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広がるひずみ(3)再生エネを「生かす」――需給調整、ITで機動的に(エネルギー日本の選択)

[ 2018年10月30日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 「再生可能エネルギーが使われていると分かるとイメージが良くなる」。東京都内の新宿マルイ本館で買い物をする女性(40)は話す。丸井グループは2025年までに70%、30年までに全ての電力を太陽光や風力などの再生エネで賄う目標を掲げる。新宿マルイ本館では新電力のみんな電力(東京・世田谷)を通じて青森県の風力発電所から電力を調達する。カギを握る技術がブロックチェーン(分散型台帳技術)だ。

 ブロックチェーンは仮想通貨の基盤技術として知られる。複数のコンピューターでデータを共有し、相互に監視・検証しながら正しいデータを鎖(チェーン)のようにつないで管理する。みんな電力は風力発電所と顧客企業を網の目のようにつなぎ、風力由来の電力が確実に顧客の元に届くようにする。大手電力中心の中央集権的なシステムから、分散型のネットワークへ変革が起こりつつある。

供給量は3.8倍に

 再生エネは12年に始まった固定価格買い取り制度で事業者の参入が相次ぎ、16年度までの5年間で供給量は3・8倍に増えた。ただ、10〜20年間の買い取り期間が終了すると売電価格は急落するとみられている。

 普及一辺倒だった仕組みを見直していかないと、供給体制はいびつになる。まだ万能とまではいえないが、マイナス面を解消するための取り組みが広がっている。再生エネ導入の旗振り役を担う環境省もブロックチェーンを使った実証の支援を始めた。

 余った再生エネの電気を活用する動きも出てきた。東京電力ホールディングスや関西電力などは小さな蓄電池をつないで制御する実証実験を今月から始めた。複数の蓄電池をシステムを使って制御することで、あたかも一つの発電所とみなす「仮想発電所(VPP)」と呼ばれる事業だ。

 太陽光や風力は天候で発電量が左右される。発電に余裕がある昼間に蓄電池にため、発電量が落ちた時間帯に使えば最大需要も抑えられる。経済産業省は20年度以降に1万5千世帯分を賄う規模の導入を目指す。

 IT(情報技術)を使い、電力の供給量に応じて需要を変動させる「デマンドレスポンス」の技術も進歩している。猛暑に見舞われた7月、東電は企業に節電してもらう見返りに料金を割り引く仕組みを平時としては初めて実施した。

余剰電力を安く

 電気は需要と供給が一致しないと、北海道での地震の後のような停電が起きる。従来は予備の火力発電所の稼働という供給側の対応に任されていたが、デマンドレスポンスで需要側を調整できるようになった。経産省はこれとは逆に、再生エネなどで電力が余る場合に、割安な料金でより多く電気をつかってもらう事業の環境整備も進める。

 機動的に需給を調整する仕組みは海外が先行している。スイス連邦鉄道(SBB)はドイツのシステム大手SAPと組み、電車の運行に必要な電力のピークに他の設備を遠隔制御して需要を落とす仕組みを取り入れている。発電所や送配電網といったインフラへの投資ではなくITで再生エネを活用する発想だ。

 九州電力が一部の太陽光発電の稼働停止に追い込まれ、再生エネ普及は「作る」だけでは限界があることが浮き彫りになった。作った再生エネをいかに「生かす」か。新技術を活用した発想の転換が不可欠だ。

【表】再生エネを生かす新技術が相次ぐ
ブロックチェーン(分散型台帳技術) 発電者が電力を低コストで売りやすく
仮想発電所(VPP)        余った電力をためた蓄電池をシステムで一括制御
デマンドレスポンス         システムを使い供給に合わせ電気の使用を調整

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