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百貨店は生き残れますか――J・フロントリテイリング社長山本良一氏、ネットにない体験で集客(そこが知りたい)

[ 2017年12月15日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 「脱百貨店」を掲げて2017年4月に大型商業施設「GINZA SIX(ギンザシックス)」を開業したJ・フロントリテイリング。テナント賃料を中心とした不動産事業の拡大を急いでいる。小売市場でネット通販と品ぞろえを特化した専門店が台頭するなか、百貨店は消えゆく業態なのか。山本良一社長に展望を聞いた。

 ――ギンザシックスの手ごたえは。

 「来店客数、売上高ともに初年の計画を達成できるペースだ。新店は固定客をいかに取り込むかが勝負だが、衣料品などでリピート客が増えており手ごたえを感じている」

 ――百貨店はこの先、生き残れますか。

 「『脱百貨店』というのは極論だが、食品や婦人衣料、雑貨など商品分類で売り場を切り分ける従来型の百貨店の店づくりでは、多様化する消費者に対応しきれない。我々は百貨店をやめようというのではなく、店の立地や客層に合わせて外部のテナントも活用しながら柔軟に店をつくろうとしている。ギンザシックスには『婦人服売り場』はなく、靴も紳士も雑貨もミックスで扱っているが、お客様は違和感なく買い物している」

 ――百貨店の客層は高齢化しています。

 「顧客の高齢化は必ずしも悪いとは思わない。20年ほど前は定年退職するとパタッと来店しなくなるお客様も多かった。いまは60代でも仕事を続けるシニアが多い。何より元気だ。『人生100年』という変化のなかで、百貨店はより長期に消費者のニーズに対応していけると思う」

 ――インバウンド需要はこの先も伸びますか。

 「インバウンドは足元で売上高の8%を占めているが、極端な円高にならなければまだ伸びる。アジアの百貨店も増えているなか、日本の食文化や観光、安全なイメージ、接客といった総合的な魅力が評価されている」

 ――個人消費に回復の兆しはありますか。

 「今年の夏までは弱かった中間層の需要が9〜11月にプラスに転じた。天候要因なのか、本格回復の兆しなのかはもう少し見極めたい。年末に向けて中間層が戻ってきたのは明るい材料だ」

 ――ネット通販が拡大し、リアル店舗が顧客を奪われています。

 「五感に訴える店舗体験と、その店にしかない独自の品ぞろえがポイントになる。ギンザシックスはゆったりとした空間やアートな世界をかなり意識した。バーチャルの世界では実現できない特徴ある店づくりができればお客様は来てくれる」

聞き手から一言
都心は上向くも
地方は閉鎖続く

 国内の百貨店売上高は10兆円が目前だった1991年をピークに減少し、2016年は6兆円を割り込んだ。訪日外国人や富裕層の需要回復で都心の店舗の販売は上向きだが、訪日客の恩恵が乏しい地方は厳しく、百貨店の閉鎖が続く。

 J・フロントリテイリングは唐突に「脱百貨店」を打ち出したわけではない。「GINZA SIX」は構想から開業まで10年をかけ、この間に商業ビルのパルコを買収するなど百貨店依存からの脱却を模索してきた。ネット企業が小売市場を席巻するなか、実店舗の存在意義を示せるかが問われている。(中山修志)

 やまもと・りょういち 73年(昭48年)明大商卒、大丸(現大丸松坂屋百貨店)入社。03年、12人抜きで大丸社長に。10年、大丸松坂屋百貨店社長。13年現職。神奈川県出身。66歳

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