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不惑のビックカメラ、脱・家電量販へ一直線、創業40年、駅前から街ナカにも、一等地から消えるスマホ。

[ 2018年6月15日 / 日経MJ(流通新聞) ]

衣食住エンタメ、全部やる

 創業40年を迎えたビックカメラが脱・家電量販店への道をまっしぐらに進んでいる。酒類や化粧品などの取り扱いを増やし、駅前から街中に出店も始めた。店の顔ともいえる一等地の売り場からスマートフォン(スマホ)が消えた店も出てきた。宮嶋宏幸社長は「ウチは家電量販店ではない」と言い切る。業界2位のビックは、どこに向かおうとしているのか。(関連記事5面に)

 「えっ、すごい変わったね」。ビックカメラ藤沢店(神奈川県藤沢市)を娘と訪れた30代の女性は店内に入って思わず声をあげた。3月に改装した同店。JR藤沢駅とペデストリアンデッキで直結する2階の入り口付近には酒類、そして化粧品や日用品が並ぶ。

 ビックカメラ京王調布店(東京都調布市)でも一等地の1階には自転車がズラリ。訪日外国人が多い東京・秋葉原のビックカメラAKIBA(東京・千代田)も1階は菓子や化粧品、医薬品などの日本土産だ。

 家電量販店で一番人通りの多い売り場はここ数年、スマートフォン(スマホ)が定番。2011年に終わった地デジバブル後、薄型テレビから一等地を奪ったスマホだが、足元の販売は伸び悩んでいる。ビックカメラはそんな時代の流れをみて、一等地はスマホという家電量販店の「常識」を破り始めた。

 ビックカメラの17年8月期の連結売上高に占める家電製品、スマホやパソコンなどの情報機器のシェアは80・1%。稼ぎ頭には違いないが、実はこの比率、直近10年間でピークの13年と比べると約4ポイント下がった。

 品ぞろえでみると脱・家電一辺倒はさらに鮮明だ。同社の通販サイトで扱っている商品アイテム数に占める家電・情報機器の割合は37%と、既に5割を割り込んでいる。

 そうしたなか、家電製品をメインに扱わない店舗も出店。17年11月、セブン&アイ・ホールディングスの商業施設「プライムツリー赤池」(愛知県日進市)に出店した玩具専門店「ビックトイズ」、同時期に東京・原宿の竹下通りに開業した化粧品や菓子などをそろえる小型店「ビックカメラセレクト」だ。

 家電製品が主体の店舗では洗濯機や冷蔵庫など大型商品を展示するため一定のスペースが必要だが、「ビックカメラセレクトは好立地であれば、狭小地でも大丈夫。今後はどんどん出店していきたい」(宮嶋宏幸社長)。実は当初、「ビックカメラドラッグ」という店名の案もあったが、立地に応じて品ぞろえを変えられるよう現在の店名にしたという経緯がある。

 ビックカメラが家電以外に取扱商品をシフトしていく背景には家電市場の伸び悩みがある。調査会社のGfKジャパン(東京・中野)によると17年の家電販売市場は7兆700億円。16年比で1%伸びたが、主因は白物などの単価の上昇だ。人口減などで「中長期的な成長は望めない」(安部徹取締役)。

 家電量販店の強みだった「安さ」で集客しづらくなったこともある。地デジバブル後、家電メーカーは値下げの原資になるリベートを絞ったためだ。その結果、家具チェーンや量販店など、再び家電製品の取り扱いを増やす動きがある。

 そんななか、従来は集客手段にすぎなかった、単価の低い玩具や日用品をビックカメラは次の柱に育てようとしている。「成長率や成長力は家電製品以外の方が高い」(宮嶋社長)。実際、神奈川県内に住む40代女性は「いかにも『電器屋さん』という感じの店だと入る気がしない」と話す。

 ビックカメラの強みは顧客基盤だ。ビックカメラのポイントカードの会員数は数千万人とみられ、小売りとしては屈指の規模だ。日本航空やJR東日本などとの提携もあって、実際の稼働率は高いとされる。

 玩具や化粧品などの小型店はビックカメラの大型店の商圏内で、ポイントカード会員を呼び込みやすい。さらに「家電同様、玩具や化粧品、医薬品なども競合を意識した価格をつけるようにしている」(同社)。

 成長市場のネット通販でも顧客との接点を広げる。自前の通販サイトに続き、4月には楽天と共同で通販サイト「楽天ビック」を立ち上げ、楽天が抱える女性客を取り込もうとしている。

 今後の実店舗の位置づけについて、宮嶋社長は「ショールーミングでも構わない」と言い切る。店舗は、色や操作性、音など実際に商品を手にとって試してもらえる場。最終的にはビックカメラというプラットフォームで買い物をしてもらえるかどうかにこだわる。

 多角化、実店舗に対する「割り切り」の背景には、ビックカメラ自らの立ち位置への危機感も垣間見える。売上高では最大手のヤマダ電機に2倍以上の差をつけられ、ネット売上高では年1000億円超のヨドバシカメラの後じんを拝す。

 規模でもネット戦略でも「2番手」のビックカメラ。社名の「ビック(Bic)」はバリ島のスラングで、大きい(Big)だけでなく中身を伴った大きさを示すという。文字通り「ビック」な企業に成長できるか。

(花田亮輔)

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