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ヒットの予感――悩める若者が百貨店で紳士服、便利さより信頼感・安心感(消費を斬る)

[ 2019年1月7日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 百貨店で紳士服を買う若者が目立ち始めている。インターネット通販で多種多様な衣料品を買えるなか、商品が多すぎて何を選んでいいのか悩む若者は少なくない。専門知識にたけた百貨店バイヤーへの信頼感や安心感が、百貨店での購入を後押ししている。百貨店の紳士服の売り上げは縮小するなか、若者の心をつかんで復調につながるか。

 2018年9月中旬に改装した伊勢丹新宿本店メンズ館(東京・新宿)7階の「オーセンティックウエア売り場」。18年12月上旬までに20〜29歳の買い上げ客数が前年同期比26%増、売り上げは30%増えた。メンズ館全体ではこの世代の客数は微減で、売り上げは微増にとどまるだけに同売り場の伸びが際立つ。

 取り扱うのは「ポロ・ラルフローレン」や「J・プレス」など幅広い世代に人気のブランド。若者を狙っているわけでもなく、メンズ館全体の中心顧客層である40〜50代でも購入しやすい。「わかりやすいブランドで買いやすさを追求した」と柴田信友バイヤー。改装時にブランドの数を従来より絞り込んだ一方で、品ぞろえは増やした。

 若い世代に人気の古着なども扱い、交流サイト(SNS)で積極的に情報発信している。「購入前に商品を調べる傾向のある若い世代の情報検索に引っかかるように意識している」(柴田バイヤー)。客数よりも売り上げが伸びているのは単価が高い商品を購入しているから。柴田バイヤーは「良い物が高い理由も伝えている。サービスが手厚い百貨店ならではの安心感も購入につながっているのではないか」と分析する。20代会社員は「ちょっと値段は気になるけど、品質がよさそうだから購入した」。

 紳士服売り場に若い世代が戻っている百貨店はほかにもある。高島屋が17年10月に立ち上げたブランド「タカシマヤ スタイルオーダー サロン」。通常の紳士服売り場では購入客の7割が50代以上だが、5店展開する同ブランドは7割が40代以下。18年9月に売り場を設けた日本橋店(東京・中央)の担当者は「初めて百貨店で紳士服を購入するなど、想定以上に20〜30代の顧客が多い」と話す。

 松屋銀座店(東京・中央)5階にある独自ブランド「アトリエメイド」では、細身の体形である「Y体」の品ぞろえが2割超に達する。若い世代が購入する割合が多いサイズだ。売り場を開設した15年当時は1割程度だったが、徐々に若い世代の認知度が高まっているためという。

 「若い顧客はいろいろな店を回遊して買う商品を吟味している」と宮崎俊一シニアバイヤーは分析。売り場の前面に手ごろな価格のカフスなどの小物を置く。小物の購入時にスーツやジャケットといった単価の高い商品を推奨して、次回の購入につなげている。

 日本百貨店協会によると百貨店の紳士服・洋品の売上高は17年まで4年連続で前年を割り込んだ。衣料品購入のネットシフトも加速するなか、若者の間で百貨店の強みである目利きや信頼感を見直す動きがさらに強まれば、本格的な復調につながるかもしれない。

(岩野孝祐)

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