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イートインの次は、グローサラント、成城石井など、スーパーに旬の食材体験レストラン、食べる・買う・作る消費循環。

[ 2017年9月27日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 スーパーは食材を買う場所か、せいぜい総菜を買って食べる場所。そんな食の常識が変わるかもしれない。店内で旬の食材をお薦めの調理法で楽しみ、気に入った食材はその場で購入して自宅で再現――。スーパーと体験型レストランが一体化した店舗が都市生活者の胃袋をつかむ。「イートイン」の一歩先を行く新業態、その名は「グローサラント」だ。

 東京都調布市の京王線調布駅。29日に開業する駅直結の商業施設内に成城石井が新業態の店舗「トリエ京王調布店」を出す。店のコンセプトは「成城石井流グローサラント」。今年、創業90年を迎えた老舗スーパーが始める新たな挑戦、その店内をのぞいてみた。

 駅ロータリーに面する入り口から店内に入ると青果や精肉、加工食品の売り場が続き普通のスーパー。だが食品売り場の先には仕切りで区切られ、テーブル席の並ぶ一画があらわれる。このスペースこそがグローサラントのメイン舞台だ。

 専用のレジがあり、その上部にハンバーガーなどの写真を大きく載せたメニュー看板が掲げられ、食欲をそそる。レジ横に目をやるとガラス張りの調理スペース。この一画だけを見るとまるでレストランのよう。

 黒毛和牛を使ったハンバーガーやオマールエビのパスタ、ピザにステーキなどの料理を注文を受けてから調理し、出来たてを提供する。主なメニューの価格帯は税別990〜1500円前後と、扱う食材を考えると割安感がある。

 この店舗の狙いは何か。早藤正史執行役員は「成城石井が厳選した食材を五感で感じてもらう場にしたい」と話す。さらに料理提供で終わらず、メニューに使う食材や調味料の9割は店内で購入できる。

 ところ変わって東京都千代田区の東京駅。地下の駅構内に8月末開業したのが三井物産系のイータリー・アジア・パシフィック(東京・渋谷)が運営する「イータリー グランスタ丸の内店」だ。

 「おいしかった食材は買って帰ることも」。こう話すのは同店でボロネーゼを食べた40代の女性会社員。店内ではイタリアから仕入れた小麦粉から作ったパスタやピザなどを提供する。

 同店ではイタリア産の生ハムやチーズ、ワインや国内農家から仕入れた青果など約600品の食品も販売。売り上げの3分の1は外食で、残りは総菜や食材の物販が占める。今後はレストランの看板メニューである生パスタの物販も始める計画だ。

 初めて同店を訪れたという都内に住む会社員の岩尾舞さん(35)は「店内調理も食材販売もあって、仕事帰りに立ち寄るのにいい」。

 レストランとは違い、食品販売だけのスーパーとも違う。小売りと外食が一体となることで、まず食材を味わってもらい、次は自宅で試してもらうという循環を生み出す。そんな狙いが成城石井やイータリーのグローサラントにはある。

 なぜ今、グローサラントなのか。その答えは小売業を取り巻く環境の変化にある。

 その一つがネット通販の拡大。スマートフォン(スマホ)で好みの食品も手軽に購入できるようになった。今後の伸びが予測され、小売りのリアル店舗は商品の品ぞろえでは太刀打ちできない。

 ネットにできず、小売店にできることは何か。イータリー・アジア・パシフィックの甕浩人社長は「我々が提供するのは食材に囲まれて食事するという体験だ」という。食へのアクセスが多様になるなか、「スーパーは物販だけでなく、旬を体験してもらう場にならないといけない」(成城石井の早藤執行役員)。

 グローサラント化を後押しするもう一つの流れがイートインの普及だ。総菜などの中食需要の拡大に合わせ、スーパーやコンビニエンスストアが競って設置。もはやイートインだけでは競合店との違いを打ち出せない。

 イオン、ヤオコー、オーケーといった大手スーパーも、今年に入って相次いで"庶民版"のグローサラント型店舗の展開を始めている。

 オーケーは2月、旗艦店の「オーケー ディスカウント・センター みなとみらい店」(横浜市)の3階に自社運営のフードコートを開いた。2階のスーパー部分と合わせて、同店がグローサラント型となった。

 小泉絵里香生鮮MD室室長は「総菜とは違う温かい出来たての味を楽しんでもらいたい」と、飲食場所の提供にとどまるイートインよりも一歩踏み込んだ狙いを話す。スーパーで売る食材を使ったメニューを提供することで「お薦め商品を試してもらう場」にする。

 「食の選択肢が本当に豊かになった」。こう話すのは友人2人と千葉県浦安市の「イオンスタイル新浦安MONA店」を訪れ、生パスタを注文した同市の和田善博さん(69)。一方、同市に住む主婦の岩山晶子さん(58)は友人4人と来店。「パスタにしようか、総菜にしようか迷っちゃって」と売り場を10分以上見て回り最後に選んだのがサラダプレートだ。

 運営するイオンリテールでは現在も約400店のほぼ全てに飲食スペースを備える。改装に合わせ同店のように注文後数分で提供するパスタやピザ、好みの具材を選べるサラダなどを提供する店舗を順次増やす計画だ。

 仕事前に昼食を取るためにMONA店を訪れたパート従業員の岡田智美さん(53)は「レストランよりも女性一人で気軽に入れる」。ファストフードなどの外部テナントを誘致するフードコートは「騒がしくて清潔感に欠ける」(60代女性)といった声もある。

 食に関するあらゆるニーズを取り込み、ネットにはできない体験という新たな食のスタイルを提案するグローサラント。注文を受け、調理して出来たてを提供するには相応の人員やスペースが必要になるなど課題もある。だが、多様化する食のニーズを満たそうと小売り・外食の競争は激しさを増す。「外食」「中食」「内食」の区分はもはやなくなりつつある。

 ▼グローサラント 食品販売店を意味する「グローサリーストア」と、「レストラン」を組み合わせた造語。小売りと外食が組み合わさった業態で、米国ではホールフーズ・マーケットなど大手スーパーが展開する。

 総菜など買った食べ物を店内で食べる「イートイン」と異なり、その場で調理してくれるため出来たての味が楽しめる。テナントを誘致する「フードコート」に対し、グローサラントは主にスーパー自らが店内で扱う食材を使った料理を提供する。外食・中食・内食と食に関するすべてのニーズにこたえる店舗だ。

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