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戦略としてのESG――プラスチック、次の焦点に(経営の視点)

[ 2018年7月2日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

アジア総局編集委員 小平龍四郎

 世界の主立った機関投資家と話していると、社会主義思想でいう社会改良家の集会に参加しているような感覚になることがある。

 米欧の主要公的年金などから成る国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)が6月下旬にイタリア・ミラノで開いた年次総会でもそんな機会があった。公式、非公式の議論で企業の環境・人権問題への取り組みと情報開示のあり方などを耳にした。

 もはや「ESG」(環境・社会・ガバナンス)という用語を持ち出すまでもない。米欧の年金投資家は「企業と株主が社会問題を考えるのは自然なこと」(米カリフォルニア州教職員退職年金基金)という意識だ。ひと昔前は一線を画した非政府組織(NGO)との距離も縮まりつつある。

 海外メディアによれば、スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)と米GAPは、人権団体から「アジア各地の生産現場で女性労働者が虐待されている」と指摘され、実態調査に乗り出している。アジアはグローバル企業のサプライチェーンにしっかり組み込まれた。アジア関連の情報開示が今後、重要になるとの指摘もICGN総会参加者から聞いた。

 「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングはNGOの指摘に対応して中国の取引先工場の労働環境を点検し、結果をウェブサイトで公表している。こうしたESG情報の開示について、「企業と製品のブランド力を高め利益率の改善につながる」と評する機関投資家は多い。

 もちろん、労働環境の点検といった取り組みは、利益追求のためにすべきものではない。しかし、企業ブランドを高める方向に作用するならば、ESG情報の開示は結果として有効な競争戦略となる。

 「エシカル消費」という概念がある。社会問題の解決に取り組む企業の製品・サービスを優先的に消費する考え方だ。この分野の先進国の一つ、英国のエシカル消費の規模は2015年に785億ポンドと、15年間で約6倍に増えた。

 エシカル消費の主役は、1980年以降生まれのミレニアル世代とされる。この世代は経済活動の持続可能性を重視し、資本市場ではESGの隆盛を支えている。企業にとってミレニアル世代は消費の現場だけでなく、資本市場でも存在感を高めている。

 ESGの次の課題として浮上するものは何か。ICGN総会の参加者から聞いた指摘で印象的だったのは「プラスチック」だ。

 海洋汚染を招く原因の一つとして批判が高まり、欧州を中心に使い捨てプラスチック製品を禁止する機運が強まってきた。

 アジアでも河川のプラスチック汚染が深刻なインドで同様の政策が提唱されるなど、グローバルなうねりは始まっている。腕をこまぬき対策を怠る企業は、エシカル消費者とESG株主が離れていくリスクにさらされかねない。

 もちろん、環境政策を決めるのは政府であり、企業は決められた範囲で最大限の営利を追求すればいい。過剰反応は要らない。しかし、企業活動の新しいリスクが次々に表れることも、ESG投資家は教える。

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