日経メッセ > JAPAN SHOP > ニュース > セブン(上)自前主義と決別――2300万人のデータ、異業種と活用、デジタル改革に挑む(ビッグBiz解剖)

日経の紙面から

セブン(上)自前主義と決別――2300万人のデータ、異業種と活用、デジタル改革に挑む(ビッグBiz解剖)

[ 2018年10月2日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 米アマゾン・ドット・コムの台頭が世界の小売りを脅かしている。セブン&アイ・ホールディングスも例外ではない。中核であるコンビニエンスストアの育ての親、鈴木敏文前会長が経営から退いて2年半。井阪隆一社長は自前主義を捨て、異業種と組む「開かれた経営」に活路を見いだす。

 6月14日、東京都港区のグランドプリンスホテル新高輪で、セブンイレブンが国内2万店を超えた記念式典があった。そこへ鈴木氏が登壇し、会場が静まりかえった。

 「セブンイレブンのモットーは自分たちで考え、自分たちでやることだ」。そしてこう加えた。「アイデアをもらうようなことは絶対しない」

 しばらくして井阪社長が壇上でこう言った。「私どもの知恵だけでは大きな変化を乗り越えられない」。鈴木氏を否定するような言葉に周囲は息をのんだ。世界で従業員5万6千人の巨艦が変わる姿を印象づけた。

 セブンは1974年に国内コンビニ1号店を開き、日本の生活インフラを築き上げた。鈴木氏が中心となっておにぎりの販売や高価格帯のプライベートブランド、銀行業参入など前例のないアイデアを連発した。

 井阪社長は「自分たちだけで答えを出す」という考え方からの脱却を目指している。開かれた経営の象徴が、他社と連携する「セブン&アイ・データラボ」だ。2018年6月に発足した。

 NTTドコモ、東京急行電鉄、ANAホールディングスなどまず10社が名を連ねた。例えば、セブン&アイの消費データとドコモの携帯電話の位置情報をかけ合わせる。買い物が不便な地域を割り出せば、ネットスーパーの展開に生かせる。

 国内だけで1日2300万人のデータを持つが、それだけでは優れた価値を生まない。自社にないデータとの組みあわせに期待している。セブン&アイ幹部は「成果があれば、個別の共同事業を検討する」と明かす。

 セブン&アイは18年2月期連結で、売上高にあたる営業収益が6兆378億円だった。国内外のコンビニが5割を占める。国内コンビニは営業利益が7期連続で過去最高を更新している。3〜8月期も業績は伸び、会社全体の営業利益が前年同期より3%程度増え、1%増としていた従来予想を上回る見通しだ。

 内向きを打破する方針は様々な形で表れる。人工知能(AI)やIoTなどのデジタル技術を見ようと、幹部がシリコンバレーに足を運ぶ。カリフォルニア州でスタートアップ企業を発掘するファンドに、日本の小売りでは珍しく出資した。

 店舗の力を高めるために、デジタル革命をどう取り込むか。ヒントは足元にある。米セブン―イレブン・インクだ。

 テキサス州ダラスの本社。1階の店舗で5月、スマートフォン(スマホ)を使う決済「スキャン&ペイ」の実験が始まった。消費者はレジに並ばず、スマホで商品のバーコードを読み取り決済する。19年中に全米で導入する。ガミート・シン最高情報責任者は「AIで商品を認識する仕組みも取り入れる」と話す。

 別の実験も進めている。スマホで商品を注文、自宅で受け取る「セブンイレブン・ナウ」だ。注文から配達まで約30分。ジョセフ・デピント社長は「消費者に近い場所に店がある。これがアマゾンに対抗する上での強み」と話す。約100店で実施中で、18年内に全米の主要都市で始める。

 米国での小売りの競争は激しい。世界最大手のウォルマートはマイクロソフトと提携するなど、先端技術を貪欲に取り入れている。デジタル技術で変わる市場を眼前でみてきた米セブンは17年、デジタル戦略を担う組織を発足させ、データサイエンティストなど技術者120人を採用した。

 セブン&アイは米国にならい、3月にデジタル戦略推進本部を設けた。9月にはセブン―イレブン・ジャパンに司令塔の部署を設置、デジタルシフトを急ぐ。井阪社長率いるセブン&アイは従来と全く違う小売りの競争についていけるかどうか、大きな節目にある。

コンビニ依存高く

 セブン&アイ・ホールディングスはコンビニエンスストア分野では国内最大手として先頭を走り続けているが、世界の有力小売りと比べると存在感はまだ小さい。

 2018年2月期のグループ売上高は加盟店を含めると11兆円にのぼる。しかし、米国で競合する小売り最大手ウォルマートの5分の1だ。米アマゾン・ドット・コムと比べても半分しかない。セブン&アイの売上高営業利益率は6%で、4%のウォルマート、2%のアマゾンを上回る。ただ営業利益3916億円のうち、8割強を占めるコンビニに頼っている。

 アマゾンは食品の宅配を広げるなど勢いを増すが、小売りで大きな利益を出す必要はない。ネット事業のため築いたコンピューターネットワークを生かし、計算能力を貸し出すクラウドサービスがあるからだ。稼ぎ頭となっており、他の事業を補っている。

 アマゾンは人工知能を使った無人レジの店を開くなど、買い物のあり方を変える実験を進めている。セブン&アイが直面しているのは異次元の競争だ。コンビニが伸びているうちにスーパーと百貨店を再建し、同時にデジタル技術を取り入れていく難題を抱えている。

ニュースの最新記事

PAGE TOP