日経メッセ > JAPAN SHOP > 連載コラム > みんなの笑顔と幸せをよぶ、VMD+五感表現 > みんなの笑顔と幸せをよぶ、VMD+五感表現

連載コラム

みんなの笑顔と幸せをよぶ、VMD+五感表現

[ 2014年3月4日 ]

五感に訴える空間づくり

 近年ますますIT化が進み、誰でも簡単にネットでモノを購入できるようになりました。こんな時代だからこそ、リアルな店舗での買い物には、ネットショッピング以上の価値が求められる時代になっているのです。
そこで重要になってくるのが、リアル店舗の魅力づくりの重要性です。来店客の心を動かすためには、五感に訴える店舗づくりがとても大切だと感じています。

 最近では、単にモノを買うだけでなく、その先の使い方や楽しみ方などを提案するライフスタイルショップや海外の雑貨を扱うショップなどが増えています。理想の暮らしが買えるお店やついつい共感しながら買いたくなるお店が増えてきた背景には、リアル店舗の持つ価値を高めるために行きついたスタイルが見え隠れしています。

 そのようなお店の共通点は、楽しい時間や記憶、コミュニケーション、人の心を動かす何かが得られる点です。特に五感的要素の中でも見る・聞く・香る・触れるにこだわりを持つお店が多いのが特徴と言えるでしょう。そこに注力した結果、お客様の心を動かし、そのお店で購入する価値や理由づけを高めているように感じます。

 海外には、そのような価値の高い店舗づくりやお客様とのコミュニケーションをいち早く取り入れているところが数多くあり、そこにはお手本とヒントが沢山隠されていると感じます。
ニューヨークを例に挙げてみましょう。地下鉄ではジャズの演奏をしている人がいて、身近に音楽を感じることができます。百貨店の店頭では、プロモーションの仕掛けにダンスが日常的に取り入れられています。ここでは当たり前のように生活の中に音楽やダンスがあり、街の中はライブ感であふれ、人々の心を温かい気持ちにしていると思いました。
もちろん日本とは文化の違いもありますが、私の目指すVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)の姿を垣間みるようでした。

五感に訴える空間づくり01

五感に訴える空間づくり02

五感コンテンツを上手に活用

 新しい未来型店舗には、五感に響く空間づくりがとても重要だと考えます。
 私は、視覚に訴える商品政策やお客様が買いたくなる売場づくり、目に見えるしくみ、売場・店のコンセプトを視覚的に伝えることを専門としたVMDコンサルティングや空間づくりのサポートをしています。

 VMDコンサルティングの目的は店舗やショップの売上を上げることですが、それにはお客様を増やす、買上率を上げる、単価を上げるなどの方法があります。そのためには、お客様の店舗における購買心理を上手に活用しなければなりません。そこでVMDが重要なキーポイントになってきます。
 まずは視覚的表現を工夫します。さらに、その空間演出に必要不可欠なサウンドデザインや、お店での過ごした時間が記憶に残るアロマデザインなど香りの表現も欠かせません。それらをミックスさせた魅力が、リアル店舗や空間をより快適な場所へと導き、その結果として空間や店舗ブランディングを高めながら売上アップに結びつけていくのです。

 本来、VMDには「衝動買いをどれだけストーリー仕立てに表現できるか」との狙いがあります。購買心理のプロセスAIDMAの法則「ATTENTION(注意)、INTEREST(関心)、DESIRE(欲求)、MEMORY(記憶)、ACTION(行動)」に五感を上手に組み合わせて、お客様の心をより動かすことができるのです。

五感コンテンツを上手に活用01

感情を揺り動かすサウンドデザイン

 五感の中でも、今回はまず音に注目してみましょう。
例えば、音のない映像を見ても、なかなか感情を揺り動かすのは困難です。しかし、その逆を考えてみると、そこに例え映像が無くても、音があれば感動や興奮を呼び起しやすくなります。
その空間にふさわしいサウンドデザインを施すことで、よりVMDを効果的な手法にできるのです。

 音のないショーウィンドウと音のあるショーウィンドウでは、ATTENTION(注意)の効果が全く違ってきます。
ニューヨークのヘラルド・スクエアにあるMacy's(メイシーズ)のショーウィンドウは圧巻でした。「Dream...and Believe」(夢を見て、信じなさい)というテーマで、五面あるすべてのショーウィンドウは芸術性の高いハンドワークの作品と最先端技術テクノロジーが融合し、眠っている子供の夢の旅を見事に表現していました。DDIウインドウコンテストで見事に1位を獲得した、このMacy'sのショーウィンドウでは物語の世界観に連動したサウンドデザインが表現され、見る人の感動を生みだす重要な役割を果たしていました。
 Macy'sに限らず、ニューヨークで人だかりが出来ているショーウィンドウには必ず音がありました。それはショーウィンドウの持つ世界観に合わせたサウンドデザインが、とても重要な要素であることを示しています。

お客様であふれるニューヨーク、ヘラルド・スクエアのMacy'sのショーウィンドウ「Dream...and Believe」お客様であふれるニューヨーク、ヘラルド・スクエアのMacy'sのショーウィンドウ「Dream...and Believe」

記憶に残る香り

 次は香りについて考えてみましょう。香りは五感の中でも人の記憶を長く印象づける働きがあります。そのため店内での欲求や記憶を残すのに、香りは不可欠な要素なのです。それぞれのコーナーのブランディング効果やリラクゼーション効果、意識を高める効能など、特に女性ターゲットの店舗において重要な役割を果たします。ニューヨークのファッショ二スタから圧倒的な支持を得ているAnthropologie(アンソロポロジー)は全く広告を出さないことで知られていますが、香りを効果的に使用していてVMDの考え方からも世界的に有名なお店です。すべて手作業で作られるディスプレイは、どれも時間をかけて丁寧に作られたものばかりで、「お客様に圧倒的な感動を与えるお店」として認知されています。

 来店されたお客様の滞在時間が平均1時間15分と長く、その秘密は香りにあると言われています。コーナーごとに完璧な世界観が作り出されていて、アロマキャンドルやソープなど、それぞれの商品の香りが立ち込めています。店内を周遊していくと、そのコーナーにふさわしい香りが漂ってきて、それも滞留時間を長くする後押しになっていると思います。空間の心地よさと香りによる相乗効果で、お客様がゆっくりとショッピングを楽しむことに繋がっているのです。

Anthropologieのショーウィンドウ「イースタンヨーロッパのホリデー」Anthropologieのショーウィンドウ「イースタンヨーロッパのホリデー」

演出×癒しのサウンド空間

 最近、VMDの世界では、自然の中の心地よさを再現することに注目が集まっています。人工的な建物の中で、鳥のさえずりや川のせせらぎなど、まるで森の中にいるような心地よさを感じることができます。これは「ハイレゾリューション音源」と呼ばれる新しい高音質自然音源から生み出されるもので、音を身体全体で浴びて、リラックスできる仕組みです。
 新宿マルイ本館(B1エントランス 7Fシューズ売場 8Fバック売場)、近鉄百貨店あべのハルカス本店タワー館(7F〜9Fの吹き抜け 森の広場)など、こうしたハイレゾリューション・サウンド・システムを使った商業施設が徐々に増えつつあります。森の空間などにBGMのアコースティックの音色が重なり、さらにリラクゼーションを促進する森の香りが漂う五感に訴える魅力的な空間ばかりです。実際に足を運んで、ぜひ体感してみてください。

ハイレゾリューション・サウンド・システムの先駆けとして注目されているビクターエンタテインメントの「クーネ」01

ハイレゾリューション・サウンド・システムの先駆けとして注目されているビクターエンタテインメントの「クーネ」02ハイレゾリューション・サウンド・システムの先駆けとして注目されているビクターエンタテインメントの「クーネ」

2013年10月現在の新宿マルイ本館B1エントランス2013年10月現在の新宿マルイ本館B1エントランス

感動を呼び起こすVMD

 店舗や空間が無機質になりがちな時代ですが、お客様にはおもてなしのココロが必要です。
 そのココロをお伝えする為に、特に五感へのアプローチを大切にした今までにないVMDの導入が必要とされているのではないでしょうか。感動を呼び、人々に愛され、笑顔が溢れる空間が、今以上に増えていくことが私の願いです。

みんなの笑顔と幸せをよぶ、VMD+五感表現
執筆者:大髙啓二

大髙 啓二
4hearts co.,ltd. 代表VMD+五感空間ディレクター


1968年山梨県生まれ。小売業で販売スタッフを経験したのち、VMD担当として、売場作り講師・ディスプレイ・空間デザイン・イルミネーションなど、幅広くデザインとディレクションを手掛け、JAPAN SHOP VMDセミナー特別講師を二度務める。現在はVMD事業に+五感に訴える光・音・香をデザインする五感空間を創り、2013年独立。お客様がたくさん集まる場所にふさわしい、楽しさや、感動、そして共感、「心が動く空間づくり」をプロデュースし活躍。


・有楽町マルイ開店VMD総合ディレクション
・体感型WATCHパビリオン 「THE WATCH SHOP.TOKYO」のVMD+五感ディレクション
・日本最大級ライフスタイル型クルマ選び「WOW!TOWN」新潟 木更津VMD+五感総合ディレクション
・JAPAN SHOP「O2O時代のVMD リアル店舗戦略と最新動向」の特別講師
・日本ディスプレイクリエイターアカデミーのVMD講師
・葬儀業界初「萩原東京展示会」にて音・光・香をテーマに新しい葬儀スタイルを総合プロデュース、葬儀用BGM監修
・トヨタグループ「みんなのガレージ」の全国店舗の空間プロデュース
・ロレアルジャパン全国ディスプレイコンテスト特別審査員
・六本木ヒルズ主催 ヒルズブレックファーストにスピーカー

バックナンバー

PAGE TOP