「JAPAN SHOP 2006を視察訪問して」(その1)LED Next Stage
[ 2006.04.07 ]
照明デザイナー 落合 勉(M&Oデザイン事務所)
今や世界中で、用途開発を競って展開しているLED(Light Emitting Diode)、そのLEDの店舗空間への提案展が開催される!! この話題に商業施設関係者は大いに関心を抱いたようである。特別企画「次代を彩るLED Next Stage」展示を会場中央に配置した見本市「JAPAN SHOP2006」は、過去最高の来場者で賑わっていました。いやはや、あんなに人出が多いとは......予想していた以上でした。
今回の「照明技術・デザイン最新情報」はこの"LED Next Stage"を中心に、そしてJAPAN SHOPの感想などを交えて記します。
最新の商業空間へのデザイン・ディスプレーや店舗什器・設備などの新製品や関連情報を一堂に集め展示紹介する、アジア最大級の店舗総合見本市"JAPAN SHOP 2006"は、3月7日〜10日の4日間、東京国際展示場・東京ビッグサイトで開催されました。時代とともに進化してきたこの見本市、今年で35回目を迎える歴史ある展示会で、店舗空間を設計するインテリアデザイナーや建築家には見逃せない最新情報の見本市として認知されています。会場には欧米やアジアの国々の人たちの熱心なる視察風景も見られ、また各種話題性あるセミナー等もあり、盛況なるイベントでした。
このJAPAN SHOPと併催して建築・建材展やIC CARD WORLDやRETAIL TECH JAPANの展示会が東館で、さらに西館ではフランチャイズ・ショー&ビジネス・エキスポやSECURITY SHOWも開催されており、まさしく商業流通施設の総合展としての様相でした。


図1, 2 ビッグサイト東館連絡通路の様子とホール5のJAPAN SHOP入口
店舗総合見本市"JAPAN SHOP 2006"の会場は、商業施設空間への演出デモンストレーション的要素が大きく、その内容に工夫を凝らした出展ブースは華やかで見ごたえある内容でした。そのJAPAN SHOPは東館の連絡通路を挟んで左右、ホール3とホール4、5で開催され、連絡通路に面して各ホール入口が配置されています。目的を持って視察するには分かりやすい会場構成と言えましょう。
その東館の連絡通路からホール5入口を入ると、特別企画「次代を彩るLED Next Stage」の会場があります。その中心部に企画展示ブースが設けられ、ランドマーク的フラッグ(吊り下げの旗で、LED Next Stageと印刷されている)が高所に掲げられました。そしてこのフラッグに向かってLEDライン照明が四方八方から点滅照射されて、遠くからも判別できるようになっていました。


図3, 4 ランドマーク的フラッグのLED Next Stage企画展示会場と
外壁に展開されたLED面照明の例
今回の特別企画は52社の出展ブースで構成されており、その顔ぶれは多様でLED素子メーカーやデバイスメーカー、さらにはLED照明機器メーカーやその販売会社、LEDサインや映像機器メーカーとその演出企画会社などでありました。
JAPAN SHOPと記されたホール5の入口を入ると、左手にLEDで作られたハナミズキの木が来場者の注目を集めていました。そのハナミズキの花が光り輝くブースが世界最高レベルの発光効率LEDデバイスを展示していたシチズン電子です。70ルーメン/ワットのマルチチップ方式の光源部(数タイプある)はさすがに眩しく直視できないほどでした。演色評価数は75〜80程度とのことで、一般照明用途に実用できるレベルとの印象を強く感じました。この明るいLEDデバイス、今秋には量産化され市場提供され始めるとのこと、来春予定のライティングフェア2007には器具メーカーに採用され、いろいろな器具に搭載されることでありましょう。


図5, 6 シチズン電子のブース外観と展示LEDデバイスの事例
このLEDハナミズキの花と相対して、LED電球を壁一面に展開していた東芝ライテックのブースも多くの人で賑わっていました。次世代のあかりと認知されるLEDを、在来型電球同様に使えるスタイル(エジソンベース口金つきランプ)を提案をしていました。明るさ自体は5〜7ワット電球相当ですが、常夜灯や演出装飾用などには最適でありましょう。ところで、この在来電球型LEDは国内外で見かけるようになってきましたが、特に注目したのが小型ダウンライトに組み込めるE12ソケットベース(電球色相当砲弾型LED が4個ついた)ランプです。病院用にと開発したダウンライトに取り付けられるこのランプは、在来取り付け工法に慣れた電気工事業者が"LEDあかり常夜灯設置"への簡単手法として有用されることでしょう。他に電球型蛍光ランプとしてGマーク受賞製品「ネオボールZ」にLEDが組み込まれたタイプもありました。このネオボールZに組み込まれたLEDには、電源スイッチのON-OFFで切り替え可という便利な機能(リレースイッチ内蔵)があり、蛍光ランプとLED(常夜灯)との切り替えが容易です。ユニークなLED活用ランプなどの展示、大いに注目したブースでした。



図7, 8, 9 東芝ライテックのブースの様子(左)と展示されていたLED電球(右)と
E12ソケットのベースランプ(下)
今回の特別企画「次代を彩るLED Next Stage」展示会場の中で最大のスペースで際立って美しいブースを創り、最新のLED 器具を大胆にショーアップしていたのが松下グループ(松下電工+松下電器産業+パナソニック半導体オプトデバイス)のブースでした。
松下のショーウインドー形式の展示は、今回の最新LED器具を通行する来場者に向けて効果的にアピール告知していました。そのアピールは奇術師によるパフォーマンスもあり、訴求方法はスマートでそして楽しいものでした。
白色でまとめられたLED 器具は、高級ブティックや宝飾品店、美術館など具体的商業施設空間を想定した各種のコーナーに設置されていました。その設置への什器材は透明板ガラスが多用され、さらに外通路からでも内部展示が見られるよう周囲が透明ガラス壁で演出されていました。全体に見やすく開放感ある爽やかな空間作りに成功していました。
大変興味深いことに、この松下ブースはLEDだけの照明で演出され、充分な明るさが確保されていたのです。店舗照度の確保が、展示されていた最新LED器具=MFORCEで可能であることを提示していました。床と天井は照明反射率高い白色で統一し、光透過の透明ガラスを多用した空間作りなど、知恵と工夫がブース全体に展開されていたのです。松下グループのLED照明への本格的事業展開姿勢を感じたブースでした。
このMFORCEと命名された器具は厚さ10ミリのコンパクト設計・LED照明器具で、世界商品としてすぐにでも欧米はもとより世界中で認められるデザインです。そして美しいデザインだけでなく、従来の電球形照明器具に慣れ親しんできたインテリアデザイナーや電気工事業者などの既存照明関係者に理解しやすい表示=在来器具的表示もしていました。これはLED器具普及に大変重要なことで、MFORCEが既存照明器具と対等に(それ以上に)展開できると判断した結果でありましょう。そのMFORCE搭載器具全光束は約600ルーメンで、60ワット白熱灯器具の全光束とほぼ同等の明るさであると比較明示されていたのです。今までは明るさが不足していて実用的ではないというのが実業界からの声でしたが、LED器具は明るさが不足......とは言えなくなったのです。さらに寿命は60ワット白熱電球の約25倍の4万時間、消費電力でも1/3の約17ワットと、圧倒的優位なLED器具=MFORCEの出現は、来場した商業施設関係者だけでなく、照明業界にも、さらには世界のLED関係者に影響を与えたことでありましょう。
ちなみに、このMFORCEは8個の白色LEDを用いて演色評価数90以上を実現とのこと、この演色性と明るさなら商業施設空間でも多用されるでありましょう。2006年10月発売予定のこのMFORCE、発売が楽しみです。


図10, 11 松下ブース内の展示演出の様子。店舗空間の雰囲気を演出している。


図12, 13 MFORCE説明コーナーの様子と、展示されていたMFORCE
LEDの演色性をアピールしていたLED素子メーカー・豊田合成のブースでは、LEDデバイスメーカーや器具メーカーなどからも専門的質問が多く寄せられ、注目を集めていました。
従来の白色LEDは5000ケルビンの一般的に白色光といわれる青白い光質でした。照明業界ではこの青白い光も多用しますが、住宅や飲食店舗などは2800ケルビン前後の赤っぽい電球色を好みます。その電球色に近い高演色性白色LED=TRUE WHITE Hi展示コーナーは特に注目されていたのです。このLED、紫LED+RGB蛍光体で演色性向上を目指し、その演色評価数Raは92を達成していました。今夏から量産に入る予定とのことですので、今秋は明るさだけでなく、演色性の良いLEDも予想以上に普及化の動きが見られそうです。


図14, 15 豊田合成のブース外観と高演色性白色LED=TRUE WHITE Hiの展示
豊田合成のブース前には企画展示コーナーがありました。「21世紀のあかりとコミュニケーション」をテーマに、LED照明による可視光通信システムとLED照明演出での次世代型店舗のあり方を提案しました。カフェ、ブティック、そしてスーパーマーケットなど、空間を演出しながらのデモンストレーションに商業施設関係者は次世代のあかり=LEDの、可能性の大きさとその照明演出の多様なる魅力に感じ入っていました。その内容は新しいLEDサインや映像への事例とあわせて次回に詳しく紹介します。


図16, 17 LED照明の演出とLEDを利用した可視光通信を紹介している企画展示コーナー
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- 執筆者:落合 勉
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照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長
1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。
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