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接客力向上へ実験、イオン、毎日試食販売、生産性と雇用、両立模索、「休日中心」を転換。

[ 2017年9月4日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 イオンが店頭での試食販売を強化する実験を始めた。従来はほぼ休日や特売日に限っていた試食を、総合スーパー(GMS)の一部で毎日するようにした。セルフサービスを前提に成長してきた小売りチェーンが、わざわざ人手をかけようとする施策だ。人手不足感も強まる中、コストに見合う収益を得られるか。「人の力」で売り上げを生む挑戦が続く。

 「キハダ、メバチマグロを使ったマグロのたたきです。どうぞお試しください」

 8月の平日、イオンスタイル新浦安(千葉県浦安市)の食品フロア。店内に販売員の威勢のいい声が響く。客に積極的に声をかけ、小皿に取り分けた商品の試食を促す。そばにある売り場ののぼりには「おためし!ステーション」とある。

 イオングループでGMS運営のイオンリテールは今春から、管轄する約400店のうち86店でこうした試食販売を毎日している。平日は客が増える昼すぎから夕方6時ごろまで、休日は午前中から夕方まで実施する。

 対象商品はその都度決める。旬の食材、メーカーの新商品や注力商品、自社のプライベートブランド(PB)などから原則3品を選び、週替わりで提供する。

 店頭での接客はグループで実演販売サービスをするイオンデモンストレーションサービス(千葉市)が担う。同社はこの取り組みのため、専任の担当者を配置。大幅な販売員の増加に備えた。

 たとえメーカーの商品であっても、メーカーが用意した販売員に任せない。試食対象となった商品は通常の10倍近い売り上げになることもあるが、利益は仕入れ条件によって異なるので採算が合うかは一概に言えない。販売員の人件費をイオン側で持てばなおさらだ。

 それでも試食を強化するのは「接客で売り上げを伸ばす体制を作るため」(イオンリテールの岡崎双一社長)だ。試食をメーカー任せにせず、じかに客と接することで販売動向や売り場の声を把握し、ノウハウを蓄積する。環境認証など、店頭販促(POP)だけでは伝わりにくい商品特徴も訴求しやすくなる。

 デモンストレーションサービスが磨いてきた接客と教育ノウハウをイオンリテールと共有する狙いもある。接客は技能の差が出やすい。高い技能を持った従業員を増やし、試食の専任者を置かなくてもシフトの空いた時間などで柔軟に売り込みができるような体制作りを目指す。

 「試食の効果検証にはまだ時間がかかる」(イオンリテール)としており、取り組みの成否は現段階では定かではない。個人の技能を本格的に企業全体の収益につなげるには、店舗の運営体制だけでなく人事評価制度なども見直しが必要。一朝一夕で結果は出ない。

 イトーヨーカ堂やユニーなど他のGMS大手が大量閉店を表明するなか、イオンは同事業の改革と再浮上を目指している。だが2017年3〜5月期、GMS事業の連結営業損益は67億円の赤字。GMS事業に含まれないが、今期中の黒字化を目指すダイエーの再建も道半ばだ。

 IT(情報技術)による省人化だけでは、イオンが全国に抱える店舗網と従業員の雇用は維持できない。その膨大な資産をどう使えば、収益を上げられるのか。時代の変化を見据えた戦略が必要だ。(中川雅之)

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