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「グルメ」だけでなく仕事も...、「孤独の缶詰」で集中!!、過剰つながり、あえて遮断、文豪気分、旅館で執筆。

[ 2018年4月4日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 スマートフォン(スマホ)、SNS(交流サイト)の普及によって、いつでもどこでもネットにつながる時代。情報があふれかえり、何かと雑音も多い。でも、時には一人になって集中したい。そんな悩み多き現代人の心の叫びに応える「集中空間」が最近、あちこちで続々と誕生している。

 「原稿進んでいますか」。神奈川県湯河原町の温泉旅館で、執筆にいそしむ奥田権人さん(24)に、ふすまをあけてお盆にコーヒーを載せながら、男性が話しかける。その男性は原稿をちらっと見るや、「へー、おもしろいですね」とやや雑な感想を述べて退出。

 都内に住む会社員の奥田さんが泊まった温泉旅館「The Ryokan Tokyo」では、スタッフが編集者役になってくれる「大人の原稿執筆パックβ」という宿泊プランを1月から始めた。目的が「執筆作業」などであれば、通常の料金よりもお得に泊まれる。なりきり編集者の応対のほかにも、プリンターの貸し出し、コーヒー飲み放題などのサービスも提供している。

 奥田さんの仕事場は都内のコワーキングスペース。「普段は温泉に行かないけど、この環境に身を置けば、仕事に集中できるはず」。部屋に入った瞬間、スイッチが入り、「想像力がいつもよりも豊かになって、筆が進んだ」。2日間部屋に缶詰めになって、雑誌に寄稿する原稿を書き上げた。

 この旅館を経営する龍崎翔子さんは「卒論を温泉旅館で書きたいという大学生からの要望があり、文豪みたいに缶詰めになれるプランを企画した」と語る。正月すぎの1、2月は温泉旅館にとって閑散期。論文作成に集中したい学生たちで、空室を埋めようとしたところ、「原稿執筆がしたい」「プログラミングがしたい」との要望が相次いだという。

 湯河原といえば、夏目漱石や島崎藤村をはじめとした文豪たちの愛した名湯。温泉にゆったりつかって、文豪のような気分になりたい人はまだまだいそうだ。

 24時間、365日、ネットで人と人とが簡単につながる今日。職場でも同僚たちとの雑談も悪くはないが、たまには過剰なつながりを遮断して仕事に集中したい――。

 1月に開いた東京・大手町の三菱地所の新本社。オフィスフロアには、見渡す限り柱が1本もない。仕事内容や気分に応じて社員が好きな場所で作業できるフリーアドレス制が導入された。そんなオフィスで、「異質」な空間が人気だ。

 「事務作業などで、ふと集中したいときに利用する」と新事業創造部の長嶋彩加さん。カラフルな壁に囲まれた「集中ブース」をミーティングの合間などに使っているという。パソコンで利用の予約をして、入り口付近のタッチパネルで入退室する。

 集中ブースには、机とイスを設置した自習室タイプと、ホワイトボードのある作業室タイプとがある。長嶋さんがよく使うのは作業室タイプ。カーテンで緩く仕切られ「息苦しくならないところがいい」とのこと。

 オフィス内にこうした空間をつくる企業はほかにもある。

 「集中を計測することが究極の働き方改革につながる」と語るのはジンズの井上一鷹さんだ。井上さんは、目の動きから人間の集中の度合いを計測する同社のセンサー搭載眼鏡「ジンズ・ミーム」の開発者。井上さんがいま、夢中になっているのは「最高に集中できる職場作り」。

 同社のサプライチェーン事業部の内田和希さんが昼食後に向かうのは、本社と同じ建物内の会員制の共用オフィススペース「Think Lab」だ。「午前中は上のオフィスで会話して、午後はここで一人になって集中する」と内田さん。同スペースはオフィス家具メーカーなど18社と協力し、「最高に集中できる環境」を整えた。心を仕事モードに切り替える暗い入り口や、心を落ち着かせる植林など集中できる工夫を施した。

 ジンズが集中できる職場環境づくりに力を入れるのは、かつてコミュニケーションが活発過ぎて逆に生産性が落ちた反省を踏まえてのこと。職場の風通しが良すぎると、すぐに人に声をかけられ、集中してやるべき仕事がはかどらない。井上さんは「深く考えた人がいないとイノベーションは生まれない」と語る。独創的なアイデアは文字通り「独り」で「創る」ものという。

 最近カフェでは、ヘッドホンで耳を覆い、フードをかぶって横目に入る視界を遮り「完全武装」して集中する人も目に付く。小うるさい上司からの文句だけを完全に遮ることができる集中ルーム、うちの会社で導入しないかなあ。

(千住貞保)

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