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キリン堂、陳列シンプルに、在庫管理の負担軽減――薬剤師、接客に集中。

[ 2010年12月6日 / 日経MJ(流通新聞) ]

「特売品積み上げ」を転換

 関西が地盤のドラッグストアチェーン、キリン堂が店舗改革に取り組んでいる。特売品などを山積みして顧客にアピールする従来の「プロモーション型」を転換、シンプルな陳列で商品を選びやすい顧客本位の店づくりを目指す。従業員から商品の陳列や在庫の発注といった業務の負担を減らし、経営の効率を高める狙いもある。

 9月下旬に改装したキリン堂南草津店(滋賀県草津市)には、ドラッグストアによくある商品が迫ってくるような圧迫感がない。商品が整然と並び、照明の光が陳列棚の下段にまでよく届く。顧客からは「商品が見やすくなった」との声が上がる。

 改装のポイントは大きく分けて2つある。まず陳列は特売品を入り口付近や通路に積み上げる島陳列を従来の6分の1に減らし、通常の陳列棚に商品を集約した。さらにカートを押した顧客がすれ違えるように、陳列棚の間の通路幅を従来の1・3メートルから1・8〜2メートルに広げた。

 「入りやすい、見やすい、選びやすい、買いやすい」。2009年5月に約5年半ぶりに社長に復帰した寺西忠幸会長兼社長は、店づくりのキーワードをこう表現する。

 シンプルな陳列は、ともすると殺風景な印象を与えかねない。同社はにぎわいを保つため工夫をこらしている。陳列棚の上部や両端には店内販促(POP)をつけて来店客の目を引く。

 改装は店にとってもコストを削減できるメリットがある。特定のコーナーや通常の陳列棚に分散していた商品がまとまったため在庫を管理しやすくなり、従業員の作業が減少する。在庫削減の効果も大きく、南草津店では改装前に比べて1割も減った。

 同社が店舗改装を急ぐのは、他のドラッグストア大手と比べ「収益構造が良くない」(寺西会長)からだ。10年2月期の売上高経常利益率は1・5%。3〜5%程度の他社と比べ見劣りする。

 店舗改装に着手したのは3月上旬。店舗面積約660〜990平方メートル程度の大型店が対象で、全国313店舗のうち約80店舗ある。これまでに43店舗で改装を終えた。

 いまのところ成果は出ている。3月中旬に改装した店舗でみると、3〜8月期の売上高は前年同期比1・5%減で、従来型の店舗(同7・1%減)に比べて小幅の減収にとどまった。

 利益面ではコスト削減の効果もあって、売上高に占める営業利益の比率は前年同期に比べ0・2ポイント上昇した。同0・3ポイント低下したほかの大型店とは対照的な結果になった。

 寺西会長は将来のドラッグストアについて、あるビジョンを持っている。それは「医療提供機関の原点に戻る」(寺西会長)ことだ。

 国の財政が悪化するなかで、軽度な体の不調は市販薬で治療するセルフメディケーションの流れが加速するのは確実。顧客に対する医薬品の説明など、薬剤師や登録販売者が店頭で果たす役割がますます重要になるとみる。

 店舗改装によって薬剤師らが商品の陳列といった作業から解放されれば、接客に集中する環境が整う。顧客との接点を増やして地域に溶け込み、医療関連サービスの提供にもつなげられる。その布石として、8月には医療コンサルティング会社を買収した。

 売り上げを伸ばそうと特売や販促に躍起になるドラッグストアが多いなか、キリン堂の店舗改革は一石を投じそうだ。(高橋誠)


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