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「売らない」店舗続々、ビックカメラやイケア、実物確認の場、通販誘導。

[ 2019年7月28日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 小売り大手がインターネット通販を前提とした店作りを始めた。注文は基本は通販サイトで対応し、店舗は商品を「見る」ショールームと位置づける。小売業界では店舗を収益を生み出す源泉として重要視してきたが、ネット通販を支援するツールとする。米アマゾン・ドット・コムもあえて商品を確認できる店舗開発に力を入れている。店舗の定義が変わり、次世代型の消費へと大きくカジを切る可能性がある。

スマホで購入

 大阪府八尾市の商業施設に1日、ビックカメラの通販サイトと同じ名前の新店「ビックカメラ・ドット・コム」がオープンした。広さは約3千平方メートルと、主力の駅前店の5分の1程度と小さい。そして天井から釣り下がる案内板や床、商品の横など店内のあちこちに大小のQRコードがちりばめられている。

 その数は計600枚。来店客がスマートフォンで読み取ると通販サイトにつながる。スマホを片手に口コミや値段を調べ、実物を見て買い物する。店頭でも販売するが、主となるのは通販サイトだ。

 かさばるゴルフ用品やふとんはサンプルだけ。客は商品を試し、気に入ればスマホで通販サイトを経由して購入する。販売員はいるがその接客よりも第三者の口コミを参考にするいまの消費者心理にも応える。

 テレビや冷蔵庫は口コミの評判でほしい機種を絞り込み、店で実物を見て触って決め、その最低価格を検索し最終的にネットで買う。そんな消費者が増え、家電量販店は顧客をネット通販に奪われてきた。

 しかし宮嶋宏幸社長は「ネット通販で買い物する人も8割が事前に商品を確認している」点に着目した。あえて店をショールームだと打ちだし、客を呼び込み自社の通販サイトに誘導する。「ネットとの融合で店舗の強みを生かすチャレンジだ」。次世代店舗は150万点が並ぶ同社のサイトへの誘導役だ。

 新店では価格を本部が一括で変更できる「電子棚札」を導入し、通販の価格が店頭に反映される。ネットと店舗がつながり、消費者は配送伝票の記入や決済の手間が減る。

 商品を見ても店では買わない。そんな消費者の行動はアマゾンなどネット通販の広がりとともに増え、小売業の存在意義を脅かしてきた。だがそれが店舗の変革を促す。先行する欧米をみてみよう。

 家具最大手のイケア(スウェーデン)は2021年までにロンドンやニューヨークなど主要都市で小型店を30店開く。倉庫も兼ねた郊外の大型店が同社の特徴だが、18年10月にロンドン中心部で開業した店舗は約400平方メートルと小さく、キッチンなどショールーム機能を強化。注文はネット通販で受け付ける。

 20年春に東京23区内で初めて出す店は約2500平方メートルと標準店の10分の1だ。「小さくても家具の配置提案など実物を見られる店は競争力につながる」(イケアの日本法人)

 小売業の店舗の主な役割は(1)商品に直接触れて確認できる(2)店員による説明・接客(3)在庫があり商品を持ち帰ることができる、という点だった。だが店舗は消費者に商品の購入を決断させる場となりつつある。店の在庫は不要になり、店員の接客の中身も変わるかもしれない。

 また、商品を「カイゼン」する新たな付加価値を生み出す場にもなる。

 パルコが11月に開業予定の「渋谷パルコ」(東京・渋谷)に家電などの試作品コーナーを設ける。国内外のメーカーの商品を扱うが店内では販売せず、サイト上で予約注文を受ける。展示場をカメラで撮影し、商品ごとに客が手に取った時間や年齢層、性別などのデータを人工知能(AI)で割り出す。客の反応を基に商品の改善やマーケティングに生かす。

アマゾンも重視

 アマゾンも店舗も重視する姿勢を打ち出している。17年にスーパーの米ホールフーズ・マーケットを137億ドル(約1兆5千億円)で買収した。スマホのアプリから注文された生鮮食品を近隣の店から配送する。18年にはレジの省力化を進めた小型店「アマゾン・ゴー」を開業し、21年までに3千店に広げる計画があるとされる。

 日本でもライフコーポレーションと組み、注文から最短2時間で宅配するサービスに乗り出す。

 ネット通販は右肩上がりの成長が続いており、野村総合研究所によると18年度の市場規模(推計)は19兆3000億円だった。24年度には27兆2000億円になると予測する。ネット通販が主体の店舗が広がれば、これまでなかった便利さの形が期待できそうだ。

(池下祐磨、細川倫太郎)

【表】ネット時代に対応して店舗のあり方を模索する   
業種  企業          主な事例 
小売り ビックカメラ      新店にQRコード600枚を貼付。スマホで読み取ってもらいネット通販に誘導 

    パン・パシフィック・  「ドン・キホーテ」でアプリや顔認証と連動した売り場を開発中 
    インターナショナルHD

    パルコ         来店客の動向や関心をAIが分析し、販促などに生かす仕組みを導入へ 

    米ウォルマート     ネットで注文された商品を店舗の駐車場で受け取るサービスを構築 

    イケア(スウェーデン) 郊外店の10分の1以下のネット融合店を21年めどに世界で30店開業 

通販  米アマゾン       書店や無人コンビニなど店舗を運営し、購買データを収集 
    ・ドット・コム

    楽天          年内にビックカメラの購買データを取得し、PB商品や販促に活用

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