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実践!ノーベル経済学賞、セイラー教授の行動経済学、マーケに生かす――ナッジ理論、消費者つつき巧みに誘導。

[ 2017年10月30日 / 日経MJ(流通新聞) ]

価格設定、最初が肝心

 セイラー教授がとなえる理論には「ナッジ(ひじで軽くつつくという意味)」もある。例えば、消費者が多すぎる選択肢に迷っている場合、消費者心理をとらえながら情報提供するなどして、巧みに特定の選択肢に誘導していく手法だ。

 500円と1000円の2種類のランチを提供する飲食店が1500円のメニューを追加すると1000円のランチが売れるようになる「松竹梅理論」もこの一種だ。応用すれば、さらに高度なマーケティングが可能になる。その際、重要になるのが「選択肢のデフォルト(初期設定)だ」(星野教授)。

 衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイが10月1日に試験的に始めた、送料を顧客が決める「送料自由」サービスでは、無料を選んだ注文は全体の43%(23日午前0時まで)だった。今回、利用者は購入代金にかかわらず、無料〜3000円まで送料を自由に選べる。消費者が合理的な経済行動をとるなら、全員が送料無料を選ぶはずだが、同社によると平均送料は96円だった。

 実際にゾゾのサイトの送料の欄をみると、プルダウン式で100〜1500円を選べるようになっているほか、0〜3000円まで1円単位で自由に設定できる入力欄もあった。ちなみにプルダウン式のデフォルトは400円。利用者が特に指定しないと、送料は400円になる。

 スタートトゥデイは今回のデフォルト設定について「試験的なものなので選んだ割合を含めて、回答は控えたい」と話す。一方で、奥瀬教授は「初期設定が400円としてあるのは、ナッジといえる」と分析する。

 消費者は選択の自由を求めるが、選択肢が多すぎると逆に選べなくなる。半面、面倒くさがりなところもあるので、デフォルトで示された選択肢から選びがちだ。

 ゾゾタウンの送料自由サービスに見るように、ナッジのマーケティングを成功させるには、いかに有効な選択肢を巧みに設定できるかがカギとなる。

 ナッジはなにも複数の選択肢から誘導していくだけではない。星野教授は「通販サイトを脅威に感じている小売店の対策にも使える」と話す。消費者は新製品に関しては、店舗に足を運んで、さわり心地や色を実際に確かめる傾向がある。「来店ポイントを出すことなどで入店してきた消費者に、その場でなんらかの販促をすれば、実店舗での購入につながる可能性がある」(星野教授)。一部家電量販店や専門店では来店時に客がスマートフォンを操作すれば、買い物に使えるポイントを付けている。どこまで売り上げ拡大に効果を上げられるかについてはさらに一工夫も必要だ。(小林宏行)

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