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AI、小売り戦略支える、ヨーカ堂、需要予測し発注、ファミマ、出店の可否判断。

[ 2018年7月1日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 小売り大手が人工知能(AI)を活用して競争力を高める。イトーヨーカ堂は2019年度にも全店でAIの需要予測にもとづく発注を始める。ファミリーマートは6月末からコンビニエンスストアの新規出店の可否を判断するためにAIを導入した。人手不足が続き、ネット通販などとの競合も激しくなるなか、AIを導入して生産性の向上につなげる。

 日本の小売業は労働集約型産業で人の経験や勘に頼るところが製造業に比べて大きかった。AI技術の進化で、人の判断と同等以上の精度を確保できるようになったのをにらみ、AIに置き換えられる部分は委ねて生産性を高める動きが出てきた。

 ヨーカ堂はスーパーの全約160店でAIによる需要予測と自動発注を導入する。生鮮品を除く食品と肌着などの衣料品、日用雑貨など5万点以上を対象にAIが個別商品の売れ行きを予測し、最適な発注数量を提案する。

 イトーヨーカドー大森店(東京・大田)でこのほどAIによる需要予測の実験を始めた。対象は加工食品や日配品、日用雑貨の一部で、NECや野村総合研究所など4社のAIを使い、精度の比較検証を進めている。

 各社のAIがそれぞれ発注数を予測し、実際の商品の売れ行きとの差を競う。それぞれのAIは売り上げや客数といった実績値とその日の天候などの要因を照らし合わせる深層学習を繰り返す。精度が最も高い企業のAIを採用する計画で、18年度中にも決める。

 大手スーパーでは飲料や加工食品の一部で、商品の販売実績に応じた自動発注を取り入れている。こうした発注は将来の予測を含まず、売れた分の補充という意味合いが強い。ヨーカ堂ではAIでチラシの掲載の有無や前年の実績、天気予報などを踏まえて個別に売り上げを予測し、発注数を計算する。1人あたり1日40分程度かかる発注作業の時間を9割減らし、接客や売り場作りにあてて売り上げ増につなげる。

 ファミマはコンビニの新規出店の可否判断にAIを導入した。グーグルと組み、データ分析のスタートアップ企業、グルーヴノーツ(福岡市)のAIサービスを使う。出店候補地の商圏内の年代別の世帯数や人口、競合する小売りの出店状況などを踏まえて、出店した場合の売上高を予測する。

 AIに10〜16年に出店した3500店の商圏データと実際の売上高を学習させた。ファミマではこれまで売上高と関係の深いと思われる指標を15程度選んで売上高を予測していた。AIは600項目を計算して店舗の売上高を予測する。

 これまで1日の売上高の予測と実績の差が5万円以内に収まったケースは4割弱だった。AIを利用すると8割弱が5万円以内の誤差に収まったという。精度の高い売り上げ予測が可能となるとみて、人口減などにより出店先が絞られる中で効率的な出店につなげる。

 イオンは米EC(電子商取引)関連スタートアップ企業に出資する計画だ。AIを活用したデータ分析や物流効率化の技術を生かし、ネット通販事業を強化する狙いだ。ローソンも17年末から生鮮品などを扱う「ローソンストア100」の出店候補地の売り上げをAIで予測する実験を始めた。

 人手不足や人件費の上昇に直面する小売業では生産性の向上が課題だ。日本生産性本部によると、15年の日本の小売り・卸業界の労働生産性は米国の3割の水準にとどまる。人口減に加えネット通販との競合も激しくなり、採算に合う出店先も限られてきている。AIを活用して生産性を高めたり売上高を伸ばしたりする取り組みは小売業界でも広がりそうだ。(今井拓也)

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