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人手不足が促す「店舗無人化」――スマホ決済、新業態生む予感(奔流eビジネス)

[ 2017年10月6日 / 日経MJ(流通新聞) ]

藤元健太郎

 慢性的な人手不足が続く中で、小売業やサービス業の人件費は高騰している。都市部ではアルバイトの時給が1000円を超えることはもはや普通の状況だ。時給が高くても採用できない企業も増えて出店計画を達成できない事業者も出てきている。店舗などではいよいよ「無人化」に向けた取り組みは避けられない状況だといえるだろう。

 日本の大手コンビニも2025年までに全店舗でセルフレジを導入する方針といい、一部の店舗でテストをはじめている。しかし現段階ではICタグを商品に貼るコストが見合わないという声も多く、すぐに投資が進む印象ではない。

 そんなおっとりした日本を横目に中国ではすでに昨年から登場した無人コンビニと呼ばれる新しい業態が急速に増加している。導入を促したのはスマホ決済の普及だ。

 アリペイやウィーチャットペイといったスマホ決済の支払いを前提に、店舗の入口もQRコードをかざさないと入ることができない。この段階で信用がない人は店舗に入ることもできないのだ。中国でスマートフォン(スマホ)決済の信用を落とすことは生活ができなくなることにつながっていく。ある意味で、無人のほうが犯罪を抑止する可能性まで見えているといえるだろう。

 一方、日本のコンビニはオフィス内店舗では無人化を先行させつつある。ファミリーマートやローソンは棚に商品を置いて、セルフ販売するサービスに着手している。セブンイレブンも先日、自動販売機を今年度中に100台設置すると発表した。商品の特性にあわせて4つの温度帯を管理できるきめ細かさだ。

 日本の無人販売のリーダーでもある自販機の進化にも期待したい。コンビニ業界としては新規の店舗出店余地が減る中でオフィス内は新しい開拓余地があり、無人店舗競争の先行市場になりつつあるといえる。

 コンビニに限らず飲食などもタッチパネル型の注文端末が次々と導入されている。無人化投資はますます積極的になることが間違いない。

 小売業やサービス業の購買プロセスをみると、それぞれのプロセスで無人化につながる新しい取り組みが急速に高まりつつあることがわかる。以下に挙げてみよう。

▽接客・体験=チャット、サイネージ、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)、ロボット
▽商品選択=店頭棚、サイネージ、VR・AR、スマホ
▽決済=無人レジ、スマホ
▽商品受け取り=自販機、宅配ロッカー、ドローン配送

 こんな具合だ。実はこれらの無人化のソリューションを、有人の価値と組み合わせると新しい業態につながると感じている。実際そうしたアプローチも始まっている。

 丸井は一部の店舗で試着品だけの売り場の展開を始める。店員は試着を助けながら顧客の相談にしっかりと乗るところに特化し、注文は店頭のタブレット端末で対応する。店頭在庫を置かないことで売り場面積を有効活用することが可能になる。試着という体験価値こそが店舗の役割と割り切ったのだ。

 人手不足の圧力が世界トップクラスの日本にあっては、おもてなしするべきところをしっかりおもてなしし、無人化・省力化できるところは徹底することで新しいイノベーションを生み出しうる。だとすれば経営者は既存の業態にこだわらず、無人化に向けたイノベーションにもっとどん欲になるべきだろう。

 こうした効率化の恩恵を受けるのは大資本だけではない。少人数でもこだわりの商品を作ることや、自分を応援してくれる人達とのコミュニケーション体験に集中できるようになる。多様な「パパママストア」を生み出す可能性も十分にあるのではないだろうか。

(D4DR社長)

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