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近くて便利、セブンその先、既存店増収62カ月でストップ、セール手法、十数年ぶり見直し、総菜や冷食、レイアウトを刷新。

[ 2017年12月8日 / 日経MJ(流通新聞) ]

「1%増では不十分。3%ほしい」

 セブン―イレブン・ジャパンの既存店売上高の連続増収が10月に62カ月で止まった。同社はつまずきを「単なる天候要因」とし、新店舗レイアウトの導入やセールの見直しによる販売力の底上げを急ぐ。ネット通販の台頭など競争環境が変わる中、消費者を圧倒的に引き寄せるセブンエフェクト(効果)を示せるか。「近くて便利」のその先を探る。

 「10月を反省するとすれば台風でも売れる商品が少なかったことだ」。セブンの石橋誠一郎取締役はこう話す。連続増収が止まった直接の要因とみているのは、週末に直撃した2度の台風などによる天候不順。「新レイアウトや新販促を通じ、加盟店の競争力を底上げする方向は間違っていない」と強調する。

 「これはテストしたのか」。ここ最近、セブンの社内会議で古屋一樹社長がしきりに尋ねるようになった。「仮説と検証」が信条のセブンにとって、新商品のテスト販売は常とう手段。だが、今問いかけているのは商品そのものではなく、販売促進の手法についてだ。

 販売促進部の宮地正敏総括マネジャーは、「セブンの販促のテストは15年前で止まっていた」と話す。最後は2002年に実施した絵皿のプレゼントキャンペーンの効果測定だった。ところが昨年から時間帯と対象商品を絞った割引セールのテストを繰り返し、実績が出たものを全国に広げている。

 例えば、10年以上秋冬に実施してきた「おでん70円セール」。9月から始めたセールでは午後4時から深夜0時までの「夜間限定10%引き」に変え、期間を4日から16日に伸ばした。おでんの売り上げは午後6時以降が6割を占める。夜間の営業に備え、店員におでんを仕込む習慣をつけさせる狙いを込めた。

 10月に実施した「スパゲティ・パスタ50円引き」は昨年11月の「麺類50円引き」から一歩踏み込んだ。暖かい麺も冷やし麺も一律に値引くのでは、加盟店が何をどれだけ発注するのかも不明瞭。対象を絞り、売り込むべき商品を明確にした。

 販促効果を最大限に引き出すのは小売業にとって当然ともいえる。派手さはない地道な取り組みだが、セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は「明日につながる販促だ」と表現する。その意味は個店ごとの販売力を底上げし、顧客を深掘りすることにある。

 既存店売上高で62カ月の連続増収を達成したセブンだが、16年以降の伸び率は1%台の月が大半を占めた。あるセブン関係者は「全体の伸びが1%程度であれば、過半数の加盟店は前年割れしている」と明かす。人件費の上昇も続き、全店が連続増収の恩恵を享受できているわけではない。

 もともと小売店は開業2〜3年目の店が全体の伸びをけん引するのが通例だ。セブンも「全体の伸びを実感できるようになるには3%以上の伸びがほしい」(同)。フランチャイズ方式で展開するコンビニにとって既存店売上高の伸び悩みは新規出店にも水を差す。新たなオーナーを獲得し、次の出店につなげるハードルが上がるからだ。

 定価販売が原則だったコンビニにとって、かつてはセールそのものが集客に大きな効果をもたらした。ただ、今や割引販売は珍しくなくなり、競合相手も安売りを目玉とするドラッグストアなどに広がる。宮地総括マネジャーは「セール中の売り上げだけで終わらせず、加盟店の意識を変え効果を持続させなくてはならない」と話す。

 販売力の底上げに向け、接客サービスの強化にも乗り出した。17年5月から入店したての従業員を対象に接客などの基礎を教える研修を開始。従業員向けの研修はこれまで時間帯ごとのアルバイトの責任者向けだった。対象を広げ、受講者数は8月末までで累計3万3千人に上る。

 セブンは現在、総菜や冷凍食品の売り場を広げた新しいレイアウトの店を広げている。スーパーやドラッグストアの客も取り込み、「セブン経済圏」をさらに広げるのが狙いだ。先行導入した店の日販(1店ごとの1日当たりの売上高)は全店平均の3%にあたる約2万円伸びたという。

 ただ、「器」をつくるだけでは効果は十分に出ない。コンビニ業界全体を見渡すと、既存店の来店客数は10月まで20カ月連続で前年同月を下回る。セブンも客数は10月まで4カ月連続で前年割れだ。古屋社長は「接客の質を高め、買いたい商品がしっかりと品ぞろえされている店を作り来店頻度を上げる」と話す。

 売るべき商品をしっかりと定め、売り場を作り、接客でお薦めする――。小売業の基本に立ち返るほど、必然的に対応できる店とそうでない店の差は開く。伸び悩む店の課題をみつけ各店を底上げするためにも、本部主導で効率的なオペレーションを追求してきた従来のモデルとは異なる支援策は欠かせない。

 「加盟店ファースト」の姿勢を明確に示すため、9月からは加盟店の経営指導料を1%減額した。加盟店は平均で年間80万円の増収、セブン本部は逆に160億円の減収になる。セブン&アイの井阪社長は「全店舗が成長を続けていくための判断だ」と強調する。

 セブンはカリスマ経営者だった鈴木敏文氏のもと、24時間365日営業する利点をうたった「開いててよかった」をコンセプトにコンビニを日本に根付かせた。09年には「近くて便利」にコンセプトを変え、全国約2万店の巨大な店舗ネットワークを築き上げた。

 ただ、アマゾンに代表されるネット通販が急速に台頭。スマートフォン一つで欲しい商品が手に入る新たな「便利さ」が広がり続ける。採算に見合う「近く」の出店場所もどんどん少なくなる。セブンは「近さとは距離的なものだけでなく、心理的な近さで身近で頼れる存在である」とするが、環境は厳しさを増す。

 個店を磨いたその先に、次世代のコンビニのあるべき姿をどう示すか。最強コンビニを率いる井阪・古屋体制の新たな旗印も必要になってくる。

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