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日経の紙面から

セブン&アイ、営業最高益で大リストラ、巨人見えぬ成長戦略、周回遅れの店舗大量閉鎖。

[ 2019年10月14日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)が大規模なリストラに乗り出す。傘下の総合スーパー事業、百貨店事業では閉店や人員削減をするほか、稼ぎ頭のコンビニエンスストア事業では加盟店のロイヤルティーを引き下げる。同社の2020年2月期の営業利益は過去最高を更新する見通し。最高益のいま、なぜ大なたを振るうのか。同社の取り組みからは次の成長モデルが見えてこない。

 セブン&アイHDがイトーヨーカ堂とそごう・西武の店舗閉鎖と3千人の人員削減を核とするリストラ策を発表した後、東京・四ツ谷の本社内は蜂の巣をつついたような騒ぎだった。

 「成長戦略を描くこともなく、一方的に閉鎖を決めるなんて無責任」とあるヨーカ堂社員は話す。「どこに向かっているのか分からない」と別の社員はこぼす。

 複数の関係者は「背後にはアクティビスト(物を言う株主)がいる」と指摘。グループの足をひっぱる業績不振のヨーカ堂とそごう・西武のリストラを迫ったとみられる。さらなる経営への関与を恐れて屈服したかどうか。屈服したのではないかとみる向きもある。

 今回、5店舗を閉鎖するそごう・西武。リストラは過去最大規模。「もっと早くやるべきだった」(証券アナリスト)

 前回は16年、井阪隆一社長の就任後の「100日改革」に盛り込まれた。そごう神戸店(神戸市)など3店舗をエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)へ譲渡するとしたが、「直前まで予定していたのは西武所沢店(埼玉県所沢市)の食品売り場拡大。突然、目玉をつくれとなり3店舗譲渡が加わった」(関係者)。そのうちの1店、そごう西神店(神戸市)はドタバタもあって誤った評価額をH2Oに伝え、譲渡対象から外れた。

 ヨーカ堂の構造改革については「かなり踏み込んだものになったんじゃないかな」と、セブン&アイHD関係者は話す。05年のセブン&アイHD誕生以降、ヨーカ堂の大規模店舗閉鎖方針はリーマン・ショック後の09年、15年に続く3度目。閉店を打ち出したが、見直しの声に押され実際の閉店数は計画以下だった。

 今回は1700人の人員削減や長野店(長野市)など不採算店33店の閉店も視野に。注目は衣料品や住居関連品のMD(商品政策)を改廃することが盛り込まれたことだ。これまでは店舗閉鎖方針を示したが残った店舗は基本的には食品も衣料品も、住関品も自前でやることが前提だった。

 詳細を明らかにしていないが、今回、不採算店では事実上、自力での衣料品や住関品をあきらめるとみられる。

 ただ、総合スーパーでは、西友やダイエーがとっくに食品を軸にした事業展開に軸足を移している。ヨーカ堂は、金のなる木であるコンビニ事業を抱えるセブン&アイ傘下にいたため危機感が薄く、遅れたのだろう。

 8月末に開かれた年に一度のセブン&アイのグループ戦略会議。セブンペイの不祥事やコンビニ24時間問題など足元の課題に追われ、グループ全体のビジョンをどう描くかについてはほとんど議論されなかったようだ。

 井阪社長は10日の記者会見で「構造改革を断行し、グループとしてそれぞれの業態が一人ひとりのお客様のライフタイムバリューに貢献できる会社をめざす」と述べた。

 リストラ策を発表した翌11日のセブン&アイHDの株価は4367円(終値)と前日比204円上昇。リストラが好感されたとみる向きはあるが、外資系証券アナリストは「今回のリストラ案は満額回答と思っていない。その先の成長戦略が見えない」と指摘する。

 セブン&アイに必要なのは株主だけでなく、従業員、取引先、加盟店、そして消費者といったステークホルダーとの一体感。このままでは業界のフロントランナーとして築いてきたブランド価値を毀損しかねない。

ロイヤルティー、一律減は「パンドラの箱」?
セブンイレブン 
オーナー「焼け石に水」

 「3万5千円でお茶を濁されるなんてまっぴら」。10日夜、都内のオーナーはため息をついた。

 セブン&アイ・ホールディングスが加盟店が本部に払うロイヤルティーにメスを入れた。24時間営業の場合、従来は粗利益の3%分を減免していたが、2020年3月からはさらに月3万5千円を差し引く。売上総利益(粗利益)が月550万円以下ともうけの少ない店には一律、月20万円を減額する。井阪隆一社長は「本部の取り分は100億円減るが、加盟店のモチベーションを上げるためだ」と話す。

 今年2月に24時間営業を巡って加盟店と対立して以来、セブン―イレブン・ジャパンの本部には批判が殺到し、公正取引委員会まで動き出した。そうした世論に配慮したのだろう。

 だが、加盟店は手放しで喜べない。あるオーナーは「10月からの最低賃金引き上げで人件費が月5万円以上増えた。何もないよりましだが、焼け石に水」と話す。ロイヤルティーを減額してもオーナーの不満が収まらなければ、さらなる減額要求につながる。ある証券アナリストは「パンドラの箱になるリスクはある」と指摘する。

 緊張感をもって頑張ってきた加盟店のモチベーションが下がる恐れもある。加盟店の1店当たりの利益は、年平均50万円改善するとしているが、粗利益が月550万円超の加盟店の場合、改善額は3万5千円で一律。一方、約7千店ある月550万円以下の店では粗利益が少ないほど改善額が膨らむ。

 流通アナリストの渡辺広明氏は「各オーナーの収益を分布図にして公表すべきだ」と話す。

 セブンのロイヤルティーは、売上総利益の「平均で約5割」、40〜50%台のローソンやファミリーマートに比べ高めだ。それでもオーナーはもうかるからと平均日販の高いセブンを選んできた。しかしその優位性が薄れれば、加盟希望者は集まらず、ロイヤルティーをさらに引き下げざるを得なくなる。セブンの社内でも、当然そのリスクを認識している。

 セブンイレブン創業者の鈴木敏文氏は「競争が激しくなればなるほど、強いセブンに有利になる」と出店を拡大し続けてきた。井阪社長は「コンビニ市場は飽和していない」というものの、今回、1千店の閉鎖・移転に踏み切るのは、拡大しても有利にならないと判断したのだろうか。

 今月初旬、セブンの売り場には「バスクチーズケーキ」が山積みされていた。バスチーはローソンが3月に発売した大ヒット商品。これまで常に新市場を切り開いてきたセブンの自信が揺らいでいるようにみえた。

(編集委員 大岩佐和子)

【表】セブン&アイ・ホールディングスの年表
2005年9月  セブン&アイ・ホールディングス(HD)設立 
  06年6月  ミレニアムリテイリング(現 そごう・西武)を完全子会社化 
  09年8月  そごう・西武を設立 
  16年5月  鈴木敏文会長が退任し、セブン―イレブン・ジャパンの井阪隆一社長をセブン&アイHD社長に 
    10月  セブン&アイが中期経営計画「100日プラン」を策定 
  17年3月  イトーヨーカ堂の社長に三枝富博氏 
    10月  セブン―イレブン・ジャパンの既存店売上高が63カ月ぶりに前年実績を割り込む 
  18年1月  セブンイレブンが国内2万店を突破 
  19年2月  24時間営業を巡る問題が表面化 
    10月  イトーヨーカ堂とそごう・西武の構造改革を発表 
  20年4月  次期中期計画を公表へ

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