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連載コラム

第83回「約20年ぶりが映し出すデザインの"今" 〜デザインコレクション」

[ 2011年10月11日 ]

東京・松屋銀座7階にある「デザインコレクション」が、2011年8月26日にリニューアルオープンした。1955年に生まれ、セレクトショップの草分けとも呼べる同店が改装するのは、1989年以来実に20年余ぶり。環境配慮やサスティナビリティーが重視される時代状況も反映し、端正なたたずまいのショップ空間になった。

 柳宗理のステンレスボウル、新居猛のニーチェア、白山陶器(森正洋)のしょうゆ差しといった国内モダニズムの古典的作品から、北欧やイタリアの生活雑貨まで。木目や白色のディスプレイ什器には、お馴染みの品を含めたデザイン商品がずらりと並ぶ。

 銀座松屋の7階中央部に位置する「デザインコレクション」が、併設する「デザインギャラリー1953」と共に約20年ぶりの改装を行った。全面ガラスで周囲の売り場と仕切られた店舗は、開放的ななかに落ち着いたたたずまいを見せている。

 「現代生活におけるデザインの原型ともいえる製品はここに来れば必ずある...。そんな店づくりを目指しました」。店舗の企画運営に携わる日本デザインコミッティーの事務局長を務める土田真理子さんは、デザイナーたちの意図をこう説明する。

写真1
写真1:「デザインコレクション」中央のスペース

写真2
写真2:店内のディスプレイ

写真2
写真3:新設したデザイン書籍コーナー

 日本デザインコミッティーは、生活を豊かにするデザインの啓蒙を目的に掲げて活動する組織だ。

 1953年、剣持勇、丹下健三、亀倉雄策をはじめとするデザイナーや評論家12人が集まって設立した。1955年には、デザインコレクションの原点となるグッドデザイン・コーナーを松屋銀座内に開設した。さらに1964年には隣接してデザインギャラリーをつくり、国内外の優れたデザインを紹介する企画を継続的に開いてきた。

 現在の日本デザインコミッティーには、プロダクト、グラフィック、インテリアや建築などの各分野で日本のデザイン界をリードするデザイナーら25人が参画している。今回のリニューアルでは、プロダクトデザイナーの深澤直人、グラフィックデザイナーの佐藤卓、照明デザイナーの面出薫の各氏が、内装、店内グラフィック、店内照明のデザインをそれぞれ担当した。ポスターのデザインは、グラフィックデザイナーの佐藤晃一氏が手掛けている。

 深澤氏は、優れたデザインの原型を意味する「デザインクラシック」と、新しく刺激的なデザインが併存する店舗づくりを強く意識したという。見通しの良い空間に商品を並べた店内は、一見、普通のセレクトショップのようだ。しかし良く見ると、無駄な要素を削ぎ落とした構成のあちこちに強い美意識を感じ取れる。

 デザインコレクションでは、3辺を覆うガラス面とレジカウンターに沿って、背の低い木調のオリジナル什器がロの字形に囲む。その中央に3列並べた背の高いディスプレイ什器は、英国・ヴィツゥ社のシステム家具「606シェルビング・システム」だ。いずれの什器も棚の部分を金属の脚で持ち上げ、空間全体に軽快な印象をもたらしている。

 システム什器の頭部へ上向きに設置した照明器具は、天井を照らし出す。天井の反射光を用いることで、商品に影を落とさない平明な光環境を狙ったものだ。それなりの密度で整然と展示した個々の商品の脇には、デザインコミッティーのメンバーが書いたデザイン解説のプレートを添えている。このプレートは、佐藤卓氏がデザインした。

 佐藤氏は、店空間を取り巻く壁面でもグラフィック処理を施している。ショップスペースの3面を取り囲むガラス面には「DESIGIN COLLECTION」という文字を彫り込み、ギャラリー部分を覆う壁には1964年以降開いたイベントの名称をアルファベットで列記した。松屋銀座が長く支えてきたデザイン啓蒙活動の歴史を示し、"デザインの松屋銀座"というブランド性を視覚化した趣向といえる。

写真4
写真4:「606シェルビング・システム」を用いたディスプレイ

写真5
写真5:レジカウンターまわり

写真6
写真6: 商品に添えた解説プレート

写真7
写真7:ガラス面に施した店名グラフィック

 前回リニューアルを行った1989年は、インテリアデザイナーの内田繁氏が室内デザインを手掛けた。オレンジ色の柱やブルーの床をもち、壁面で閉じた店舗は、空間性を強く意識したものだった。80年代に一斉を風靡したDCブランドの店がそうだったように、インテリアを前面に押し出した店づくりは当時を象徴する。また、コンランショップやフランフランのような内外のセレクトショップはまだ国内に登場していない時代でもあった。

 しかしその後、セレクトショップが各地に生まれ、デザイン性に優れる生活雑貨は一般化してきた。店舗デザインの潮流も、主張の効いたデザインの店内でゆったりと商品を配置する手法から、商品重視のディスプレイへと変わっていく。さらに環境配慮などを背景にしたサスティナブルなデザインへの志向も加わった。

 デザインコレクションの新しい店内は、こうしたデザイン環境そのものの変化を投影している。強いインパクトを与えてデザインの価値を訴えるのではなく、長く存続するデザインの良さを体現する展示の形。商空間としては珍しい"20年ぶりの改装"は、そんな違いを分かりやすく浮き彫りにした。

写真8
写真8:「デザインギャラリー1953」側の外観。これまで開いたイベントの名前を白い壁に列記している

写真9
写真9:デザインギャラリーの内部

■デザインコレクション
http://www.matsuya.com/(松屋)
東京都中央区銀座3-6-1
TEL 03-3567-1211(松屋銀座大代表)
営業時間 10:00〜20:00
定休日 なし

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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