連載コラム

「JAPAN SHOP 2006を視察訪問して」(その2)LED Next Stage(続)

[ 2006.05.08 ]

照明デザイナー 落合 勉(M&Oデザイン事務所)

 今回のJAPAN SHOPでは特別企画「次代を彩るLED Next Stage」としてLEDにスポットをあて、商業施設空間への新しい照明演出のあり方を提案しました。このテーマ、省エネや環境問題に取り組む店舗事業体には関心が高く、タイムリーなテーマでありました。昨今急速に普及の様相を見せてきたLEDサインやディスプレーの最新作はもとより、ファサード看板などへのLED照明、さらには店内照明へとその多様的演出を見せていました。またハイパワーLEDの登場でLEDスポットライトやダウンライト等、コンパクトで斬新なデザインのものもあり、華やかで盛況でありました。前回(その1)ではこの特別企画会場での最新LED商品の動向を取り上げましたが、まだ紹介しきれない注目のあれこれは多く、引き続き記したく思います。



図1 LEDディスプレーとは思えないほどの鮮明なる
画像を映していたヒビノ社のディスプレー


 114インチもの大画面が、臨場感あふれる映像をカラー鮮やかに映しだしている様は、本当に凄い迫力で、思わず立ち止まりしばし見とれていました。その映像は3ミリピッチにグリッド配置された、RGB各素子が組み込まれたSMD-LED(3 in 1 SMD/表面実装型LED)ディスプレーユニットの連なる画面でした。広い視野角(110度)を実現しているので斜めからでもはっきり見え、しかも近距離(3m)からでもその視認性は高く、いやはやLED画面(2,300×1,728ミリ)の凄さに驚いた次第です。完璧なる輝度均一性は全面に展開され、映像のフルハイビジョン解像度は世界最高を示しているとの解説に、なるほどと納得! このヒビノのLED映像技術、世界の自動車モーターショー・バック映像ディスプレーとして各社に愛用されているほか、世界のファッションの頂点・パリの高級ブランドショップのメインディスプレー等に採用されるほどで、その鮮やかな色再現や微妙な色調整など高い信頼を勝ち得ていると言えましょう。現市場に普及している液晶ディスプレーやプラズマディスプレー、さらにはリアルプロジェクターやマルチビジョンなどのそれぞれのメリットを兼ね備えていると思われるこのヒビノ・LEDディスプレーは、ロングライフで設置省スペース、そして圧倒的な高輝度、高画質、高解像度でありました。またLEDによるディスプレーならではの自由な形態(四角系や波型や球体型)も可であり、サイズも自由自在です。今後、LEDの光量(ルーメン/ワット)がさらに高まり、色鮮やかだけでなく面照明としての演出が期待できそうな予感を抱いたヒビノ社・LEDディスプレーでした。更なる展開が楽しみです。

 

図2 立体形状のLED演出照明の事例/図3 カーブ曲面での映像事例


 LED照明演出で派手なカラーパターン展開を繰り広げていたグラフィカ/日本トラクソンのブースには、若い人達で大変な賑わいでした。そのカラーコントロールは音楽と同調、その調整はパソコンで簡単にでき、今回の会場ではサイケデリックで刺激的な空間を創り出していました。LEDによるブース照明演出の中で注目したものに、受付カウンター上の白い30cm程の球があります。この球、充電式LEDの照明器具でしかも防水加工が施され、水に浮かび点灯するという輸入品でした。堅牢なる樹脂性のこのコードレス・LEDランプ、優れモノでありました。



図4 LEDによる壁面帯照明も目立つ
グラフィカ/日本トラクソンのブース外観
 

図5 受付カウンター上の充電式球体のランプ/図6 水槽に浮かぶ防水球体ランプ


図7 サイケデリックな演出事例


 LEDを空間演出用の効果照明として積極展開しようとしているエフェクトメイジのブ−スも大胆で目立ちました。商業施設では特注対応を余儀なくすることも多く、多様なLED手法が要求されます。それらへの対処の事例を紹介していました。



図8 LED空間演出手法を紹介していたエフェクトメイジのブース


 今回のLED特別企画会場には光源メーカーも多数出展していました。前回(その1)紹介した豊田合成以外に星和電機、スタンレー、ローム、さらにはIDECオプトデバイス、日本ネオプト、加賀電子など、そして試作LEDを展示発表していたNECライティングや三菱電機照明などと、誠に種々多様なる新作LEDが見られ、LED大国・日本を示しているようでした。また三菱電機オスラムからはドイツ・オスラム製LEDも発表されており、各社それぞれの特性の違い(用途や形状やサイズなど)は、今後の市場の拡大成長性やその多様化を改めて感じたLED Next Stageでした。

 LED素子から完成品までの自社一貫生産システムを誇る星和電機では、その幅広い品揃えを展示展開していました。ブース正面に大型情報板の全天候型LEDディスプレーやLED信号機等が、ブース内では電球色や白色LEDダウンライト器具を用いて模擬空間オフィスや住宅などへの光質感を見せていました。LED以外に電球型LEDランプや集合レンズ付LEDモジュール、さらにはLED照明器具などの幅広い品揃えはオーソドックスなるデザインでの展開でありました。今後のLED市場拡大には魅力あるデザインも大切であります。独自のLED技術を生かしたデザイン製品で世界に広く展開してほしいものです。

 

図9 星和電気のブース正面の様相
図10 ハウジング空間を想定した光質感を見せたブース内展示


 世界で最初にLEDの量産化を達成し、各種のLEDデバイスを展開してきたスタンレー電気のブースにはユニークなLEDモジュールが見られた。それらはハイパワーでありながら高演色性の光を照射させており、自動車産業界で培われた技術でのLED照明展開が窺えました。今後の展開に注目です。

 

図11 スタンレー電気の展示ブースの外観
図12 LEDデバイスとその演色性を見せている店内展示の様相
 

図13 各種レンズとその搭載器具参考作品
図14 ユニークなデザインの3ワットLEDペンダント


 高演色性の新製品LEDランプをアピールしていたロームは、6タイプのLEDランプすべてに5種の光色(電球色、温白色、白色、昼白色、昼光色)を取り揃えていました。「光るLEDから照らすLED」へと、照明器具分野向けLED光源を品揃えしたのでした。平均演色評価数Ra97を提示して!

 

図15 ロームの出展ブース外観/図16 高演色と5光色の説明パネル


 世界トップクラスの明るい白色LEDを展示していたIDECオプトデバイスでは、サンシャインシリーズと名づけられたSMD-LED(表面実装型LED)、その中のSグレード2ワットが190lmを達成したと明示されていました。これは凄い数字だ!(95ルーメン/ワットは蛍光ランプ同等の効率) しかし、色温度6000ケルビンで72Raは演色性を大事にする商業施設空間ではやや使いにくい(自動車ランプには適用)が、電球色(2500k)でのカスタム対応品もあり今後は既製品化が検討されましょう。またこのデバイス形状は、超薄型軽量構造で(1.1ミリ)で実装しやすいのでいろんな使われ方がされるでありましょう。その用途事例の参考作品(照明器具などのデモンストレーションモデル)が展示されていたら、さらにその明るさ感が伝わったことでありましょう。技術展とは異なるJAPAN SHOPでしたが、照明関係者には見逃せないブースであったようです。私が視察していた時など熱心なる専門的質問者で混み合っており、十分に見られない程でした。この光束・発光効率、大いに注目した数字でした。

 


図17 IDECオプトデバイスの展示ブースの様子
図18 世界最高クラスの発光効率LEDデバイス
図19 電球色の展示状況
 

図20 加賀電子のブース
図21 加賀電子のブースとルミナックス(LED効率アップの技術)の説明パネル
 

図22 三菱電機照明のブース
図23 LED誘導灯ルクセントの横に展示された三菱電機照明の試作LED展示の状況


図24 ドイツ・オスラム社LED商品を展示の三菱電機オスラム社のブース


 上の画像はLEDランプ各社の出展ブースの様子を映したものです。今回のLEDランプ各社を視察して感じた事柄は、効率向上への研究が積極的に実践され蛍光ランプ並みのランプ効率が発表されてきたこと、さらに明るさだけでなく演色性などの光色向上も図られ、大きな進展が見られたことでした。これらから、LEDによる照明普及化はスピードアップされることでありましょう。そして更なる進展は当分続きそうで、LEDメーカー動向には目が離せない、そう感じたLEDメーカーの印象でした。

 ところで、このLED Next Stage展示会場でのLED使用製品を見て、前回に紹介した内容以外にも注目したLED照明器具があります。いくつか紹介をしたいと思います。
 ソーラー発電と組み合わせた街路灯で、美しいデザインの新製品展示をしていた岩崎電気、農業への展開事例(イチゴ栽培時にLEDを照射することでうどん粉病の発生を防ぎ、無農薬栽培を促進)を紹介していた藤崎電機、家具兆番などの金物販売で有名なスガツネ工業のLEDパネル製品、世界最小クラスのレンズ付きLED照明モジュールを展示していた吉川化成、LED誘導灯を世界で最初に制作発売した三菱電気照明の新作小型LED誘導灯、LED一体型システムフレームを発表した松本金属のLEDスポット、蛍光ランプの看板並みの明るさ(700カンデラ)をLEDバックライト方式の面光源で実演していた浅葱クリエイトのCUBE80等、実用的なものです。

 

図25 岩崎電気のブースのLED街路灯/図26 藤崎電機の農業用青色LEDの光
 

図27 スガツネ工業で展示のLEDパネル製品
図28 吉川化成の超小型レンズ付きLEDモジュール


図29三菱電機照明の小型LED誘導灯
 

図30, 31 松本金属のブース外観とLEDスポット
 

図32, 33 浅葱クリエイトのLED看板と看板の内部


 店舗ディスプレー分野でのLED使用は、空間照明より格段に積極的でその事例が今回のJAPAN SHOP会場全体に見られました。韓国から出展していたSDTは、ビルの壁文字看板のLED照明を全面展開していました。カラフルなLED演出を展開していた愛紳照明やプロフューズなども華やかなブースでした。以下JAPAN SHOP会場内でのLED 演出事例のいくつかを紹介しておきます。



図34 韓国SDTによる外壁LEDサインの展示事例
 

図35, 36 愛紳照明によるLED壁面ライン演出と、
アジャスタブル型の3つのLED
 

図37 様々な種類の演出用照明をLEDで展開しているプロフューズ
図38 目立つ演出で注目を浴びていたアドワークの出展ブース
 

図39 ガラス床面のカラー演出を展開していたイー・エム・エンジニアリング
図40 光環境デザインが製作展開している大型構造物「雪の結晶」の一部サンプル事例


 特別企画会場の中心に位置した企画展示コーナーは、LED照明の普及を促進するLED照明推進協議会と、そのLED 照明を用いて通信を展開しようと推進している可視光通信コンソーシアムとのコラボレーション空間で、筆者もその監修に加わり、"21世紀のあかりとコミュニケーション"をテーマに、カフェ、ブティック、スーパーにおける次世代型商業空間を提案しました。

 ブースの外壁では、4面それぞれのテーマを「春の活気」「水」「光」「緑」として、LEDによる面照明演出を行いました。またブース全体の構成部材であるアルミ材のシステムフレームには、ライン照明と線、面のLED照明を展開し、上質感ある雰囲気を演出しました。

 カフェゾーンでは、LEDによる店舗看板(自由な形に対応可能なLEDは、箱文字看板にも適しており、薄く、軽いため店舗への設置も容易に可能)、床埋め込みLED照明(導線案内や演出に使用する床埋め込み照明をLEDにすることで、メンテナンスの回数が大幅に削減可能)、什器に組み込めるLED照明(小型化によりカウンターテーブル等の什器にも組み込みが可能)のメリットを実物展示で紹介。またカウンター上部に取り付けられたLED照明やモニター下部のLEDサインの光に専用端末をかざすと、シェフの裏料理メニューや小説コンテンツ等が受信でき、ヘッドフォンでは映画予告の音声などを受信することができました。

 コスメ商品や宝飾品がショーケースやディスプレー棚に陳列されたブティックでは、ディスプレー棚バックライト照明(ディスプレー棚後方に設置されている面型LED照明は器具厚さ22ミリで、狭小スペースでも効果的な演出が可能)、ディスプレー棚ダウンライト(高効率レンズを採用し、指向性にすぐれた光特性をさらに効率的に高めたダウンライト)、ショーケース内ディスプレーライト(効率設計されたレンズにより、無駄のない明るさを実現)による店舗演出を提案。ショーケースを照らすダウンライトからは、宝飾品の原産地や製造の工程など店頭には表示されていない商品の詳細情報を、可視光通信を利用して受信することができたのです。

 スーパーでは、ショッピングカートとプライスカードに可視光通信技術を用いたOne to Oneの商品情報提供システムの導入を提案。ショッピングカートに取り付けたディスプレーが受信端末となり、LED照明にかざすと特売情報などの商品情報を受信することができ、またプライスカードに埋め込まれた小型LEDからはLEDの色別に一般/会員専用など異なる情報を受信することができました。従来の照明とLED照明の比較コーナーや、植物育成LED照明(植物に最適な波長のLEDを用いることで、植物の成長を促す)の紹介コーナーもありました。

 

図41, 42 外壁面照明演出事例
 

図43, 44 カフェ
 

図45, 46 ブティック
 

図47, 48 スーパー


 LEDは今後さらに新たなる展開を提示していくでありましょう。(続く)

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落合 勉
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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