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アパレル大混戦(上)ネットが変える供給網――店舗や在庫持たない、高品質で値ごろ感。

[ 2017年10月11日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 衣料品業界の主役が大きく入れ替わっている。百貨店から専門店、そしてネット通販の台頭。IT(情報技術)の進化と消費者の好みの変化に対応しようと、老舗から新興勢まで入り乱れた大競争が始まった。

 「これからのアパレルはオンデマンドだ」。日本製のオーダーシャツを日米でインターネット販売する米ベンチャー、オリジナルのジン・コー社長(37)は語る。

 同社が製造委託するのは百貨店のオーダーシャツを縫製する山喜(大阪市)など。首回りや着丈などをサイト上で指定すれば体に合うよう作ってもらえる。価格は送料込みで1枚8000円台が中心。出店コストがないため高品質のものを割安で売れる。日本では10万人超が会員登録する。

 「ZARA」など安値で流行品を売るファストファッションはもっと安いが、サイズ展開は限定される。試着せずにネットで買った商品が合わない、という懸念がオーダーメードなら払拭でき費用対効果は高い。企業も在庫コストを減らせる。

 アパレル業界の新陳代謝が止まらない。1990年代に急拡大した「ユニクロ」のファーストリテイリングは、海外工場に生産委託するSPA(製造小売り)を導入。流通コストを圧縮して価格を下げた。百貨店で主に販売する企業は「ユニクロと同質の物を10倍の値段で売っていた」(中堅トップ)ことが消費者に露呈し、低迷。ファストファッションが第2の勢力として浸透し、第1勢力を脇に追いやった。

 だが今、ITの進化とともに「ユニクロモデル」の先を行く新興勢が存在感を増す。店舗や在庫を持たない新しいサプライチェーン(供給網)で浮いた流通費を製造費に上積みし、ファストファッションより高品質のものを作る。この価格ならこの程度の品質、という消費者の概念を崩し、既存企業を脅かす第3の勢力に育ち始めた。

 ネット通販専業のネバーセイネバー(東京・渋谷)が本社工場で作る主力ブランド「スタイルデリ」は中間コストを圧縮し、良い材料と有能な職人に多額の資金をかける。愛用する会社員の古屋綾子さん(40)は、「値段への納得感が高い」と言う。2018年1月期売上高は前年比2割増の40億円の見込みだ。

 衣料品世界3位に躍進したファストリも「このままでは古い産業になっていく」(柳井正会長兼社長)と危機感を募らせる。在庫滞留や売り逃しを極限まで減らすため、シーズン前に大量生産する従来方式からの脱却を図る。ITで消費者のニーズをつかみ最短10日で商品が店に届く、というのが改革のゴールだ。

 ネット通販ではジャケットの袖丈を数センチごとにそろえる「セミオーダー」式も導入。店頭でサイズを測り倉庫で裾上げし直接消費者に配送するサービスも始めた。「将来は全てあんな形になっていけばよい」(柳井氏)。個別対応する力を急ピッチで高める。

 だが新陳代謝はさらに加速している。アマゾンジャパンはネット通販用の写真撮影スタジオを開設。メーカーやデザイナーを巻き込み、第4勢力として一大流通網を築き始めた。現在の大手が変化に対応して対抗できる力を得られるか、残された時は少ない。

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