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ヒットの予感――「日本色」、街・生活を彩る、落ち着きある風合い、新鮮(消費を斬る)

[ 2017年12月4日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 浅葱(あさぎ)、薄紅、黄櫨染(こうろぜん)――。古くから伝わる和の彩りを街中で見かけるようになってきた。伝統色は消費者に高品質を連想させ、不思議な愛着を感じさせる。訪日客が急増し、日本らしさを見つめ直す機会も増えてきた。日本食ならぬ、日本色ブームの予感がする。

 「この色いいじゃない。付けてみたら」。休日の「渋谷ロフト」(東京・渋谷)のコスメ売り場。女性が足を止め、手に取ったネイルを娘に勧めていた。ロフトが7月に発売したオリジナルブランド「ロフコス」の1本だった。

 老舗化粧品の伊勢半と開発したネイルは全12色が和名だ。一押しは落ち着いた大人な雰囲気の黄色「きんもくせい」で2千本が売れた。「オリジナルブランドとしては上々」と開発責任者の本間弓子氏は話す。

 「『日本製』や『高品質』のイメージを狙った」。本間氏は和名に込めた思いをこう説明する。価格は1296円。香料を使わず発色にもこだわった。「るり」「あかね」「うぐいす」と、能書きだけは伝わらない品質への自信を、和名が醸す響きに託した。

 意外な効果もあった。「名前がかわいい!」とネットに投稿する人が現れた。「商品に愛着を持つきっかけになっている」(本間氏)。ピンクなど外来語に囲まれた消費者には、古くて新しい和名が新鮮に映る。

 日本サッカー協会が発表した日本代表の新ユニホーム。黒にも近い濃密な青が目を引く。「褐色(かちいろ)」と呼ぶ日本色。「勝色」につながる縁起物で、侍たちが好んできた。

 ワールドカップ本大会を前にグッズ商戦は一足早く開幕。「サッカーショップKAMO原宿店」では「昨年の2倍の売れ行きだ」(上田裕二店長)。サッカーファンの伊藤俊輔さんは「スタジアムを真っ青に染めたい」と購入を検討する。

 「モダンで高級感がある。五輪のロゴも映えてええやん」。同じ青系統でもトヨタ自動車が新型タクシー「ジャパンタクシー」のボディーカラーに選んだのは「深藍(こいあい)」。大阪から観光に訪れた光谷美津子さんも太鼓判を押す。日本交通は100台超を導入済みで3〜4年で全車を入れ替える予定だ。

 東京五輪も目前。今年は訪日外国人数も3千万人に迫る勢いだ。外から見た日本を意識する機会が増えたのだろうか。日本独自の色彩や伝統を見直す機運が高まっている。建設中の新国立競技場でも、場内の表示に伝統の色をあしらう。

 日本色は世代を超えて日本人の感性をくすぐる。100円ショップのセリアの「にほんの色鉛筆」。牡丹(ぼたん)や金茶など日本色の美しさが話題を呼び、評判がネットで瞬く間に広まった。中高年を想定した「日本の風景や動植物など、花鳥風月を描きやすい色」(同社)だが、飛びついたのは20〜40代だった。

 「ギンザシックス」(東京・中央)の蔦屋書店には、日本色にまつわる書籍を集めた一角がある。季節の移ろいに合わせて身につける色の組み合わせを決める「かさねの色目」など、奥深い世界が広がる。日本人は身の回りの自然に無限の彩りを見つけ、生活に取り入れてきた。色は遊び心に満ちている。(新田祐司)

【表】日本色には様々な由来がある  
紅梅(こうばい)   紅梅の花の色。江戸時代にはぜいたくの象徴とされ禁止に 
緑青(ろくしょう)  鉱物「マラカイト」の色。鎌倉大仏の表面を覆う 
納戸色(なんどいろ) 納戸の薄暗さを表した色とされるが、由来は諸説あり 
団十郎茶       歌舞伎役者の市川団十郎が衣装に用い、江戸時代に流行した 
新橋色        明治時代に東京・新橋の芸妓(げいこ)が好んだ色

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