャピタルゾーンを核とする開発工事が進み、オフィスやホテルなどが建設される。駅に接したエリアは広場となり、ノースゲートビルディングと一体化する予定だ。

 ノースゲートビルディングは、こうした北側の都市開発地域に対する玄関口として機能する。「都市計画上の要請と、大阪駅という立地上の強み。これらを考えると、建物だけで完結するような閉じたつくりではなく、人が行き交うオープンな構成とし、駅周辺のあらゆるところに結節させていくことは半ば必然的な選択だった」(江本氏)。

写真8:
写真8:11階「風の広場」

写真9:
写真9:「風の広場」の池

 経済上の効率だけを考えれば、オープンな空間をあちこちに盛り込んだ大阪ステーションシティは"無駄"が多いとも言える。駅の大屋根についても、外から雨が吹き込むことが分かり、プラットフォーム上に一部ガラスの屋根を架けるという追加工事を決定した。大らかな話ではある。

 ただ、JR大阪駅の近くには、地下の飲食店街に人工の川が流れる阪急梅田駅のショッピングゾーン「阪急三番街」という先例が存在する。効率優先主義でつくられそうな商業ゾーンにも"まち"の要素を取り入れようとする----。そんな心意気が、大阪ステーションシティにも脈々と伝わっている。

■大阪ステーションシティ
http://osakastationcity.com/
大阪市北区梅田3-1-1など
TEL 06-6458-0212(大阪ステーションシティ北インフォメーション)
営業時間 
[JR大阪三越伊勢丹]10:00~20:00など、レストラン階11:00〜23:00、
[ルクアショップ]10:00〜21:00、レストラン11:00〜23:00、
[大丸梅田店]10:00~20:00など、レストラン階11:00〜23:00など
定休日 なし(不定休)

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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