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特集――オフィスビル需要堅調、本社調査、働き方改革で移転・増床、新築は軒並み満室。

[ 2018年11月7日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 オフィスビル市況は企業の移転・増床ニーズが強く、想定外ともいえる堅調さを示している。2018年は大型ビルの大量供給で相場の下落を予想する声も多かった。ただ蓋を開けてみると新築ビルは軒並み満室、既存ビルも増床で二次空室が出てこない。人手確保に向け魅力あるビルへの移転や、働き方改革の流れでオフィス環境改善への取り組みが市況を支えている。空室率が歴史的にも低く、20年完成予定の物件も一部で決まり始めている。

 三井不動産や三菱地所が手掛け、5月に完成した「msb Tamachi 田町ステーションタワーS」(東京・港)。JR田町駅まで徒歩1分で、ビルと駅の間には屋根付きの歩行者用デッキを設ける。信号待ちや雨の日にぬれる心配もない。1フロアは約3100平方メートルと広さを確保。柱の配置にも配慮しオフィスレイアウトの自由度を高めた。

 ユニー・ファミリーマートホールディングスは来年2月、「サンシャイン60」(東京・豊島)から同ビルに本社を移転する。移転に際し「働き方改革」にも乗り出す。社内横断プロジェクトを立ち上げ「休憩スペースの充実など社員同士のコミュニケーションを促す仕組みも検討している」(同社)。

 同ビルをはじめ18年は都心部で大型ビルの完成が相次ぎ、業界では「18年問題」として市況の変調を予想する声が多かった。しかし空室率は低水準、賃料は緩やかな上昇傾向が継続している。

 要因の一つが好業績を背景とする企業の移転・増床ニーズの強さだ。現在、あるいは将来の業容拡大に向けて手狭になったオフィスを広げる動きが目立つ。三井不動産ビルディング本部の奥植智彦氏は「オフィスの環境整備はコストではなく投資との考え方が定着してきた」とみる。

 移転に合わせ、交流スペースの充実など働きやすい環境の整備に乗り出す企業も多い。人手不足から募集に少しでも有利に働くようにと有名な大型ビルや新築ビルに移転する例も増えている。

 プリペイドカード導入支援のバリューデザインもそうした一社だ。10月に完成した「住友不動産八丁堀ビル」(東京・中央)に本社を12月移転予定だ。人員増が主な理由だが「新築ビルへの入居で優秀な人材の採用にもつなげたいという思いもある。コミュニケーションスペースを新設するなど環境も整備する計画」(同社担当者)と話す。

 IT(情報技術)企業がまとまった面積を借りている点も空室率低下につながっている。例えば米グーグルの日本法人は来年「渋谷ストリーム」(東京・渋谷)のオフィスフロアをすべて借り、本社機能を置く。サイバーエージェントやGMOインターネットも渋谷で来年竣工予定のビルに、分散しているオフィスを集約する計画だ。

 ニッセイ基礎研究所の佐久間誠准主任研究員は「オフィスが工場化している」と例える。事務拠点から生産拠点へとあり方が変化し、エンジニアが働きやすい環境を整備する動きにつながっているとみる。

 新築ビルへの企業の移転で、既存ビルに発生する「二次空室」も現在は低水準だ。同じビル内の他のテナントの増床で決まってしまう例が多く、仲介大手からは「紹介できる物件がほとんどない」との声も漏れる。

 空室が限られるなか、まとまった面積を求める企業の視線は来年以降に竣工するビルにも向かっている。不動産サービス大手のJLL(東京・千代田)の大東雄人リサーチ事業部ディレクターは「都心部の大型ビルは面積ベースで来年竣工の8割、20年竣工の2〜3割でテナントが決まっている」と話す。不動産大手でも「工事着手前や建築中の早い段階から問い合わせや入居を検討する動きがある」(住友不動産)といった声が多い。

 市場関係者の間では、あと1年程度は現在の堅調な市況が続くとの見方が優勢だ。ただ、JLLによると20年には18年を上回る約70万平方メートルの新規供給が予定されている。経済環境や免震不正問題などにも左右されるが、この前後で空室率、賃料とも小幅な調整局面に入るとの見方も多い。

 札幌や名古屋などの地方の大都市は、新築ビルの供給が限られる一方でオフィス拡張のニーズは強い。市場関係者の間では低空室率と賃料の上昇が当面続くとの見方が支配的だ。

【調査の方法】全国63拠点を対象に、仲介業者(CBRE、三幸エステート、ザイマックス)などから9月下旬時点の水準を聞き取り調査した。条件は(1)5階建て以上、冷暖房完備、エレベーター付きの大型ビルの3階以上のフロア(2)ビルオーナーは原則大手企業

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