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ヒットの法則「意識低い系」マーケの極意――ちょいバカ目線で共感、「楽ちん・面白そう」刺さる。

[ 2019年2月6日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 狙い通りにうまくいかないのがヒット商品。でも売れた商品からヒットの法則は導き出せるはず。売れるのは機能性ではなく、他人に自慢したくなるもの。そんな家電製品を「ドヤ家電」と命名したライター、小口覚氏が意識低い系マーケティングのすすめを説き始めた。意識高すぎるから失敗するという小口氏に「ちょいバカ」マーケの極意を聞いた。

 小口氏は約25年間、小学館の「DIME」など情報誌、トレンド誌で取材・執筆を重ねてきた。数々のヒット商品をみてきたなかで、最近のヒットの法則がみえてきたという。そこで今年1月、「ちょいバカ戦略 意識低い系マーケティングのすすめ」(新潮社)を出版した。

 最近、意識高い系の人、増えていませんか?

 小口氏の言う「意識高い系」は「意識高い」とは別物。意識高いはエシカル(倫理的)、高い美意識などポジティブなもの。一方、「意識高い系」は一言でいえば「なんちゃって」。実体とは乖離(かいり)した状態だ。ネット上では、セルフブランディングに熱心だけど、実体が伴っていない人などを揶揄(やゆ)するときに使われる。

 コンプライアンス(法令順守)、CSR(企業の社会的責任)など、最近のマーケターは縛りが多すぎるのも事実。自由な発想がしづらく、意識高い系のわなに陥りやすいという。

 例えばアップルのiPhone。スティーブ・ジョブズは高尚なことを言ってるけど、これだけ世の中に広まったのは、操作が簡単だからでしょ。意識低い系マーケティングのヒット商品の典型例ですよ。

 言葉尻だけとらえると、アップルファンから袋だたきにあいそうだが、小口流では「意識低い」と「意識低い系」も別物だ。意識低いは単純などややネガティブな価値観。だが、意識低い系は、意識低いとされる価値観、視点を意識的に取り入れることだ。多くの消費者は表面上では「今はエシカルだよね」と口にするものの、ホンネでは安い、使うと楽になる商品が欲しいもの。ホンネをくすぐらないと、消費者はサイフのひもは開かない。

 便利にも2種類ありますよね。上から目線での便利と、下から目線での便利。上から目線では消費者が納得するのに時間がかかるし、理解されないかも。大事なのは下から目線。

 IoT、イノベーティブな商品と宣伝されても、多くの消費者にはピンとこない。操作が簡単で、家事などが楽になると訴求した商品は共感を得やすい。ヒット商品を連発するアイリスオーヤマ。両面ホットプレートなどは「楽になるから」というホンネに刺さったから売れたのだろう。

 アイリスの商品はいわば「ズボラ」家電ですね。意識低い系というのはユーザーインの発想。なんとなく面白そうというのも大事な要素です。

 大ヒットした「ハンドスピナー」も意識低い系ヒットの典型だ。何の役にも立たないけれど、ネットで遊んでいる画像をみて、なんとなく面白そうかなと。

 逆に意識高い系商品はコケる例が多い。仮想空間のセカンドライフ、3Dテレビ......。自宅でテレビを見るのに専用眼鏡をかけて画面の前に座る人ってどれだけいるのか? 4Kテレビ、8Kテレビも怪しい。画像がきれいって価値なの? なかなかブレークしないAI(人工知能)スピーカー、大丈夫か?

 意識高いという価値を否定しているのではありません。大事なのは意識高い価値を、意識低い系の目線で紹介することです。

 それには抽象的ではなく、具体的な説明が欠かせない。意識低い系マーケティングの達人は、ジャパネットたかたの創業者、高田明さんということらしい。

 市場の分析や戦略を立てるうえで役に立つのが意識のマッピングです。

 例えばアパレル。便宜上、「意識高い=ファッション性」「意識低い=機能的」を横軸とし、縦軸に価格を置くと、業界地図が見えてくる。ラグジュアリーブランドは価格も、ファッション性も高い。

 このところ、従来のポジションを動かそうとする例がみられる。ラグジュアリーブランドが低価格ラインを投入したり、スポーツメーカーがファッション性を強調したアスレジャーの商品を強化したり。

 低価格で機能的ゾーンにいた作業着のワークマンは、ファッション性を持たせた「ワークマンプラス」という業態を出して、ブレークしている。安くて高機能にちょっとオシャレ感を打ち出すことで、多くの消費者に刺さったのだ。

 バブル期の雑誌を読み返すと当時から「これからの時代は差別化、個性が大事」と言っていた。人間の本性は変わらないもの。

 意識の高さを装う人にも、もともと意識が低い人にも、刺さるのはやっぱりホンネ。

 今、ネット上などで「自虐」マーケティングが受けている。たとえ意識高い理念や考えがあっても、ちょっとバカになって、目線を下げ、世の中に発信することがヒットへの近道かもしれない。(永井伸雄)

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