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IoT、サービス業に拡大、ファストリ、瞬時に検品・在庫確認、トライアル、カメラで来店客分析。

[ 2019年8月21日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 あらゆるモノがネットにつながる「IoT」ビジネスが急拡大している。2023年の世界市場規模は日本円換算で100兆円を突破し、18年実績比で1・8倍に拡大する見通しだ。導入が先行してきた製造業に加え、消費や物流などのサービス分野にも裾野が広がる。モノに取り付けたセンサーなどを通じて、膨大なデータが入手可能になるためだ。こうしたデータの活用がもたらす変化は「第4次産業革命」とも呼ばれ、世界の企業が対応を急いでいる。

 IoTの特徴は、既存の産業技術に大量のデータ分析を組み合わせることで、革新的なビジネスを生み出したり、業務を飛躍的に効率化できたりする点だ。例えば製造業なら、モノがどう使われているかというデータ分析を通じて、新たなアフターサービスなどを提案できる。その先にあるのは、単純にモノを売るビジネスからの脱却だ。

 今後の市場も拡大が予想される。米調査会社のIDCによると、23年の世界のIoT関連支出額は18年に比べて1・8倍の1兆1246億ドル(約118兆円)になる見通し。産業別では製造業(25%)が最大で、消費・小売業(24%)、インフラ(17%)、運輸・物流(10%)が続く。

 18年比の金額の伸び率は消費・小売業、運輸・物流などのサービス分野がそれぞれ2倍前後。成長力の高さが目立つ。

 消費の分野でIoT活用を進める一例が、ファーストリテイリングだ。柳井正会長兼社長は「情報製造小売業を目指す」と宣言し、物流や店舗のデータを活用して衣料品をタイムリーに生産・販売する企業への転換を急ぐ。この中核となるのがIoTの技術だ。

 ファストリはカジュアル衣料店「ユニクロ」と「GU(ジーユー)」のほぼ全商品にRFID(無線自動識別)と呼ぶICタグを取り付けた。タグには商品の製造時期やサイズ、価格などの情報を埋め込んでいる。無線通信で、商品に直接触れずに情報を認識できる。

 店員は従来は商品を1枚ずつバーコードで検品するなど、在庫管理に手間がかかっていた。現在は専用の機器を使って複数枚の商品の検品などを瞬時にこなせるようになり、「余った時間を接客などに有効活用できるようになった」(ファストリ関係者)。

倉庫人員9割減

 18年10月から本格的に自動化したファストリの有明倉庫(東京・江東)。倉庫内のネットワークが商品のICタグからデータを常時吸い上げ、自動検品している。物流の自動化で、倉庫内の人員は従来より9割も減った。商品の入庫作業の速度は80倍、出庫速度は19倍に上がったという。

 IoTの普及の背景には、各種センサーの高機能化や低価格化もある。日本自動認識システム協会(JAISA)によると、5〜6年前に1枚数十円だったUHF帯RFIDタグの平均単価は、17年には同10円前後と数分の1に下がった。一方でセンサーの需要も大幅に増え、電子部品メーカーの商機になっている。

 今後は次世代通信規格「5G」の普及でやりとりできるデータ量が大幅に増えることもIoTには追い風だ。

 小売業では主に防犯目的だったカメラ。IoTを活用すると購買分析の有力ツールに変わる。ディスカウント店大手のトライアルホールディングス(福岡市)は、4月に新装開店した福岡県新宮町の店舗に1500台の人工知能(AI)カメラを導入した。

 人物や商品を認識させ、来店客がどの商品に触れたかの特定や、棚単位での細かい商品の売れ行きを把握できる。「IoTやAIなどの技術の発達で、顧客の購買心理をつかめるようになってきた」。トライアルの西川晋二副会長は語る。

 消費財メーカーもIoTで商品の利用状況を常時知ることができるようになりつつある。米化粧品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)。1月の展示会でIoT機能を盛り込んだ化粧水ボトルを発表した。

 ボトルには開閉センサーや無線通信機能を内蔵。スマートフォンなどと連動させ、フタの開閉などからユーザーの利用状況を記録する。朝晩には発光ダイオード(LED)でボトル全体を光らせて利用を促す。集めたデータは、化粧水が残り少なくなった際などの効果的な販促や、新商品の開発などに役立てる。

 電力や水道などのインフラ分野でもIoTの活用が進む。電力の使用量などを常時把握する次世代電力計(スマートメーター)や、需給制御システムが普及期に入った。こうしたサービスでは、独シーメンスや米ゼネラル・エレクトリック(GE)、スイスのABBなど、電力技術に強みを持つ海外の重電大手が先行する。日本企業では日立製作所や東京電力、大阪ガスなどが強い。

安全面の懸念も

 社会や企業活動を大きく変えつつあるIoTだが、課題もある。膨大なデータが得られるだけに個人情報の流出や制御システムの乗っ取りといった安全面の懸念がある。

 16年にはIoT機器を狙うウイルス「Mirai(ミライ)」が世界でまん延。家庭用ルーターやネットワークカメラなど数十万台が感染し、米ツイッターや米アマゾン・ドット・コムのサービスが一時的につながらなくなった。日本でも18年に水路の水位監視カメラなどが不正アクセスを受け操作できなくなった。

 20年には世界で500億個のモノがネットに接続し、データ生成量は10年比で40倍以上の440億テラ(テラは1兆)バイトに達するとの試算もある。リスクを抑えつつ、IoTをどう活用するかが重要な局面に差し掛かっている。(井原敏宏)

 ▼IoT(インターネット・オブ・シングズ) あらゆるモノがインターネットに接続し、巨大なネットワークが形成される仕組みを指す。1999年に米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者だったケビン・アシュトン氏が提唱した。

 従来、ネットに接続していたのはパソコンや携帯電話などの情報通信端末だった。ただセンサーの発達などを受け、自動車や工場など「物理的なモノ」に通信機能を持たせ、データを収集することが可能になった。人工知能(AI)などの技術革新も膨大なデータ分析の精度やスピードを高めており、IoTビジネスの追い風になると期待されている。

 主要国の政府もIoTを産業政策の柱に据える。ドイツは2011年にIoT活用を軸とする「インダストリー4.0」を打ち出した。中国も15年に発表した「中国製造2025」でIoT活用を重点領域とした。日本も17年に「日本版インダストリー4.0」と位置づける「コネクテッド・インダストリーズ(つながる産業)」を発表。ドイツの官民とIoT分野での連携も模索する。

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