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日経の紙面から

だらだらセールやめる、百貨店、夏のクリアランス、初の2回開催、本命は正価品、三越伊勢丹20%増。

[ 2018年7月4日 / 日経MJ(流通新聞) ]

盛夏の販売、勝負はプレ金 アパレル 在庫処分、ネット広がる

 大手百貨店の夏物のクリアランス(在庫一掃)セールが一斉にスタートした。今夏は7年ぶりに百貨店とアパレルが開始時期で足並みそろえ、初めて2回に分けて実施する。初夏物、盛夏物中心の2回にセールを分ける背景には、インターネット通販の影響も見え隠れする。アパレル不況が続くなか、百貨店販売の「原点」に立ち返る狙いもあるようだ。

 例年より早く梅雨が明けた6月29日、伊勢丹新宿本店(東京・新宿)では開店前に4000人が並んだ。母親と一緒に来た、さいたま市の大学院生の女性(25)は「毎年、夏のセールで買い物をする。洋服は実際に手に取って確かめたい」と話す。セール初日としては昨夏よりも2400人少ないが、「今夏はセール開始時期で他社と足並みをそろえたことで客が分散した」(三越伊勢丹ホールディングス)。

消費喚起したい

 それでも出足3日間の売上高は三越日本橋本店、三越銀座店を合わせた基幹3店で前年3日間と比べ10%増えた。高島屋や大丸松坂屋百貨店も同様に前年を上回った。

 大手百貨店各社は今夏のセールを6月下旬から7月上旬、7月下旬から8月上旬の2回に分けて実施する。セール1回目はボーナスサンデーと中元商戦のピーク、2回目は「プレミアムフライデー」に合わせた。

 きっかけは、日本アパレル・ファッション産業協会が日本百貨店協会に持ちかけたことだ。当時の理事長、広内武オンワードホールディングス会長は「値引きありきではなく、館をあげたイベントを通じて真夏に盛り上がりをつくりたい」と強調する。従来のようにダラダラと値引き販売が続く状況を変えたいという意図があるとみられる。高島屋の木本茂社長も2回のセールで「消費を喚起して衣料品の販売を活性化させたい」と話す。

 百貨店、アパレルとも、2回のセールで期待するのは、利益率の高い正価品の販売拡大だ。

 セール初日、松屋銀座本店(東京・中央)。オンワード樫山の婦人服「23区」の売り場では正価品が全体の約2割を占めていた。例年ならセール品一色のはずだが、消費者の選択肢を広げるため、あえて正価品を多く並べたようだ。いまの消費者はセールで安いからといって簡単には手を伸ばさないからだ。

 出足3日間の売り上げをみると、百貨店、アパレルの狙いは的中。三越伊勢丹の基幹3店ではセール品が前年同期比数%減ったが、正価品は20%超と大幅に伸びた。高島屋もセール品が約1%増に対し、正価品は約8%増。大丸松坂屋百貨店も同様に正価品の伸びが大きかった。

 店頭に並ぶ衣料品をみると、1回目のセールでは値引き対象の中心は5月頃から出回った初夏物。正価品は盛夏物が中心だ。盛夏物の正価品は売れ残った場合、2回目のセール開催時には値引き対象になる。TSIホールディングスは「1回目に実施するセールの売れ行き状況によって、2回目のセールで取り組む内容を決める」という。

 百貨店では例年、セール後半戦の7月中下旬以降、気候は暑いにもかかわらず、店頭から夏物の売れ筋商品が少なくなる。セールを2回実施することで、店頭に正価品がより多くそろうことになる。大手アパレルの幹部は「百貨店の顧客は目新しい商品を求める傾向がある。いくら安さを押し出しても購入につながりにくい」と指摘する。

 それではアパレルは売れ残った商品をどこで処分をしているのか。百貨店系大手アパレルの社長は「ネット通販で在庫を消化する流れは結果的に進んでいる。実店舗は正価で売るメインの場所になる」と話す。

ネット特売2倍

 大手アパレルが最近、取り扱いを増やしているのが、衣料品をネット上で短期間セール販売する「フラッシュセール」だ。国内最大手のグラッド(東京・中央)によると17年の大手アパレルのセール数は15年比2・3倍、商品数は2・7倍という。ブランドイメージを毀損せずに短期間で在庫を処分できることが利用を押し上げている。

 衣料品通販サイト「ゾゾタウン」などで実施される期間限定の割引クーポンもある。ある百貨店系ブランドは「クーポンは在庫を消化するセールと役割が異なり、販促活動の一環として配布している」と説明するが、一般の消費者にとっては、セールとクーポンの目的の違いは伝わりにくい。

 神戸市内に住む30代女性は「百貨店のセールに行っても、めぼしいものがなくて、結局買うのは値引き対象外の商品。目当てのものが決まっているときは専ら、クーポンを使ってゾゾタウンを利用している」と話す。

 百貨店のクリアランスセールはバブル崩壊以降、競合する商業施設に客を奪われまいと開始時期を前倒ししてきた。かつては8月だったセール開始時期も最近は7月1日前後でほぼ定着している。12年に三越伊勢丹などが正価販売の期間を延ばそうと開始時期を遅らせたが、結局は定着しなかった。

 その間、アパレル市場の縮小は続き、ネット通販の台頭もあって、セール品で売り上げをつくることはより難しくなっている。そこで今回の2段階セールという「イベント」で集客して、結果的に正価品を売るという手法が登場した。

 ボーナスサンデーと中元商戦が重なる1回目の「成功」はいわば想定通りといえる。今回の取り組みが成功するかどうかは、プレミアムフライデーという、半ば形骸化しつつある「官製」イベントに合わせた2回目のセール商戦でどこまで集客、販売増につなげられるかにかかっている。

(花井悠希、小田浩靖、原欣宏、鈴木慶太、友部温、高橋彩)

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