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ロボとホストが店員、2つの売り場――対極の接客に見る未来(奔流eビジネス)

[ 2017年11月10日 / 日経MJ(流通新聞) ]

村山らむね

 このところ接客というものについて考えている。そんな中、接客の対極とも言える2つの新しい取り組みを最近体験してきた。ロボットとホストである。

 まず最初はロボットだ。パルコが日本ユニシスなどと共同開発している「シリウスボット」に会いに、10月の取材当時にシリウスボットが配置されていた池袋パルコを訪問した。

 来店客はロボットに向かって呼びかけるか、ディスプレーを操作することでフロアの案内や店舗への先導をしてくれる。ほかのお客などにはぶつからないようにセンサーで制御されており、まれにぶつかってもスピードがゆっくりなのでそれほどの衝撃はない。現在は日本語と英語での案内で、今後多言語に対応していく予定だそうだ。

 何よりこのシリウスボットの特徴的なところは、閉店後は在庫を確認してくれるところだ。試用段階ではあるが、電子タグを利用し、店の外側の通路から、あっという間に250点ほどの店内の商品の在庫確認をしてくれるのだ。ディスプレーではエクセルの表となって在庫が把握できる。

 売り場に配置された店員は非常に多くの雑用に追われている。営業中も接客するばかりでなくいくつかの仕事があり、閉店後はさらに黒子として業務を抱えている。シリウスボットが「活躍」することで、店員も本来のお客さんへの対応に時間を十分割くことができるというわけだ。残業も減るだろう。

 ロボットでもできる接客とロボットにはできない接客。切り分けをどうするか。そんな疑問に答えてくれるのが、もうひとつのホストによる接客だ。10月にオープンした「歌舞伎町ブックセンター」を体験してきた。

 この歌舞伎町ブックセンターは、ホストクラブを複数経営するオーナーが、クラウドファンディングサービスのマクアケを使ってオープンした。ホストたちにまず本を読んでほしいというのがきっかけのひとつ。現在平日は出勤前のホストがイレギュラーに対応し、土日は午後3時から常駐している。

 店内の本はすべて「愛」がテーマの本。店内は表紙をディスプレーした形態で、愛の闇をテーマにした黒帯、ピュアな愛をテーマにしたピンク帯、モノや趣味などへの愛をテーマにした赤帯と3種類に分かれている。全部で150冊くらいが購入可能だ。

 私も友夜(ともや)さん(23)に接客していただいたが、考えていたようなチャラい接客ではなく、シャイな感じでおすすめなどを教えてくれた。たまたまイチオシの本が売れてしまった直後ということで、購入には至らなかったが、本を自分のために選んでもらうというのも、正直ホストと話をするのも初めてで新鮮さを覚えた。

 知識を押し付けるというよりは「この本は、一章一章が完結型で読みやすいからみんなに薦めている」というようなおすすめのしかたをしてくれる。私がある本を愛読書だと指差すと、「今度読んでみます」と素直に返してくれるなど、本のプロではなく、コミュニケーションのプロだった。

 本屋のお客さんにホストクラブに来てもらうことは主目的ではなく、実際に客層もまったく違っているとのこと。店内は居心地の良いカフェとなっており、プロジェクターも常設。映画の上映会や作家を招いたトークショーなどのイベントも開催されている。歌舞伎町という、世界でも稀有なダイバーシティーを体現する街でこれから面白いことが起きそうだ。

 人手不足を契機に、今後流通の現場でも無人化やロボットへの代替が加速される。また接客に集中するためにバックヤード業務の機械化も進むだろう。そんななか、人間にしかできない接客、付加価値。ホストという、本を選んでくれる人としては圧倒的な個性は、それを考える上で一つのお手本になると思う。

 さて、ロボットとホスト。接客の軍配は引き分けとしておこう。2つの方向性が今後の接客の未来であるのは確かだ。

(通販コンサルタント)

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