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日経の紙面から

アートを買う。毎日が変わる、絵画・写真1万円から、ネットや婦人服売り場でも、「世界に一つだけ」ファン増やす。

[ 2019年1月7日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 アートを買う人がじわり増えている。観賞するのは好きだが、どうもハードルが高いと感じている人も大丈夫。最近、価格が明瞭だったり、気分で選べたりと、アートを気軽に買える場所が広がってきた。一足早く自宅に飾り始めた人たちは「毎日が少し豊かになる」と口をそろえる。ファッション、食、住まい、旅......。人生を彩るものはいろいろありますが、アート所有もそのひとつのようです。(関連記事14面に)

デロンギの
家電のよう

 「以前働いていた職場に飾ってあったのがきっかけ」。弁護士の藤井総さん(35)の自宅には、淡い色味と、角度によって見え方が変わる質感の絵が10枚以上飾られている。日本画家、中村一征さんの作品だ。

 最も大きな絵は約1年前に30万円ほどで購入した。洋服などのモノはほとんど買わないというが、「絵画はデロンギのコーヒーメーカーと同じような感覚で、生活をちょっと豊かにしてくれる」と藤井さん。絵画に囲まれることで「自宅でも気分よく仕事ができる」。

 藤井さんのようにアートを自宅に飾る人が増えている。なぜ、買っているの?

 「アートはインテリアのひとつ」と語るのは都内の会社員、岡田吉弘さん(40)。昨年10月、イラストレーターの北原明日香さんの作品を約2万円で購入した。

 一点物もアートならではの醍醐味。「世界にたった一つというのが決め手」と話すのは、会社員の村上和生さん(38)だ。昨年8月、新聞紙と液状のりで恐竜をモチーフにした作品を作る杉﨑良子さんの作品を1万円で購入した。

 「タイムラインで見かけて『あ、欲しい』と直感で思って」。都内の会社員、岡洋介さん(43)は昨年11月、イラストレーターの辰巳菜穂さんがツイッターに投稿した作品に一目ぼれし、すぐに連絡。お目当ての絵画を約5万円で購入した。

 実物を見ず購入するのはハードルが高そうだが、「大きさが分かれば問題ない」(岡さん)。

 アートといえば、画廊に飾られ、手が届かないモノと感じる人も多かったのでは。最近は気軽に買える場が増え、雑貨や家具のように生活に身近な存在となってきた。

 「ギャラリーは入りづらいけど、ここなら何度も来られる」。東京ミッドタウン日比谷(東京・千代田)にあるアート写真の専門店「イエローコーナー日比谷店」で佐藤美織さん(45)は話す。

 27カ国で約100店を展開するイエローコーナー。200人以上の契約フォトグラファーによる写真を枚数限定で販売する。日本では日比谷店が初の常設店。「売れ行きは計画の2・5倍。こんなに売れるとは」。イエローコーナージャパン(東京・港)の田中愛子取締役は驚く。

 コンセプトは「CDや本を買うように気軽に生活の中にアートを」(田中さん)。店内には、手を伸ばしやすい工夫がいろいろ。そのひとつが、分かりやすい価格設定だ。画廊では価格が明記されていないことも多いが、ここでは大きさごとに価格が決まっている。

 例えば「ART SHOT」(40センチメートル×50センチメートル)は1万円前後。一番人気はこれにフレームを組み合わせたもので、総額2万円以下。「ふらっと立ち寄り購入する人が目立つ」(田中さん)

 作品はCDショップや書店のように「ファッション」「景色」「音楽」といったカテゴリー別に並ぶ。写真に詳しくなくても「感覚的に選べるので楽しい」。大学生の黒木美涼さん(21)もいろいろ手に取っていた。

 「施設共用部の鑑賞用で飾られていたアートが、生活に取り入れられるようになってきた」。同店を誘致した三井不動産の商業施設本部の小林直仁さんは話す。「観る」が主だったアートに「買う」の芽が出始めた。

 文化庁のリポートによると、2017年の美術品市場は2437億円と16年比で微増。一方、絵画を複製したポスターといった美術関連品は同24%減っており、アートの本物志向が垣間見える。

月額100円で
作家を応援

 「アーティストの考えを知ることもできる」。大阪市の御崎加代子さん(56)は昨年10月から、ピクスタが始めたアーティスト支援プラットフォーム「mecelo(メセロ)」を利用する。

 メセロは月額100円から好きな作家を支援でき、お礼としてポストカードなどが送られてくる。人柄も含めてファンになれば、応援したい気持ちが強くなるもの。最近は3万円の絵画も購入したという御崎さん。ネットやSNSがアートの購入を後押しする。

 昨秋本格始動した「SUZURI People byGMOペパボ」やピクシブ(東京・渋谷)の「pixivFANBOX」など同様のサイトが次々登場している。

 アートのついで買い――。今増えているのが、こんな場所だ。高島屋日本橋店(東京・中央)の婦人服売り場を歩いていると、突然アートが現れる。その名も「アートアベニュー」。

 「ウインドーショッピングを楽しむようにアートに出合ってもらえれば」(同店美術部の洞内有子次長)。上階の美術画廊には、200万円以上の絵画も並ぶが、比較的若い作家の作品が2カ月ごとに入れ替わり、1万円前後から。近くに並ぶ洋服やバッグより手ごろな作品も多い。昨年8〜10月に展示したガラス作家の作品はほぼ完売した。

 昨年12月、仏アパレルブランド「アニエスベー」も青山店(東京・港)の2階にギャラリーを併設。アートに出合える場所は着実に増えている。

 7兆円規模の世界のアート市場で、日本は3%程度にとどまる。「やっと緒についたところ」。アート事業を手がけるアマナの上坂真人執行役員は語る。アートのお買い物は、まだまだ可能性を秘めている。

(井土聡子、二村俊太郎)

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