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ネットに負けない、ビック流接客コンテスト、「ガチンコ」で販売力競う、短時間でニーズ聞き出す。

[ 2017年11月29日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 実店舗が、台頭するインターネット通販に負けないためには店頭の販売員の接客力の充実が欠かせない。そこでビックカメラは、ルミネなどでも実施されている接客コンテストを導入。ファッションよりも幅広い顧客が相手の家電量販店だけに、どんな客が相手が直前までわからない「ガチンコ」で、実際の販売につながる技量を競わせるのがビック流だ。

 11月1日、都内でビックカメラが開いた「全国接客ロールプレイングコンテスト」の会場は熱気と緊張感に包まれていた。全国にあるグループ約200店、1万人の中から予選を勝ち抜いた販売員10人が集まり、接客の技術を競う。「ミラーレス一眼がほしい」「母に炊飯器を買いたい」――。出場する販売員は自分の担当の売り場を再現した会場で、1人約10分、ビックの社員がふんする客に対して模擬接客を披露する。

 ビックがコンテストを始めたのは2013年。「ルミネの接客コンテストを見て、うちでもやろうとなった」と宮嶋宏幸社長は話す。原則年1回開き、今回で6回目。宮嶋社長がこだわったのは、模擬接客の演技力ではなく店頭で生かされるリアルな販売力だ。

 コンテストで特徴的なのは、接客を披露する際、出場者には直前まで、どんな客を相手にするか知らされていないこと。単身者、夫婦、子連れ、シニアなど実際の店頭では幅広い客が来る。それぞれの客はどんな商品を、誰のために買うのかなど実に多種多様だ。出場者は模擬接客を通じて、限られた時間内に、細かなニーズを聞き出し、最適な商品を提案しなければならない。問われるのはコミュニケーション能力から商品知識と幅広い。

 審査員はグループ各社の経営陣だ。ビックカメラの宮嶋社長、川村仁志副社長に加え、子会社のコジマの木村一義会長兼社長、ソフマップの渡辺武志社長らも加わる。ターミナルの駅前立地が中心のビック、郊外型で地域密着のコジマ、中古やサブカルチャーなど深い商品知識が求められるソフマップと、異なる視点でチェックする。

 今年優勝したのはビックカメラ有楽町店(東京・千代田)で楽器コーナーを担当する吉橋由里主任。電子ピアノの接客に挑んだ。「5歳の娘に習わせたい。いろいろネットで調べたが商品の違いが分からず困っている」という設定の夫婦が登場。吉橋主任は「ピアノは集中力がつくので勉強にも役立ちます。お父様お母様の考えはバッチリでございます」とテンポのいい会話で両親と打ち解ける。音大出身という自身の経歴を生かし、自らピアノを弾きながら商品の違いや魅力を説明した。

 夫婦役の2人は「グランドピアノとの違いは」と尋ねたり、「調べてみたら、こちらの方が売れているって聞いたのですが」と吉橋主任が薦めたものとは違う商品に興味を示したりして商品知識を試す。吉橋主任は音の強弱や聞こえ方の違い、調査会社のデータをさりげなく紹介しながら、夫婦のニーズに合った商品を提案したことが評価された。吉橋主任は「普段の接客に加え、9月以降の平日は毎日、同僚に手伝ってもらいながら練習してきた」と話す。

 昨年のコンテストでも吉橋主任と同じ有楽町店の販売員が優勝した。ビックの場合、上位入賞者は翌年のコンテストに出場できないルール。「常連」を作らないことで、販売員全体のレベルアップを狙う。

 コンテストの意義について、コジマの木村社長は「商品だけではもはや差別化できない。現場の接客力が競争の源泉」と話す。

 家電の店頭販売はネット通販に押され気味だ。調査会社のGfKジャパン(東京・中野)によると16年の家電販売全体に占めるネット通販の割合は金額ベースで12・1%と15年比0・5ポイント上昇した。

 店頭での接客力とは具体的にどのようなものか。調査会社のBCN(東京・千代田)が16年9月に家電量販店の販売員を対象に実施した調査によると、来店客から求められる要素で最も多いのは「豊富な商品知識」(60・9%)で、次いで「製品の違いの説明」(47・5%)、「柔軟な値引き対応」は31・2%だった。デジタル化やネットワーク化で商品の使い方が難しくなり、消費者が販売員に求めるスキルは年々高まっている。

 接客コンテストを導入した成果はどうか。サービス産業生産性協議会(東京・渋谷)によると、利用者を対象にした16年度の家電量販店の顧客満足度調査でビックは71・0点と導入前の12年度と比べて2・6ポイント上昇した。ビックの社内データでも接客時の顧客満足度の平均点は昨年9月の7・8点から上昇基調で、今年6月以降は8・3点となった。

 ただ、ビックの宮嶋社長はコンテストの成果については「もっとネット通販を意識した接客をしてほしかった」とまだ満足はしていない様子。自社のネット通販、他社のサイト上での商品の口コミ情報を接客に生かすべきだという。

 審査方法も改善余地がありそうだ。「会場は店舗ではないため、売り場を再現しきれていない」(宮嶋社長)。ガチンコの接客コンテストだけに、もっとリアルな販売力を競える場づくりが、スター販売員の養成につながるはずだ。

(花田亮輔)

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