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堅調景気の実相(中)値上げ値下げ、せめぎ合い。

[ 2017年8月1日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 ヤマトホールディングスは当日配送に割増料金を設ける検討を進めている。配達員の負担を軽くするとともに「価値に対して運賃を支払ってもらう」(山内雅喜社長)狙いだ。働き方改革は無償が当たり前だったサービスの対価を浮かび上がらせる。戦後3番目の景気回復は「人手不足の賃上げ」をもたらし、消費の現場では値上げと値下げがせめぎ合っている。

「メリハリ消費」

 長崎ちゃんぽんが主力のリンガーハットで、国産野菜を多く使うメニューが人気を集めている。2016年8月に東日本の店舗で3%弱の値上げをしたが、17年3〜5月の既存店売上高は4・9%増えた。

 消費者は健康志向など旬のキーワードを巡る商品にお金をかける「メリハリ消費」を強めている。明治ホールディングスのヨーグルト「R―1」は免疫力の強化が期待できる菌を含む。「習慣的に買う消費者のおかげで値引きされない」(塩崎浩一郎取締役)という。

 景気回復で働く人は増えた。総務省が発表した6月の完全失業率は2・8%と、日本経済はほぼ「完全雇用」の状態にある。相続税や贈与税の算定基準となる17年分の路線価は標準宅地で前年を0・4%上回り、2年連続のプラス。日経平均株価は2万円前後で推移する。雇用の安定と資産価格の上昇は、消費者心理を前向きにする。

 価格が高くても、価値を認めれば消費をする環境は整っている。内閣府が国内総生産(GDP)と同じ手法で計算した足元の実質消費は14年4月の消費増税前の水準をほぼ回復した。

 ただ連合によると17年の賃上げ率は4年ぶりに2%を下回った。全人口の27%を占める高齢者には賃上げの恩恵が届きにくい上に、物価の低迷で年金受取額が3年ぶりに引き下げられた。生活に身近な商品には、支出を切り詰める動きが残る。

 「値上げの春」。今年の春、人材確保に向けた賃上げと原材料の値上がりを受け、ティッシュやバター、はがきなど身の回り品で値上げが相次いだ。しかし、店頭の顧客は、単純な値上げはなかなか受け入れない。

ネットで節約

 節約志向を映すのがインターネット通販だ。スタートトゥデイが運営する衣料品販売サイト「ゾゾタウン」では「低価格帯ショップの出店が増えている」(柳沢孝旨副社長)。飲料や洗剤などの身の回り品もネットで買う人が増えた。いまやネットを使った支出総額のうち13%が出前を除く飲食料品だ。

 消費回復の壁は20年デフレで根付いたデフレ思考だ。値動きの大きい生鮮食品を除く6月の消費者物価指数は前年比0・4%の上昇にとどまった。BNPパリバ証券の分析では、各品目の支出割合を加味すると、全体の42%は今の景気回復期を通しても年平均の変化率がプラスマイナス0・5%の範囲にある。

 政府は今年の経済財政白書で「物価はデフレ状況にはない」とした。523品目の消費者物価を見ると、6月時点で全体の半数強にあたる279品目が値上がりし、急激な物価下落が起きる状況ではない。しかし、足元では上昇品目の数はじわじわと減少している。

 日本経済の需要と供給の関係を示す「需給ギャップ」は需要超過に転じ、物価に上昇圧力が働く条件は整いつつある。働き方改革も転機に企業が収益力を高める努力を続け、価値の高い商品とサービスを生み出すことが20年デフレの処方箋となる。(景気動向研究班)

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