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再配達防げ、「置き配」で挑む、3月、日本郵便が本格導入、専用ロッカー浸透せず(ビジネスTODAY)

[ 2019年2月6日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 宅配便の現場で人手不足の大きな要因とされている再配達の削減が壁に突き当たっている。ヤマト運輸など大手3社の再配達率は15%前後で下げ止まり、2020年度に13%という政府目標達成に黄信号がともる。「自宅まで届けてほしい」とのニーズは根強く、駅などの受け取りロッカーの利用が進んでいないためだ。打開策として注目を集めるのが玄関前などを届け先にする「置き配」で、3月に日本郵便が宅配大手として初めて本格導入する。盗難をどう防ぐかが普及に向けた課題となりそうだ。

 「自宅で荷物を受け取りたいという高いニーズがある。再配達を抑制する非常に良い試みになる」。日本郵便の横山邦男社長は5日、3月18日から始める「指定場所配達サービス」で、車庫などに加えて玄関前を選択肢に加える方針を示した。

 同社は18年12月、東京都杉並区で千世帯を対象に実験を実施。利用したのはスタートアップ企業のYper(イーパー、東京・渋谷)が開発した置き配向けバッグだ。配達員は届け出先の不在時に荷物を入れてダイヤル式の南京錠をかけるだけ。受取人は自分だけが知る暗証番号で解錠して荷物を取り出す。バッグはワイヤでドアノブなどに固定し盗難を防ぐ。

 実験では、大きな段ボールでバッグに入らないなどのケースを除けば再配達はほぼゼロになり、置き配用バッグがない場合と比べて再配達を6割減らせたという。実験前に懸念されていた盗難はゼロで、「日本の治安の良さに合った取り組み」(横山社長)として本格導入に踏み切る。

 18年秋から専用バッグを使っているコンサルタントの古賀静華さん(40)は「宅配便を受け取るために生活を管理されているようなストレスがなくなった」と話す。

 インターネット通販の拡大で宅配便の取扱数は16年度に初めて40億個を突破。大量の荷物が人手不足の現場に押し寄せ、17年春にはヤマトが総量規制に動くなど「宅配クライシス」が社会問題になった。クローズアップされたのがドライバーの負担につながる再配達問題だ。

 コンビニ受け取りなど受け取り方法の多様化や利用者への周知を進めたことで、大手3社の再配達率は16年の約20%からは減った。ただ足元では15%台で足踏み状態で、政府の「総合物流施策推進プログラム」が目標として掲げる「20年度に13%程度」の達成も不透明だ。駅など公共の場所で荷物を受け取るロッカーが想定ほど利用されていないことが背景にある。

 ヤマト運輸などが出資するパックシティジャパン(東京・千代田)は、駅などの受け取りロッカーを22年までに5千カ所設置する計画を進め、日本郵便も「はこぽす」の設置を進めてきた。だがいずれも利用は低調だ。日本郵便の幹部は「1週間にひとつ荷物が入るか入らないかの場所もある」と嘆く。ヤマトホールディングスの芝崎健一専務取締役はコンビニを含めた自宅以外での受け取りは「10%以下」と明かした。

 重い荷物などの場合、家まで届けて欲しいとの消費者の意識を変えるのは簡単ではない。内閣府の調査では宅配便受け取りでコンビニを使った人は11・4%、受け取りロッカーでは0・7%にとどまる。

 ネット通販大手は自社の流通網を使って一部で置き配を始めている。宅配便を利用する企業にとり、物流コストに直結する再配達率は宅配大手との運賃交渉でも重要な指標になる。自ら置き配で再配達率の削減に動き出す企業も出ている。

 化粧品メーカーのオルビス(東京・品川)は7月、自社の通販サイトで購入頻度が高い5千人を対象に実証実験を始める。郵便ポスト最大手のナスタ(東京・港)が開発した簡易型の宅配ボックスを導入した。一般的な宅配ボックスは数万円するが、5千円以内に抑えて販売を視野に入れる。盗難があった場合は代替品の発送で対応する。

 オルビスでは再配達率は14〜15%で推移している。コンビニ受け取りも導入したが利用率は1%未満にとどまる一方、郵便ポストに入る小型荷物は前年比5%以上伸びているという。自宅まで配達してほしいとの根強いニーズへの対応が、ネット通販を手がける企業にも欠かせなくなっている。

米は盗難率10%、対策課題

 置き配の最大の課題が盗難対策だ。米国では受取人が不在の場合、玄関先に荷物を置いていくことが浸透している。ただ玄関先に置かれた宅配便の盗難率が10%近くにのぼるとの調査もあるなど社会問題となっている。

 米アマゾン・ドット・コムは17年、受取人の不在時でも家の鍵を開けて玄関内に荷物を届けるサービス「アマゾンキー」を始めた。利用者は無線で解錠できるスマートキーを使い、配達員は1回限りパスワードで鍵を開けることができる。室内の監視カメラで不正がないかどうかを遠隔地から確認する。

 こうした仕組みを応用し、アマゾンは18年には自家用車の鍵を一時的に開けて車内に荷物を置くサービスを始めている。盗難のほか、悪天候にさらされて荷物が傷むリスクをなくせる。

 これまで日本で置き配が広がらなかったのも、盗難リスクを考えてヤマトなど宅配大手が導入に慎重だったため。大きな段ボールなどが専用ボックスに入らないといった物理的な限界もある。

 置き配が広く受け入れられるためには、専用ボックスやスマートキーなど従来にない仕組みで利便性を高めると同時に、利用者の不安を取り除くことが欠かせない。

(宮嶋梓帆、藤井太郎)

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