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百貨が変わる(下)PB衣料に新たな助っ人、大丸、通販に学ぶ、品ぞろえ・採算両立。

[ 2017年5月17日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 どの店にも同じような商品が並び、販売員もメーカー頼り。百貨店が失速した最大の要因は、「場所貸し」化にある。プライベートブランド(PB=自主企画)商品の充実は待ったなしだ。通販会社から値ごろ感のある商品の作り方や売り方を学び、工場と素材から物作りを考える。自社だけの「百貨」をつくるため、今までにないパートナーと組み始めている。

 「思ったほど高くないね」「パンツは股上の深さが色々あるよ」。50代女性が見ていたのは大丸東京店(東京・千代田)にある婦人服「ケイカラット」の売り場だ。2015年に大丸松坂屋を傘下に持つJ・フロントリテイリングが通販の千趣会と資本業務提携を結び、50代向けPBとして双方で展開している。

 大丸松坂屋には「ソフール」という30〜40代向けPBがあるが、千趣会と組んだのはなぜか。狙いの1つがスケールメリットによる原価低減だ。

 50代になると働き方も生活も多様化する。より幅広い商品をそろえる必要があり、コストもかかる。千趣会と組んで、価格を類似商品の8割程度に抑えられるのは魅力的だった。

 人気のモデル、黒田知永子さんを起用するなど提案型にしたのも挑戦だ。一般的に百貨店のPBは顧客から不満などの声を吸い上げ、企画開発する問題解決型。ただ今の時代は、消費者にメッセージをいかに届けるかが重要と判断した。

 異業種との連携は簡単ではない。初期は欠品や在庫だぶつきが発生した。通販では定番的な商品を大量に作り、中長期で「売り減らし」する。対して百貨店では少量を作って、好調なら追加する「売れ筋追求」が多く、展示切り替えもおよそ2週間と早い。大丸松坂屋の天野貴史バイヤーは「今春、適時適量を供給する体制がようやく取れてきた」と話す。

 売り方にも通販のノウハウを生かした。1週間に全国で100本が売れるパンツは、カタログのような大きめの商品写真に「ヒップラインがゆったり」「バナナのようなシルエット」という説明を数カ所加えて、ポイントをまとめた。初年度売上高は計画にわずかに届かなかったが、4月の既存店売上高は前年を超え、実績を出しつつある。

 高島屋が15年から進めているのが全国約70の繊維関連企業などが参画する「繊維・未来塾」との取り組みだ。全国各地の工場を訪問し、素材まで分け入ってPBを作る。

 昨夏は北陸の繊維メーカーのレースを使ったワンピースなどを発売、完売する商品も出た。今月25日からは愛媛県今治市の渡辺パイル織物などのタオルメーカーを見学する予定。タオルを使ったジャケットなどの衣料品や体を温める下着の開発を検討している。

 長年のノウハウ不足はすぐには解消しない。三越伊勢丹ホールディングスの杉江俊彦社長は、10日の決算会見で「無理した買い取りや商品作りの結果、赤字を出してしまった」と話した。在庫処分コストが響き、12〜17年度で5億〜40億円の赤字が見込まれる。社内にPBのデザイン部隊も設けたそごう・西武では衣料品PBの売上高が1000億円規模になったが、消化率が悪いものは整理していく方針だ。

 PB作りもいつまでも「挑戦」ではいられない。専門店やネット通販との闘いに勝ち抜くために、稼げるものづくりが求められている。

 この企画は井上みなみが担当しました。

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