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日経の紙面から

さらば楽天、自前サイトで勝負、厳格ルールから解放、「陳列」デザイン見やすく、インスタ発信、客呼ぶ。

[ 2017年4月17日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 もう楽天は卒業します――。大手電子商取引(EC)モールから撤退し、自前の通販サイトで勝負する企業が相次いでいる。ECモールはインターネット通販の立役者だが、出店者が増えるほど埋没しやすく、制約も多い。交流サイト(SNS)や格安ツールの進化で、モールに頼らずこだわりの店がつくれる時代。ネット通販でもリアルの路面店のような個性でお客をつかむ。

 「楽天市場店はサービスを終了しました」。2月20日、楽天のサイト内に、こんなページが公開された。もともとはメガネのオンデーズ(東京・品川)のショップがあった場所だ。同社に問い合わせると、自社のECサイトを強化し、そこに1本化したという。

 撤退の理由は「方向性の違い」と明石拡士執行役員。「楽天市場で目立つためには商品の値段を下げるか、派手なデザインにしないといけない」。自社のブランドへのこだわりが、楽天では表現できないと判断した。

 オンデーズの公式通販サイトをのぞくと、白を基調にしたすっきりした印象。トップ画面の下部には、ファンが同社の商品を撮影し「#owndays」などとタグ付けして、動画共有サービスのインスタグラムに投稿した写真が並ぶ。外部サイトへのリンクが規約で禁止された楽天ではできない見せ方だ。

 こんな動きはオンデーズだけではない。あるブログでは、楽天市場を退店したショップをまとめている。その数は今年に入って約160。出店料を無料にして店舗数が急増したヤフーショッピングも「事実上、休眠しているショップが多いのでは」とささやかれる。

 背景には、ECモールの使い勝手への不満がある。例えば、購入者に送るメール。大手モールでは1日に送れる上限数が決まっていたり、追加の費用がかかったりする。もともとは消費者が大量のメールを受け取らないようにするためのモール側の配慮だ。ただ、ある小売店の担当者は「自由にメールを送れるなら、使い方を解説したり別の商品を薦めたりできるのに」と残念がる。

 そもそもユーザーの個人情報を自由に持てないことも多い。出店企業に渡されるのは、名前や住所といった発送や付随するサービスに必要な情報に限られる。もし情報流出があれば、ショップとともにモールも責任を問われるからだ。

 情報管理体制を作りにくい中小企業なら話は別だが、顧客とのコミュニケーションや売り方にこだわりを持つ企業ほど、モール全体のルールに不自由さを感じている。

 集客や売り上げ管理など、ショップ運営に必要なひととおりの機能はモール側が開発し、出店者に提供している。ただ、汎用的な機能が優先されがち。ベンチャー企業などの方が、安く自分のショップにぴったりなツールを提供してくれることは少なくない。

 今月5日に通販サイトを刷新した、セレクトショップ大手のユナイテッドアローズ。目玉の一つが全ページで英語や中国語などの外国語に対応したことだ。日本ブランド好きな外国人らもサイト内を見やすくなり、国境を越えて販売する越境ECの機会も生まれる。

 この機能を提供したのはベンチャーのミニマルテクノロジーズ(東京・港)だ。専用サイトに対応する翻訳を入力するだけで、サイトを改修できる。通常、外国語対応するためには日本語と同じだけ外国語のページを用意するため何倍もの費用がかかるが、同社のサービスだと月額2万5000円からで使える。

 ECモールの最大の売りである集客力。これも店主の努力でカバーできる時代になってきた。

 ラフォーレ原宿(東京・渋谷)の地下フロアにある女性アパレル「Vannie TOKYO」。昨年の通販サイト立ち上げから間もなくテナント入居を実現した。原動力はSNS。インスタグラムのフォロワーは2万8000人に上る。

 ディレクターの山崎えりかさんはSNSでの集客に徹底的にこだわった。写真や文章、投稿時間のパターンを定期的に変え、反応をチェック。効果が高いものに投稿内容を変えていった。フォロワーが他に見ている投稿を参考にタグ付けも改善した。「『あわよくば見付けてください』ではなく『見て!』という取り組みが必要」と語る。

 サイト開設にはベンチャーのBASE(東京・渋谷)のサービスを活用した。決済手数料などは大手モールと同様にかかるが、サイトのひな型や銀行口座振込などの基本的な機能を初期費用無料で提供する。BASEを利用したショップは30万店に達している。

 本当にモールと距離を置いても事業は成長するのか。成功例のひとつが、雑貨などを扱う「北欧、暮らしの道具店」。月間アクセス数1600万件の知る人ぞ知るサイトだ。運営会社のクラシコム(東京都国立市)は、17年7月期に売上高19億円と前年比約40%の成長を見込んでいる。同サイトは09年に楽天市場に出店したが、11年末に退店した経緯がある。

 モールの集客力を取り込む狙いで出店、当時は売上高の3割強が楽天経由だったという。ただ、楽天市場の中で目立つ位置に掲載するための広告費や手数料の負担が想像より重かった。「利益は出ていたが世界が変わるほどではなかった」と青木耕平・最高経営責任者(CEO)。

 モールに払っていた広告費を振り分けた先が、自社サイトに掲載する商品やライフスタイルに関する記事制作だ。現在40人ほどの運営チームのうち、3分の1以上がコンテンツ制作専任。「買う気がない人でも楽しめるサイトを作れば、そのうち商品を買いたい人が出てくる」(青木CEO)という発想だ。

 折しもスマートフォン(スマホ)やSNSが普及してきた時期で、消費者が検索してやって来る以外にも、サイトへの流入元ができていた。モール以外に出していた広告も絞っていった。

 青木さんは「ウチが扱うのは調達量が多い商品ではなく、(あちこちのモールに出店するなど)多チャンネル化して販売するのには向かない」と語る。ショップの成長につながる選択肢は何か。「自分の事業の得手、不得手を見極める」(青木さん)ことが一層大事になるのは間違いない。(諸富聡)

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