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賃金革命(2)残業減らせば得する(迫真)

[ 2018年5月9日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 2日午後0時30分、紳士服の「はるやま五反田店」(東京・品川)。来店者が途絶えた時間を見計らい、販売スタッフの桐木聖也(23)が入荷したスーツにタグ付けを始めた。接客に戻り、再び商品整理。「生産性への意識が高まっている。手が空くと、今やれることを考える」と桐木。目標は残業ゼロだ。

 はるやまホールディングスは2017年4月、残業ゼロの社員に1万5千円を支給する「ノー残業手当」を導入した。年3・7%増の大幅賃上げも実施。半年後、1人あたりの売上高は前年同期に比べ3・2%増え残業時間は15%減った。

 残業代が家計を助ける構図が長年続いてきた日本。月給に占める残業代の割合はなお8%を占める。生産性が高まれば企業の残業代負担は減るものの収入がダウンする働き手は浮かばれない。社員の懐に配慮できるかが生産性向上のカギを握る。

 「頑張れば得だと思った」。求人広告トーコン・ヒューマンリソース(東京・中央)の営業職、木下美結(24)は話す。同社は社員の生産性向上を目的に毎月30時間分の残業手当の一律支給を始めた。30時間までなら残業しても時間通りに終わっても給与は同じ。新入社員で手当の額は月収の約2割を占める。

 年明けからの3カ月、木下は前年同期より残業時間を6割減らした。退社時間から逆算して仕事に取り組むなど工夫を重ねている。友人との交流が増えたという木下は「プライベートの充実が仕事にもたらす好影響を実感している」と語る。

 2日朝、第一生命保険豊洲本社。企業年金業務室課長補佐、村上千佳(34)は朝礼でこの日の時間配分を手早く確認した。村上のチームは事務作業の見直しで時間を生み出し新事業を立ち上げてきた。ホワイトボードにタスクごとの進捗が書いてある。仕事の細部に工夫が宿る。

 第一生命は今夏のボーナスから生産性向上に貢献した部署の社員に現金を上乗せ支給する。原資は働き方改革で削減した残業代だ。1人あたりの加算は年間3万円程度の見通し。「金額よりも個人に還元されることで生産性への意識が高まっていく」と村上は受け止めている。

 日本総合研究所によると日本の残業代は年13兆〜14兆円。働き方改革で5兆円余りが減ると試算したチーフエコノミストの山田久(54)は「ベアを相殺し消費を低迷させかねない」と言う。残業を減らせば得をする仕組みが欠かせない。(敬称略)

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