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日経の紙面から

日本企業、東南アに傾注、駐在員数・投資額で対中国逆転、大国の成長、逃す危険も。

[ 2018年11月4日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 日本企業が東南アジアに重点を置く姿勢が鮮明になっている。海外駐在員の配置数や対外投資額は5年間で中国向けを逆転した。中国の人件費高騰を受けた製造業の移転や、内需に期待する消費財企業の東南アジア進出が相次ぐ。米中貿易戦争の影響で輸出拠点を移すケースも増えているが、東南アジアの人件費高騰や通貨安など地域集中にはリスクも伴う。

 東南アジアの経済規模は中国の2割程度。中国からのヒトとカネの移転は、世界第2の経済大国である中国の成長を取りこぼす懸念もある。

海外の本社設置

 外務省の海外在留邦人数調査によると、東南アジア諸国連合(ASEAN)の日本人駐在員は2017年に12年比32%増の8万3千人となった。一方、中国は同16%減の7万人となり、この5年間でASEANが中国を逆転した。ASEANは北米(5万5千人)と欧州(3万人)も上回り、海外で日本人が最も多く働く地域となった。

 中国は反日デモが激しくなった12年をピークに日本人駐在員数が減少に転じた。人件費の上昇や現地企業との競争激化で、中国事業を縮小する企業も相次ぐ。

 ニコンは17年に中国江蘇省のデジタルカメラ工場を閉鎖。自動車販売が苦戦していたスズキも今年9月に中国での生産撤退を決めた。中国で一時600店近くを展開していた婦人服大手のハニーズホールディングス(HD)はネット通販との競争で販売が低迷し、中国の小売りから撤退する。

 日本人駐在員が増えているのが東南アジアだ。タイが12年比33%増の3万3千人、シンガポールが28%増の1万3千人で続く。日本郵船と商船三井、川崎汽船がコンテナ船事業の統合会社をシンガポールに設立するなど、海外事業の本社機能を置く動きが出ている。

 米政府による中国製品への制裁関税を受け、輸出拠点の移転も相次ぐ。パナソニックはカーステレオなどの車載機器を中国からタイなどに移す。

 タイやマレーシアは人件費が上がっており、労働集約型産業は周辺国への進出が目立つ。とりわけ経済開放が進むミャンマーは1200人で約7倍に増えた。キリンホールディングスは15年に現地最大手のミャンマー・ブルワリーを買収した。

 人だけでなく投資も東南アジアに向かう。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると日本のASEANへの直接投資は17年に220億ドル(約2兆5千億円)で12年比2倍に増えた。一方、中国は96億ドルで3割減った。製造業の設備投資だけでなく、今年6月にトヨタ自動車がシンガポールの配車サービス大手グラブに出資するなど、サービス分野の投資も増えてきた。

 対中投資の減少は日本だけではない。米国は17年に前年比18%減となり、韓国も同22%減った。

 国際決済銀行(BIS)の国際与信統計を見ても資金のASEANシフトは鮮明だ。邦銀による海外向けの与信額はインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピンの主要5カ国で18年3月末に851億ドルとなり、5年前に比べ45%増加した。中国は7%減の307億ドルだった。

市場規模では差

 ただ、東南アジアと中国との経済規模の差は大きい。17年の名目国内総生産(GDP)は中国が12兆ドルだったのに対し、ASEANは4分の1以下の2兆7千億ドルだった。22年には中国が20兆ドル、ASEANが4兆ドルと差が広がる。

 また東南アジアは軍部のクーデターがたびたび起こるタイなどの政治リスク、通貨安に伴う投資収益の減少など為替リスクもある。ジェトロの小栗道明上海事務所長は「市場のポテンシャルをみて投資先を決めるべきだ」と指摘する。

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